ステロイドは安全?アトピーの方が薬を活用する上で絶対知っておくべきこと

アトピー性皮膚炎は、多くの人を悩ませている皮膚疾患です。特に、お子さんにそうした症状がある場合、「将来的にどうなるのか?」と心配される親御さんは多いと思います。

また、治療にステロイドの塗り薬が汎用されるのも、アトピー性皮膚炎における悩みの種でしょう。「ステロイド」と聞くと、それだけで「怖い薬」と理解する患者さんもいらっしゃいます。

しかし、ステロイドの塗り薬は、適切に使用すれば極めて安全かつ有効性の高い薬です。適切な治療は、中長期的な皮膚状態の改善にも不可欠です。そこで、今回は、安心して利用いただけるように、アトピー性皮膚炎の薬の正しい使い方を解説いたします。
※この情報は、2017年3月時点のものです。

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1.アトピー性皮膚炎の薬の種類

アトピー性皮膚炎は、その名の通り皮膚にかゆみを伴う炎症 (湿疹) が起こる病気です (1)。
アトピー性皮膚炎の治療は、主に薬によって行いますが、使う薬は次のいずれかを目的としたものになります。

  1. 皮膚の炎症を鎮める
  2. 皮膚のバリア機能を高める
  3. かゆみを鎮める

一部に、これらとは違った意味合いで使用する薬もありますが、大部分は上記のいずれかです。このうち、特に重要なのは「1皮膚の炎症を鎮める」です。アトピー性「皮膚炎」というくらいですから、皮膚の炎症がこの病気の中心的な問題であり、これを改善することがもっとも根本的な治療に結びつくからです (1)。

さて、アトピー性皮膚炎の治療に使う薬はいろいろありますが、それぞれが上記のどれを目的としたものかまとめると、次の通りです。

「1. 皮膚の炎症を鎮める」ための薬:外用ステロイド・タクロリムス軟膏
それぞれについて簡単に説明すると、まず「1」にあたる外用ステロイドとは、いわゆる「ステロイドの塗り薬」です。また、アトピー性皮膚炎治療剤であるタクロリムス軟膏(非ステロイド剤)も塗り薬ですので、こちらに該当する薬は基本的に塗り薬となります。

「2. 皮膚のバリア機能を高める」ための薬:保湿剤
次に「2」の保湿剤ですが、これは乳液やクリームなどの形で使用するもので、上記の「1」と同じく塗り薬です。皮膚が乾燥すると、そのバリア機能も低下するので、保湿剤もアトピー性皮膚炎の治療には大切なものとなります。

「3. かゆみを鎮める」ための薬:抗ヒスタミン剤
一方で、「3」に出てくる抗ヒスタミン剤は、花粉症のときに飲む、アレルギーの薬と同じものです。アトピー性皮膚炎にはアレルギー反応がかかわるのでこうした薬を使うわけですが、ここで重要なのは、こちらはあくまでも「1」や「2」を補助する目的で使用する、対症療法の薬だということです。

つまり、アトピー性皮膚炎の薬は塗り薬がメインで、これに症状次第で飲み薬を加える、というのが基本的な治療方針となります。以降でそれぞれの薬について詳しく説明します。

皮膚炎を静めるもの

さて、まずは皮膚炎を鎮める効果を持つ塗り薬について説明していきますが、これらのなかでも特に重要なのは、外用ステロイドです。こちらの方がタクロリムス軟膏と比較して歴史が古く、効果や使い方についてより詳しくわかっているので、今回の記事では外用ステロイドについて解説します。

外用ステロイドは強さによって5段階に分けられる

日本では外用ステロイドを、その効果の強さに応じて5つのランクに分けています (1)。この分類方法は、国や地域によって多少の差はあるものの (2, 3)、基本的な方向性は大きく変わりありませんので、ここでは日本の分類法に準拠して解説します。

具体的には、次の5ランクに分けられます。それぞれに、代表的な商品名も併記します (1)。

  • ストロンゲスト:デルモベート、ダイアコートなど
  • ベリーストロング:アンテベート、トプシム、マイザーなど
  • ストロング:ボアラ、フルコート、エクラーなど
  • ミディアム:リドメックス、アルメタ、ロコイドなど
  • ウィーク:プレドニゾロンなど

上のものほど効果が強く、下に行くほど弱くなります。アトピー性皮膚炎の治療をしている方のなかには、上に書かれた薬の複数をもらっている人もいるかもしれません。「どうして同じステロイドの塗り薬を何種類も使うのだろう?」と疑問に思うかもしれませんが、その答えはこのように薬によって強さが異なるためです。

 

どのランクを使うかは「症状」と「場所」で変わる
そこで、次に疑問になるのは、「どういった基準で外用ステロイドの強さを使い分けるか?」でしょう。この答えは「症状の強さ」と「塗る場所」です。

まず、「症状の強さ」については大丈夫でしょう。症状が強ければ薬も効果の高いものを、軽ければ薬も効果が弱いものという使い方をします。問題は「塗る場所」の方です。実は、塗り薬がどの程度吸収されるかは、塗る場所によって大きく変わってきます。塗る場所によって薬の吸収の度合いが変わるのは、以下の理由からです。

