目次
1.「脱水症状」とはどのような状態なの?
「脱水症状」という言葉は一般的に広く使われる言葉であり、誰でも一度は耳にしたことがあると思います。特に夏場では、様々な場面で脱水症状への注意喚起や対策グッズなどが販売されているのを見たことがあるでしょう。
では、「脱水症状」とは体の中でどのような変化が生じることで発症するのでしょうか?詳しく見てみましょう。
1-1. 「脱水」は体の中の水分不足!
私たちの体は体重の半分以上が水分で占められています。その割合は、成人では60%であり、子どもでは70%以上にも及びます。
体内の水分は、細胞の中に三分の二が存在し、残りの三分の一は細胞の隙間にある細胞間液や血管内を流れる血液として存在しています。
脱水症状とは、この体内の水分が何らかの原因によって失われ、様々な症状を引き起こす状態のことを言います。体内の水分は私たちの細胞を正常に保ち、生命を維持する上で非常に重要な役割を果たしています。このため、体内水分が減少すると、その減少の程度によって多くの症状が引き起こされるのです。
1-2. 「脱水」の原因は?
脱水症状は、体内の水分が失われることで引き起こされますが、体から水分が失われる原因には次のようなものが挙げられます。
①大量の汗
私たちは暑い環境に長時間いたり、激しい運動を行うと大量の汗をかきます。これは、上昇した体温を下げるための重要なメカニズムであり、汗をかくこと自体はごく正常な反応であると言えます。
しかし、汗は体内の水分と電解質からできているため、大量の汗をかくということは、体内の水分と電解質を失うことにつながるのです。
②不感蒸泄(ふかんじょうせつ)
私たちの皮膚は、汗以外にも常に水分が蒸散している状態にあります。また、呼吸によって気道からも水分が失われており、このような目に見えない水分の喪失を「不感蒸泄」と呼びます。成人では安静にしていても一日に約900mlの不感蒸泄があると言われていますが、体温が上昇している状態では不感蒸泄量は更に多くなり、体から過度に水分が失われる原因となります。
③下痢・嘔吐
感染症などによって頻回の下痢や嘔吐が生じると、体内の水分が嘔吐物や下痢便として大量に排出されるため、脱水症状を引き起こしやすくなります。
2.脱水症状ではどのような症状が生じるの?
脱水症状では、失われた水分の程度によって全身に様々な症状が現れます。脱水症状は場合によっては死に至ることもある見過ごせない状態であり、気付いた時点で適切な対処を行う必要があります。
では、脱水症状ではどのような症状が生じるのでしょうか?失われる水分量によって軽度・中等度・重度の3段階にわけてみてみましょう。
2-1. 軽度
皮膚や口腔内の乾燥が見られ、ほとんどの人は喉の渇きを自覚します。しかし、乳幼児や高齢者では喉の渇きを自覚できず、十分な水分補給を行わず脱水症状が更に進行することも少なくありません。
また、めまいやふらつき、注意力低下などの症状が現れることもあります。
2-2. 中等度
軽度な脱水症状から更に進行すると、頭痛や吐き気、食欲不振などの症状が現れます。また、体内水分の不足が進行することで、汗の量が減り、結果として体温の上昇が見られ、皮膚の紅潮や熱感を伴うこともあります。
尿の色が濃くなり、量が少なくなるのも特徴です。中等度な脱水症状にまで進行すると、体重の減少も目立つことが多々あります。
2-3. 重度
体重の10%以上の水分が失われると、けいれんや意識障害を起こすこともあり、生命の危険に陥るケースも少なくありません。
多くは中等度の段階で病院を受診し、治療が開始されますが、乳幼児や高齢者が頻回の下痢や嘔吐を繰り返す場合には、短時間で高度な脱水症状に至ることもあります。
3.脱水症状で引き起こされる「頭痛」とは?
中等度の脱水症状に陥ると、頭痛が引き起こされることがあります。しかし、頭痛は一般的な風邪や女性に多い片頭痛などでも生じるありふれた症状であり、頭痛が起きたからといって脱水症状を疑う人は少ないでしょう。
では、なぜ脱水症状で頭痛が生じるのでしょうか?詳しく見てみましょう。
3-1. 脱水症状での頭痛は血管の広がりが原因?
体内の水分量が減少すると、私たちの体内では血液量が減少していきます。血液は体に酸素やブドウ糖などの栄養素を行きわたらせるのに重要な働きを持ち、血液量が減少すると酸素や栄養素を必要とする臓器では、血管が拡張されてより多くの血液を取り込もうとする仕組みが働きます。
脳は、特に酸素と栄養を必要とする臓器であり、血液量の減少をいち早く感知して血管拡張作用が働きます。脳の血管の周囲には三叉神経を始めとする多くの神経が張り巡らされており、血管が拡張することでこれらの神経を刺激すると頭痛を生じることがあるのです。
このように、脱水症状で生じる頭痛は脳の血管がより多くの血流を確保しようと、拡張するメカニズムのために生じるものなのです。
3-2. 脱水症状での頭痛の特徴とは?
脱水症状で生じる頭痛は、頭の一部分が「ズキズキ」と痛むのが特徴です。これは、血管拡張によって刺激された神経の部位に痛みが生じるためです。特にこめかみや側頭部に生じることが多く、拍動性を伴うこともあります。
また、頭痛を生じる程度の脱水症状がある場合には、発汗の減少や体温の上昇、皮膚の紅潮などの症状を生じている場合が多く、これらの症状を伴う頭痛は脱水症状による頭痛の可能性が高いと考えられます。
さらに、一度脱水症状に陥ると、体内に十分な水分を補給しても体内のバランスが整うにはある程度の時間がかかり、頭痛をはじめとした症状はすぐに治らないことも少なくありません。中には数日にわたって辛い症状に悩まされることもありますので注意が必要です。
4.こんなサインにはご注意を…
脱水症状は気付かぬうちに発症して進行していることも多く、特に夏場は室内であっても油断することはできません。
夏場の頭痛は脱水症状によるものである可能性があります。頭痛の他にも次のようなサインがある場合には、涼しい場所に移動して、電解質を含んだ十分な水分を摂りましょう。
・脇の下や首元など汗をかきやすい部位が渇いている
・皮膚をつまむと弾力がない
・爪を押して離しても白いままである
・指先が冷えている
・舌や口の中が乾燥している
5.まとめ
脱水症状は気付かぬうちに発症し、自覚がないまま症状が進行していることがあります。よくある症状の「頭痛」は脱水症状でも引き起こされることがありますが、頭痛が現れるケースでは既に中等度以上の脱水症状に陥っている可能性が考えられます。
梅雨時や夏場には、脱水症状のサインを伴う頭痛には注意が必要です。体を冷やしたり、水分補給をしても改善しない場合には、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。