【登山・旅行時の高山病対策】高山病に効果が期待できる薬・市販薬を薬剤師が徹底解説

富士山登山(3776m)を目指したい方や、海外の観光地として人気が高いペルー・マチュピチュ(2430m)、ボリビア・ウユニ塩湖(約3700m)に行きたいと思っている方など、不安になるのが「高山病」ではないでしょうか?

かくして、私自身も標高5895mキリマンジャロを登頂したときに、高山病に苦しめられました。

高山病は、1800mから2500mを超える場合に、誰もがなりうる可能性があります。高山病の予防に効果があるお薬としては「ダイアモックス」がよく知られていますが、残念ながら、市販では購入することができず、医師の診断が必要です(保険適応ではない)。また、市販で、軽度の高山病の症状に備えたお薬を購入することはできます。ただし、高山病は重症になると命の危険もありうるので、お薬に頼るのではなく、下山が第一優先で、無理は禁物です。

今回は、私自身の経験も交えながら、高山病について解説するとともに、高山病の予防に効果があるダイアモックスについて、又、高山病の軽度の症状に備えられる市販薬について解説していきます。登山やレジャーが、少しでも快適に満喫できるよう、参考にしていただけますと幸いです。
※この情報は、2017年6月時点のものです。

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1.高山病について

1-1 高山病とは?

高山病とは、高地で酸素が欠乏することによって引き起こされる病気で、疲労、脱力、頭痛、吐き気、めまいやふらつきなどを認めます。高度順化されていない方が高地到着直後にかかる様々な諸症状を総称した病名です。重症になると後で述べる高地脳浮腫や高地肺水腫をきたします。

高山では空気が地上と比べて薄く、標高2500mを超えると高山病の発症率が高まると考えられていますが、1500m〜2500mの高度でも発症するケースはあります。登る速度、到着地点の高度(特に睡眠をとる地点の高度)、個人差などが要因となって、起こり得ます。今まで幾度となく標高が高い山を登っている方でも、突如なりうることもあるのが怖いところです。

同じ標高まで、高所順応(高所に慣れる)しながら登った場合と、飛行機で一気に到着した場合とでは、後者のほうが高山病になりやすいといったデータもあります。

1-2 高山病の症状

高山病は、主に、「山酔い」「高所脳浮腫」「高所肺水腫」の3つの症状に分類されます。

 

<山酔い>

一般的によく見られる症状です。

次のような初期症状があります。

・頭痛(最も多く見られる)

・食欲不振、吐き気、嘔吐

・疲労感

・めまい

・不眠

・放屁(おなら)

・顔や手のむくみ

これらの症状は、高所に到着後6〜12時間後に発症します。

 

<高所脳浮腫>

山酔いがひどくなったものが、高所脳浮腫です。脳内に水がたまった状態(浮腫)になり、運動失調や意識があいまいになることや、ひどいと昏睡状態あるいは脳ヘルニアになり命の危険につながる可能性もあります。縦列歩行テスト(一直線上にかかととつま先を交互に接触させながら歩く)を行うと、うまく歩行できず運動失調がみられることで判断できます。

 

<高所肺水腫>

高所に到着後2〜4日以内に発症し、山酔いの症状がない場合でも起こりえます。肺に水がたまった状態(浮腫)になる状態で、高所脳浮腫と一緒に起きることもあります。安静時でも、息切れに伴う呼吸困難を感じ、咳、運動失調がみられます。意識障害、そして昏睡と命の危険にもつながる危険な状態です。

1-3 高山病の予防と対策

<高山病の予防>

高山病になりづらくするためには次のようなことを心がけることが重要です。

・ゆっくりと高度を上げ、高度順応に時間をかけること

・睡眠をとる地点の高度を低めの高度で設定する

・睡眠をとり体調が万全であること

・はりきりすぎず、マイペースで登り、呼吸を深く行うこと

・高山病の初期症状をしっかりと把握しておくこと

 

<高山病の対策>

高山病の初期症状が見られた場合には、次の対策が重要となってきます。

・高山病の症状が見られた場合は、症状がなくなるまでそれ以上高度を上げない、下山が可能なら下山するが、すぐに下山できない場合もただちに安静にして休む。

・症状が改善されない、悪化していく場合には、下山する

・脳浮腫または肺浮腫の兆候が見られた場合はすぐに下山する、集中治療が必要となることもあります。

 