皮膚の一番外側は、「角質層」という層に覆われています。角質層は、外からの物質の侵入を防ぐバリアとしてのはたらきをしますが、これは塗り薬にも当てはまり、角質層によって吸収が妨げられます。

そのため、角質層の厚い部分では塗り薬は吸収されにくく、反対に薄い部分では吸収されやすくなります。角質層の厚さは、場所によってかなりの幅があり、例えばお腹と比べると、手のひらや足の裏は60倍ほど角質層が厚くなっています (4)。

こうしたことから、足の裏など角質層の厚い場所では、外用ステロイドの効果も得にくくなるのでランクも強いものを、顔などの薄い場所では、それに応じてランクの低いものを使う必要があるのです。

このように、どの外用ステロイドをどこに使うかは、「症状×場所」の掛け算によって決まるため、ケースバイケースになりがちです。その都度、担当の医療者に確認するのがよいでしょう。

また、あえて一般論をいえば、「ストロング以上のランクのものは顔には使わない方がよい」と考えられています (1)。首より上の部分は、全体的に角質層が薄く、塗り薬が吸収されやすいことが理由です。

ただし、これはあくまでも一般論であり、症状が強い場合はこの方針から逸脱した薬の使い方をした方がむしろ適切なケースも、十分に起こりえます。そのため、繰り返しですが、どの薬をどこに塗るかは、その都度医療者に確認するのがよいでしょう。

②保湿剤

もう1つのアトピー性皮膚炎治療の柱である保湿剤には、皮膚炎を改善する効果はありませんが、皮膚に水分を持たせることでバリア機能を改善する効果が期待できます (1)。このように、保湿剤を使う目的は、外用ステロイドやタクロリムス軟膏とは異なるので、スキンケアの一環として皮膚炎を鎮める塗り薬と併用されます。

また、症状がなくなった後にも継続的に保湿剤を使うことで、再発しにくくなる効果があることも知られています (1)。そのため、よくなったあとも長期的に使用する可能性があります。

③抗ヒスタミン剤

先ほど紹介した外用ステロイドは、その効果の強さによってランク分けがされていました。何となくこうした区別は、どのような薬にも存在するものと考えるかもしれませんが、実はこれは極めて例外的なケースといえます。つまり、大部分の薬では、同じグループに属するもの同士であれば、治療効果には大きな差がないのが、むしろ普通です。

抗ヒスタミン剤の飲み薬についてもこれはあてはまり、種類こそたくさんあるのですが、効果の面では薬ごとにそこまで大きな差はなく、どれを使っても期待される効き目はさほど変わりません。もちろん、薬の効果に対する個人差はありますが、少なくとも一般的にいえば「同じグループに属する薬、AとBではAの方が、明らかに効果が高い」といったことは稀です。

どんな薬でも、これまでの改良型ともいうべき新商品が次々と出てくるのが常ですが、こうした新商品のメリットは、たいてい副作用が若干少ない程度のものです。抗ヒスタミン剤の例でいえば、新商品の方が副作用である眠気が少ないと考えられています (5)。

2.薬の使い方の注意点

ステロイドの副作用は過度に恐れる必要はない

保湿剤に関しては、今述べたように症状がよくなっても継続して使うのが望ましいといえますが、外用ステロイドについてはどうでしょうか。この疑問に対する答えは、「ケースバイケースです」がもっとも正確なのですが、もう少し踏み込んでいえば、経過次第では外用ステロイドを使わなくてよくなるケースもあります。この場合、改善にともなって塗る回数を少しずつ減らしていきます (1)。

いずれにしても、アトピー性皮膚炎の治療においては、何はともあれまずは皮膚炎をしっかり鎮めることが重要です。このあと詳しく述べますが、外用ステロイドの副作用はそのほとんどが軽く、しかも中止することで回復するものです。

薬剤師として仕事をしていると、副作用をおそれるあまり、医療者の指示を守らず、外用ステロイドを適切な方法で塗っていなかったり、塗る量を減らしたりしている方にかなりの頻度で遭遇します。これは、「ステロイド」という言葉に拒否反応を示す人が、いまだにかなりの数いることの証左だと思います。過去に一部メディアが行なった、いわゆる「ステロイドバッシング」がいまだに尾を引いている側面もあるのでしょう。

ですが、外用ステロイドがアトピー性皮膚炎の治療に極めて効果的な薬であることは、ほぼ確実と断言して差し支えありません (1)。副作用に関しても、たった今述べたように、適切に使用すれば極めて安全性の高い薬です。

特に子供のアトピー性皮膚炎では、十分な治療が行われないと将来にわたって皮膚が黒ずんだり、厚ぼったくなったりする可能性が否定できません。繰り返しますが、まずは外用ステロイドを使ってしっかり皮膚炎を鎮めることが大切です。症状が落ち着けば、薬を減らせる可能性は充分にあります。

