1.バセドウ病ってどんな病気?
バセドウ病は甲状腺という器官の病気です。甲状腺は喉にある器官で、ホルモンを作り出す働きをしています。甲状腺が分泌するホルモンの代表的なものに甲状腺ホルモンがあります。甲状腺ホルモンは大きく分けて3つの働きがあります。
① 新陳代謝を調整する
人間が生きていくためには食事として摂取した糖質、脂質などのエネルギー源を燃焼させエネルギーを作り出す必要があります。また細胞は常に古い細胞から新しい細胞に生まれ変わり、体の機能を維持しています。新陳代謝を調整する機能は熱を作り出し体温を維持したり、代謝の早い皮膚や粘膜の健康を維持したりする働きを行います。
②交感神経の働きを高める
人間の自律神経は交感神経と副交感神経からできています。交感神経は仕事や運動などの昼間のお活発な活動に関わります。交感神経は血圧や脈拍を高めて、人間の体をアクティブな状態にするという大切な働きがあります。また集中力ややる気にも関係があります。
③成長や性的な成熟を促進させる
特に小児において甲状腺ホルモンは非常に重要な働きをします。身体の発育や脳の発達などに関わり、健全に成長するために必要不可欠です。仮に甲状腺ホルモンが不足すると身長の伸びが止まったり、知能の発達に遅れが出たりすることがあります。
バセドウ病は甲状腺のこれらの働きが亢進(過剰に働くこと)することで発症する病気です。甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが多くなることで、心身に異常が生じます。男性に比べて女性に多く発症することも特徴です。症状としては以下のようなものが確認できます。
・甲状腺の腫れ
・頻脈
・眼球突出(眼球が飛び出てしまうこと)
・大量の発汗
・手足の震え
・動悸、息切れ
・疲れやすい
・食事をしっかり食べているのに痩せてしまう
・イライラや不安、緊張感
2.症状がバセドウ病と間違われやすい病気
バセドウ病は甲状腺の機能が亢進してしまう病気です。しかし一部、症状が似た病気もあるため注意が必要です。バセドウ病と間違えやすい病気には以下のようなものがあります。
・橋本病
橋本病はバセドウ病とは反対に甲状腺の機能が低下してしまう病気です。
甲状腺の腫れが生じますが、バセドウ病とは反対に脈拍や血圧が低下したり、寒さを感じやすくなったり、食べすぎているわけではないのに太るなどといった症状が現れます。
甲状腺の腫れや疲れやすさなど一部の症状を除いて正反対の症状が現れます。
ただし橋本病では一時的に甲状腺に炎症が生じ、甲状腺内部から甲状腺ホルモンが血中に漏れることで甲状腺の機能が亢進してしまうことがあります。この場合、バセドウ病と同じく大量の発汗や頻脈、動悸、体重減少などの症状が現れます。
・プランマー病
プランマー病は甲状腺に腫瘍ができる病気です。
腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌するようになり、その結果甲状腺の機能が亢進します。バセドウ病と同じような症状が現れることがあります。
・更年期障害
女性は閉経が近づくにつれ女性ホルモンの分泌量が減少し、自律神経のバランスが崩れます。その結果、心身に様々な不調が現れ更年期障害が発生します。大量の発汗や動悸、手足の震え、イライラ、不安などバセドウ病に似た症状が現れることもあります。
3.バセドウ病の原因
バセドウ病は自己免疫疾患の一つです。人間に本来備わっている免疫機能が何らかの要因により甲状腺に反応するようになり、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまいます。ただしバセドウ病の詳細な原因はまだ完全に明らかになっていません。
女性に多く発症することから女性ホルモンが関わっているという説もあれば、疲労やストレスが何らかの要因になるという説もあります。また家系にバセドウ病を発症した人がいる場合、子どもも発症する可能性が高くなることから遺伝上の問題もあるとも考えられています。
なぜ発症するのかが完全に解明されていないため、根治させることは難しいです。ただし、きちんと服薬治療を行うことで症状を軽減させることも可能です。正しい指導のもと服薬を続ければ、運動制限や食事制限などの必要もなくなります。そのほか放射線により甲状腺の細胞数を減らし、甲状腺機能の亢進を抑制する方法や外科手術により甲状腺の一部を切除する治療法もあります。
4.まとめ
バセドウ病は自己免疫の異常により免疫が甲状腺に反応するようになって発症する病気です。
甲状腺ホルモンの過剰な分泌が発生し、常に交感神経が刺激されている状態となります。
甲状腺の腫れとともに頻脈や高血圧、眼球突出、大量の発汗などの症状が現れます。バセドウ病はなぜ発症するのかメカニズムが完全に解明されていません。根本的な治療は難しいですが、服薬治療により日常生活に支障がないレベルにまで症状を軽減することは可能です。