一番の治療は、より低い地点に移動することが大切です。症状が良くなるまで低い地点まで早急に向かいましょう。

 

私がキリマンジャロ(5895m)を登ったときの高山病経験

私自身が高山病になったご経験を参考までにお話します。「5泊6日で登ったキリマンジャロの経験談」です。

元々、マラソンやトライアスロンなどトレーニングを行っているため、基礎体力には自信がありました。標高4000m付近までは、特に何事もなく進んでいました。高山病の知識もあったため、症状ができるだけでないよう、無理をせず深い呼吸を意識して登っていました。

4000mを超えてくると、しだいに体が重く、今まで以上に歩くたびに息切れがでるようになりました。また、放屁が頻繁に出るようになり、お腹の調子が悪くなり、腸が張り苦しい思いを体験しました。

少し具合が悪くなって、寝込んでいたところ、他の海外の登山隊の医療班の方が調子をみてくださり、整腸剤をくれました。整腸剤を服用してしばらく経つと、お腹の調子が戻り、体調がだいぶ良くなったことを覚えています。

高山病に苦しんだのは、5895mの登頂後です。登頂までは、体のだるさや苦しさはあれど、特に高山病の症状を強く感じずに登っていました。しかし、登頂してしばらくした後、気がゆるんだのか、頂上でテンションを上げすぎたのかわかりませんが、急に体がふらつきました。あれ、と思った時には、平衡感覚を失い、まっすぐに歩けない状況となりました。おそらく高所脳浮腫の初期症状だったのかなと思います。

登山ガイドの方の肩を借り(寄りかかったような形)、何とか自力で高度を落とし、寝床となるテントまで下山をしました。テントで休んだところ、体調はすぐに元に戻りました。

登山ガイドの方がいたから助かったものの、「下山までが登山である」ということを身にしみて感じた苦い経験となりました

 

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2. 高山病の予防に効果があるお薬

次に、高山病の予防に効果があるお薬について解説します。

2-1 ダイアモックス(成分名:アセタゾラミド)

高山病の予防に効果があるお薬として、有名なのが、ダイアモックス(成分名:アセタゾラミド)です。

こちらのお薬は、医療用医薬品であるため、医師による診察を受けなければ入手することができません。また、本来は、緑内障やてんかん、浮腫などの治療に用いられる利尿作用があるお薬になるため、国内では健康保険は適応されず、自費での購入になります。

 

ダイアモックスは、お薬の作用(炭酸脱水素酵素のはたらきを阻害)により、呼吸中枢を刺激し、換気量を増やすことで高山病の症状を和らげます。アセタゾラミド250mg/日量、500mg/日量、750mg/日量とプラセボとを比較した無作為試験など(※)実際に様々な臨床データも挙がっているため、予防効果がある実証性は高いといえます。

 

高所に到着する前日から1日2回(量は指示による)服用することが一般的です。

主な副作用としては、手足のしびれ感や頻尿です。利尿作用がありますので、脱水症状にならないようしっかりと水分を摂取することが大切です。

 

Low EV et al. Identifying the lowest effective dose of acetazolamide for the prophylaxis of acute mountain sickness: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2012 Oct 18;345:e6779.

ダイアモックスの入手方法

ダイアモックスは、処方せんなしで、市販で購入することはできません。必ず医師による診断・相談の元、処方してもらう必要があります。

一般社団法人日本旅行医学会のサイト(http://jstm.gr.jp/summary/)にて専門の医師で、ダイアモックスの処方の相談が可能な医療機関を検索することができます。是非、ご参考ください。保険適用がないため、自費負担ですのでご注意ください。

海外など現地で購入しようと考えられる場合もあるかと思いますが、現地で購入時には、偽薬など適切なお薬ではない場合もありますので、十分にご注意ください。

2-2 その他のお薬

その他に高山病に用いられるお薬としては、

デカドロン(成分名:デキサメタゾン)・・・ステロイド剤。脳の浮腫を和らげる効果があるとされています。

アダラート(成分名:ニフェジピン)・・・降圧薬。高山病がおきると、肺の動脈の血圧があがる肺高血圧という状態がおこり、これが肺水腫を起こすと考えられています。アダラートは血圧を下げることにより、肺水腫を和らげる効果があると考えられます。