・外用ステロイドの副作用

さきほど触れたように、外用ステロイドは基本的に極めて安全性の高い薬です。塗り薬全般にいえることですが、作用するのは塗った場所にとどまり、よほど無茶な量を塗らない限りは、全身におよぶ副作用が起きることはまずありません。

あえて副作用を挙げるなら、次のようなものがあります (1)。

  • 皮膚が薄くなる
  • 血管が拡張する
  • 体毛が増える
  • にきび

ただし、これも繰り返しですが、これらは塗った場所に限定するもので、かつ薬を中止すれば元に戻ります。

なお、外用ステロイドの副作用に関連して、「ステロイドの塗り薬のせいで皮膚が黒くなった」という旨の発言をたびたび耳にしますが、これは誤りと考えて差し支えないでしょう。

その皮膚の黒ずみは、日焼けのときにできるのと同じ、「メラニン色素」が原因です。皮膚の炎症が慢性化すると、このメラニン色素が通常より皮膚の奥深くに落ち込むことがあります。つまり、この場合の皮膚の黒ずみは、ステロイドではなく皮膚炎そのものが原因だといえます。

外用ステロイドを使うことで皮膚の状態が改善し、これまで目立たなかったメラニン色素が確認できるようになる結果、あたかも副作用であるように感じることもあるようです。むしろ、皮膚炎が長引けばそれだけ黒くなりやすくなるので、早めに外用ステロイドを使った方がよいともいえます。

なお、外用ステロイドで、皮膚をはじめとした身体の成長に悪影響を与えたりすることはありません (1)。

外用ステロイドを塗る量は「FTU」で計る

これまで、外用ステロイドを適切に使うことが、アトピー性皮膚炎の治療にとって重要だと、繰り返し述べてきました。ところが、この「適切に」がなかなか難しく、せっかくの塗り薬を効果的に使用できていないケースがあります。

特に分かりにくいのは、塗る量です。薬局などで例えば「1日2回塗ってください。1回は風呂上り、もう1回は翌朝です」などと説明は受けても、「どのくらいの量を塗るか?」はほとんど聞かないのではないでしょうか。

そこで、外用ステロイドの量と塗る面積の指標を紹介します。「FTU」と呼ばれるもので、正確には「Finger-Tip-Unit」といいます (8)。

チューブ入りの塗り薬を、人差し指の先から第一関節までの長さ絞り出したとき、その重量はだいたい0.5gになり、これを「1FTU」と数えます。この量を両手のひらに塗るのが適量であると考えられています。ちなみに、両手のひらつまり、手のひら2枚分の面積は、全体表面積の約2%に相当します (9)。

FTUを使うことで、塗る面積によってどのくらいの外用ステロイドをとればよいか分かります。参考までに、身体の部位ごとにどのくらいのFTUが必要か、以下にまとめておきます (9)。

  • 顔・首:2.5FTU
  • 体幹 (片面):7FTU
  • 腕:3FTU
  • 脚:6FTU

・FTUを使う場合の注意点

ただし、FTUを使って塗り薬の量を計る場合、注意すべきことがあります。もともとFTUは海外で生まれた概念で (6)、口径が5mmのチューブから絞り出した場合を想定したものです (7)。薬局にある各種塗り薬のチューブに定規を当てて測定したところ、10gや25g入りのチューブは、おおむね5mmほどの口径がありました。おそらく、海外で汎用されるチューブは、このくらいの大きさがあるものが多いのでしょう。

ところが、日本で使われている外用ステロイドのチューブの多くはもっと小さく、だいたい1本5g入りになっています。このチューブを同じく測定したところ、その口径は3mmでした。絞り出す長さが同じなら、塗り薬の重量は断面積に比例します。ここから計算すると、5g入りチューブでは1FTUに相当する長さを出しても、その重量は0.18g程度になると考えられます。

つまり、多くの外用ステロイドのチューブでは、人差し指の先から第一関節までの長さをとっても、その量は1FTUよりかなり少なくなるということです。そのため、実際に塗る量は、その都度担当の医療者に確認したほうがよいでしょう。

3.まとめ

■アトピー性皮膚炎の治療の中心は、外用ステロイドである
■まずは外用ステロイドでしっかり皮膚炎を鎮めることが重要である
■外用ステロイドは、症状と部位によって使うランクが変わる
■外用ステロイドの安全性は高く、副作用が起きても回復できる
■外用ステロイドの塗る量の目安としてFTUがある

4.参考文献

(1) 日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016 年版
(2) Eichenfield LF, et al. J Am Acad Dermatol. 2014 Jul;71(1):116-32. PMID: 24813302
(3) NICE Guidance. Frequency of application of topical corticosteroids for atopic eczema
(4) 瀬崎仁 他 薬剤学第4版 廣川書店
(5) Hiraoka K, et al. Expert Opin Drug Saf. 2015 Feb;14(2):199-206. PMID: 25466429
(6) Finlay AY, et al. Lancet. 1989 Jul 15;2(8655):155. PMID: 2567912
(7) 大谷道輝・宮地良樹 薬局で役立つ皮膚科治療薬FAQ メディカルレビュー社

 

 

 

執筆
薬剤師:黒田 真生
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