1.アトピーとは
アトピーとは、正確には「アトピー性皮膚炎」と言い、かゆみを伴う湿疹が良くなったり、悪くなったりを繰り返す皮膚の病気になります。アトピーの患者の多くは、アトピー素因※を持っています。
湿疹は全身にみられ、左右対称のことが多く、年齢によって湿疹の出やすい部分が異なります。特に、湿疹が出やすい場所として、肘、膝の裏側、首などです。乳児から成人まで見られ、乳児または幼児期に発症し、小児期に良くなってしまう場合、あるいは持続して、大人まで見られる場合など、その経過は人それぞれです。
症状は、赤み、カサカサ、盛り上がった赤い湿疹が出てきたり、じくじくとして浸出液が出てきたり、皮膚が硬くなった感じでゴワゴワ、粉を吹いたような感じになったりします。
アトピー素因とは
自分の血のつながった家族で気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎を持っている人がいるか、過去に自分自身がこのようなアレルギーの病気を持っていたこと、または、血液検査でIgEと呼ばれる免疫グロブリンを作りやすい体質があることを「アトピー素因」と言います。
こうしたアトピー素因の人がアトピー性皮膚炎になりやすいと言えます。
2.アトピーの原因
2-1: 皮膚のバリア機能の低下
アトピー素因だけでなく、アトピーは他にも様々な原因があります。
皮膚には、そもそも外界に対して身体を守る機能があります。これを「バリア機能」と言います。このバリア機能が低下することも原因のひとつです。
バリア機能が低下することで、様々な刺激に対して過敏になり、アレルギーを起こす物質が皮膚から侵入しやすくなり、本来、無害である物質に対して、免疫反応を起こしやすくなって、免疫反応の結果、炎症と呼ばれる状態を起こします。炎症とは、免疫に関わる白血球が異物に対して排除しようとして集まってきて、取り込んで無害化していく過程で細胞自ら死んでいき、周りの細胞を変化させている状態です。
皮膚の炎症というのは、主に赤くなって、時にじくじくした浸出液が出てきたり、皮膚が盛り上がったりします。特にアレルギーの炎症は、赤みとかゆみが見られます。
アトピーでは、皮膚に存在する保湿成分が不足していると言われています。セラミドや天然保湿因子が少なくなっています。又、角質細胞の周りにあるケラチン、フィラグリンと呼ばれる成分も不足しています。これによって乾燥肌になっていることが多いです。
この皮膚の保湿に関わるファイラグリンの遺伝子異常が、アトピー性皮膚炎の原因の1つという報告もあります。このような皮膚の乾燥はバリア機能の低下の結果であり原因でもあります。
ダニの成分によってはタンパク質を分解する酵素の働きがあることで、皮膚の防御を担うタンパク質を分解してしまい、皮膚の防御が低下することもあります。
アレルギー炎症の結果、免疫反応を活発にするタンパク質であるサイトカイン、免疫細胞を呼び寄せるケモカイン、免疫細胞から放出される様々な化学物質によって、さらに炎症を悪化させ、かゆみの神経を刺激することになります。アトピーでは、かゆみに対して過敏になっています。この痒みは、自律神経のアンバランス、ストレスなどで強くなります。
2-2. アレルギーを起こす物質(アレルゲン)
アレルギー反応を起こす原因物質を「アレルゲン」と言います。
アレルゲンがアトピーの1つの原因でもあり、悪化因子でもあります。
乳幼児では、卵、牛乳、小麦などの食物がアレルゲンになっていることが多く、年齢を重ねると、ダニ、ハウスダスト、イヌやネコの毛・ふけ、カビ、花粉などがアレルゲンになってきます。
食物アレルゲンは、食べてアトピーの湿疹が出てくるだけでなく、家庭内の空中には調理している食物アレルゲンが浮遊していると言われていますので、バリア機能が低下していると、空中の食物アレルゲンによって、アトピーが発症したり、増悪したりすることになります。
早期にアレルゲンになりうる食物を食べておくことで食物アレルギーになることが少なることも報告されていますので、早期にそういった食物を積極的に摂ることも重要でしょう。
また、アレルゲンが皮膚に付着したり、皮膚から侵入することを防ぐために、バリア機能を保つことが大切です。
3.アトピーの悪化につながる要因
アトピーをひどくさせてしまう要因があります。
・職場、保育園、幼稚園、学校での生活の環境の中に存在するアレルゲン
・刺激物による湿疹の悪化
・不規則な生活、食事のアンバランス、睡眠不足などのライフスタイル
・温度、湿度と言った環境因子の悪化 などがあります。
さらに、温熱、汗、ウール繊維、精神的ストレス、飲酒、感冒などによってもアトピーが悪化することがあります。身体が温かくなるとかゆみが増したり、汗を放置することで湿疹が悪化したり、ウール繊維によって皮膚が刺激されることでかゆみがひどくなったり、飲酒では皮膚への血行が良くなることでかゆみがひどくなることがあります。
これらの悪化因子はアトピーの原因にもなりうるので、アトピーがよくならない時には生活を見直してみることも大切です。
4.掻くことが原因となりさらに悪化
かゆみがあることで、皮膚を掻きたくなります。皮膚を掻くことで、皮膚のバリア機能が低下し、さらに湿疹が悪化し、かゆみが増します。さらに掻いて湿疹が悪化するという悪循環になってしまいます。
そのため、かゆみのある時には、かゆみを起こすような因子である、温熱、汗、ウール繊維、飲酒などを避けたり、ストレスを解消し、感冒などにならないように普段から予防に努めたいものです。
アトピーと言っても多くの原因、悪化因子がありますので、1つだけでなく、複数の因子が絡み合って、アトピーの原因になっていることが多いです。そのため、1つだけの原因対策ではよくならいこともありますので、原因対策で良くならない時には、しっかりと治療をしていく必要もあります。
5.おわりに
今回は、アトピーについて解説するとともに、アトピーの原因、悪化につながるような要因についても説明しました。
アトピー素因をお持ちの方は、アトピー性皮膚炎になりやすいのですが、それ以外にも、皮膚のバリア機能の低下やアレルギーを起こす物質(アレルゲン)もアトピーの原因となります。また、アトピーを悪化させてしまうような原因もありますので、注意が必要です。
次回は、アトピーの治療について解説いたします。