が挙げられますが、これらのお薬は、医療用医薬品(適用外の使用)となることや詳しい服用方法については必ず、専門の医師に相談して処方してもらうようにしましょう。

3.高山病の軽度な症状に備えられる市販薬

第2章で説明したような医療用医薬品は市販では購入できませんが、軽度の高山病の症状に備えた市販薬を準備しておくことは可能です。但し、高山病は重症になると命の危険もありうるので、初期症状は体の警告シグナルでもあるため、お薬に頼るのではなく、下山が第一優先になることを忘れないようにしましょう。

また、症状が治まったからといって、治ったわけではありません。高度を上げたりせず、お薬に頼らなくても症状が治まるまで、休養するようにしましょう。

3-1 頭痛

高山病で最も多く見られるのが、頭痛です。その場合に備えて準備しておくとよいのが頭痛薬です。

 

頭痛に効果が期待できる市販のお薬としては、

・ロキソニンS(主成分:ロキソプロフェン) / 第一三共ヘルスケア

・バファリンEX(主成分:ロキソプロフェン) / ライオン

・バファリンA(主成分:アセチルサリチル酸) / ライオン

・セデス・ファースト(主成分:エテンザミド) /  シオノギヘルスケア

などがあります。

 

眠気は登山中に事態を悪化させる可能性があるため、眠気が出ない頭痛薬が良いです。眠気が出る鎮静成分(アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素など)を含んでいない頭痛薬を選びましょう。詳しくは店頭でご相談下さい。

 

副作用として、食欲不振、胃の不快感や胃痛などの消化器症状があります。食後の服用が基本で、頭痛が治まらないからといって、通常の指示量より多く飲むなどしないようにしましょう。

 

3-2 お腹の不調

高山病のひとつとして、腸内ガスが溜まり、お腹が張って苦しくなることがあります。また、海外の場合、お腹を下してしまうこともあるかもしれません。

そういったときに準備しておくとよいのが、整腸剤です。

 

・新ビオフェルミンS錠・細粒 / ビオフェルミン製薬

・ミヤリサン錠 / ミヤリサン製薬

・強力わかもと / わかもと製薬

 

などがあります。

整腸剤は、腸内細菌のバランスを整えることによって、お腹の不調を改善させる効果が期待できます。効果は即効性があるというわけではなく、腸内環境を少しずつ改善させることによって効果を表します。そのため、効果は穏やかですが、体への負担はなく、副作用はありません。

お腹の不調に備えて、予防的に服用していても問題ありません。

4.その他、携帯しておくと良い市販薬など

その他にも、高山病に対してではありませんが、次のようなお薬も用意しておくと良いです。

 

<怪我など外傷に対して>

擦り傷などをした場合は、傷口をよく洗ってから使用します。傷口が赤くなったり、化膿したりしないように、抗生物質を含んでいる塗り薬を持っておくと安心です。

・ドルマイシン軟膏 / ゼリア新薬工業

・テラマイシン軟膏 / 武田薬品工業

など

 

<虫さされなど発疹・かゆみに対して>

山の中や、慣れない海外だと、得体の知れない虫に刺される可能性もあります。そのような炎症やかぶれに対して、かゆみや炎症を抑える効果のある塗り薬を持っておくと安心です。

・ムヒアルファEX / 池田模範堂

・フルコートf / 田辺三菱

・新レスタミンコーワ軟膏 / 興和

など

5.おわりに

今回は、私自身の経験も交えながら、高山病について解説するとともに、高山病の予防に効果があるダイアモックスや高山病の軽度の症状に備えて準備できる市販薬について解説しました。

第2章で説明しましたとおり、高山病の予防に効果があるお薬(ダイアモックス等)は、医療用医薬品であるため、医師による診察を受け、服用が適切かどうか判断を仰がなければいけません。誤った自己判断で服用した場合、副作用のリスクが高まりますので、必ず医師に相談するようにしましょう。

また、高山病に備えた市販薬についてもご紹介しましたが、初期症状は体の警告シグナルでもあるため、お薬に頼るのではなく、下山することが第一優先であることを忘れないようにしましょう。登山やレジャーが、少しでも快適に満喫できるよう、ご参考下さい。

 

参考:

“山酔い”、“高所脳浮腫”、“高所肺水腫”の 発症メカニズム 日本旅行医学会

登山の医学ハンドブック 日本登山医学研究会編集 杏林書院

 

 

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執筆
薬剤師:竹中 孝行
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