1.食欲不振とは
食欲とは食べ物を食べたいという感情で、摂食行動を起こす本能的な欲求のことです。食欲不振とはその欲求が低下している状態のことで、食欲不振が続くと栄養状態が悪くなったり、体力が低下したりすることにつながるので、原因を特定し、それに対処することが重要です。
2.食欲不振の原因
食欲不振を起こす原因には以下のように多岐にわたります。
①消化器疾患
口内炎、舌炎、逆流性食道炎、急性胃炎、胃潰瘍、機能性ディスペプシア、十二指腸潰瘍、
腸閉塞、腸炎、急性肝炎、肝硬変、膵炎
②癌
全ての臓器の癌が原因となる
③発熱
感染症(インフルエンザ、肺炎など)、膠原病
④消化器外疾患
脳出血、脳梗塞、脳炎、髄膜炎、心不全、心筋梗塞、気管支喘息、肺気腫、腎炎
ネフローゼ症候群、腎不全、貧血、白血病
⑤薬
抗癌剤、解熱鎮痛薬、抗菌薬、抗うつ薬
⑥精神疾患
うつ病、統合失調症、不安神経症、神経性食欲不振症
上で挙げた原因の中では消化器疾患が最も多いため、まずこれらを疑う必要があります。また、うつ病や不安神経症、統合失調症などの精神病、さらに神経性食欲不振症など精神的な原因によって食欲低下が起こることも多いとされています。
最近では、「機能性ディスペプシア」という病気が増えてきており、これも食欲不振の原因として重要です。
機能性ディスペプシアとは
胃カメラやバリウムなどの検査で目に見えるような異常がないにも関わらず、上腹部痛や胃もたれなどの腹部症状が持続する病気を機能性ディスペプシアといいます。以前は、「神経性胃炎」、「ストレス性胃炎」などと診断されていた病気で、胃の働き(機能)が低下することが原因と考えられています。刺激の強い食べ物や、脂肪の多い食事、アルコール、カフェインなどは、症状を悪化させることがあるため、それらを控えてもらいます。また、機能性ディスペプシアにはストレスが大きくかかわっているともいわれますので、睡眠や休息を十分に取ることも重要です。薬物療法としては、胃酸を抑える薬や、消化管の運動機能を調整する薬、ストレスを和らげる薬などを服用することで症状が改善することがあります。
3.食欲不振で病院に行くべきかどうかの判断基準
食欲不振が数日で治まるなど一過性の場合は様子をみても問題ありませんが、それ以上にわたって持続する場合は何かしらの原因がある可能性が考えられるため、病院を受診することが推奨されます。
また、食欲不振が短期間で治まっても、頻繁に繰り返す場合は同様に病院を受診することが望ましいです。
4.食欲不振の検査
まずは問診と身体所見をしっかり行い、食欲不振の原因となりそうなものを絞っていきます。スクリーニング検査として、血液検査、尿検査、便潜血検査、胸部レントゲン検査、心電図検査などを行います。
また、胃カメラや腹部超音波検査、CT検査、MRI検査なども必要に応じて行う。これらの検査でも異常を特定することができなかった場合には、精神疾患を疑い、心理テストを行ったり、精神科受診を勧めたりします。
5.食欲不振を感じるときの対処法
無理をして食べようと思わず、食べやすいもの、消化の良いものを少しずつ摂るようにしてください。どうしても食べられないときは、脱水症状に陥らないように、水分だけでも摂るように心がけてください。それで様子をみても改善しない場合は、直ちに近くの内科、胃腸科、消化器科を受診するようにしましょう。
6.まとめ
今回は、食欲不振を引き起こす原因と、その対処法について解説しました。
今回紹介したように、食欲不振と一口にいってもその原因は様々で、多岐にわたります。消化器疾患や感染症、またお薬などが原因となっていることもあります。放置すると栄養状態が悪くなり、病気が悪化することにもつながります。
食欲不振は体の不調をあらわす警告シグナルです。食欲不振を感じる場合には、できるだけ早く病院を受診し、原因をつきとめ、対処することが望ましいです。