認知症は早期発見が重要。認知症の検査方法と診断について解説

認知症の診断は、医師に診察をしてもらうことのほかに、脳の画像診断検査、認知機能検査、髄液・血液検査など様々な種類の検査方法を組み合わせて行われます。認知症というとアルツハイマー病を思い浮かべる方が多いと思いますが、実際アルツハイマー病が認知症患者の半分以上を占めています。しかし、その他にも色々なタイプの認知症があり、それぞれに特徴があります。そこでいろいろな方法を合わせて、認知機能低下の程度だけでなく、診断をつけていくことが必要になるのです。認知症の中には、治療により改善できるものもありますので、適切な検査を行い、早期に診断し治療していくことが大切です。

今回は、認知症の検査方法にはどのようなものがあるかについて解説していきます。
※この情報は、2018年2月時点のものです。

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1.認知症の検査について

 認知症は、

①記憶障害がある

②記憶能力以外の認知機能の低下がある

③それらの結果として生活障害がある

ということが診断の基本になります。

 

認知症は突然発症するものではなく、一般には段々正常からずれていって、認知症に移行していくことが多いものです。

認知症と正常の老化の中間、軽度認知障害(MCI,Mild Cognitive Impairment)といわれる状態があることも知られてきています。MCIは記憶障害など限局した問題はあるものの、全般的な認知機能の低下のない状態のことをいいますが、一部は認知症に移行していきます。

 

そこで認知症の検査には、まず認知機能低下がどの程度あるのか、どのような種類の認知機能が低下しているかを調べる心理検査があります。

 

認知機能の低下が記憶障害だけなのか、それ以外の認知機能の低下もあるのか、それぞれの進行の度合いはどの程度なのかもみていきます。

 

これと併せて脳の画像により脳の状態を調べる検査も行われます。さらに認知症のバイオマーカーを脳脊髄液や血液で調べる検査も開発されてきています。認知症にはいろいろなタイプがあり、これらの検査をあわせて診断を行っていくのです。

 

2.脳画像診断検査

①脳の萎縮を評価:脳CT、MRI

脳のCT、MRIなどの画像により 認知症における脳の状態、とりわけ脳の萎縮を評価することができます。認知症の多くでは、経過とともに神経細胞が減少して脳の体積が小さくなり、逆に溝がだんだん明瞭に開いてきます。

 

しかし、そのパターンは認知症の原因疾患によって異なります。例えばアルツハイマー病では、記憶に関わりの深い脳部位を含む側頭葉の内側、とりわけ海馬の萎縮が見られます。この他にも頭頂葉など他の大脳皮質の萎縮も進行とともに進んでいきます。脳のMRIでは、Voxel-based specific regional analysis for Alzheimer disease (VSRAD)というソフトウエアを使えば、脳のMRIから客観的に萎縮の程度を調べることができます。前頭側頭型認知症では、前頭葉・側頭葉を中心とした萎縮が見られます。

 

血管性認知症では、脳梗塞、脳出血などを認めます。正常圧水頭症は脳の中で水のたまっている脳室といわれる部位の拡大を認めますが、脳脊髄液が貯留し脳が圧迫されて、記銘力障害(認知症)、歩行障害、尿失禁などの症状が起こります。

 

②脳の血流分布をみる:SPECT、PET

単一光子放射断層撮影(single photon emission computed tomography、SPECT)は、少量の放射性同位元素を静脈に注射し、それが分布する様子を撮影することにより脳の血流分布をみることのできる検査です。

陽電子放射断層撮影法(positron emission tomography、PET)は、やはり放射性同位元素を用いて、脳の血流や代謝の分布を調べる方法です。認知症の患者では神経細胞の減少・脳の機能低下に伴って大脳血流の低下を認めますが、アルツハイマー病では、とりわけ側頭葉の内側に血流低下を認めやすい傾向があります。一方、レビー小体型認知症やパーキンソン病に伴う認知症では、後頭葉の血流・代謝の低下を認めます。前頭側頭型認知症では、前頭葉、側頭葉の血流低下が見られます。このように血流低下のパターンが認知症の種類によって異なるため、認知症の診断に役立てることができるのです。

③アルツハイマー病の早期診断に:アミロイドイメージング(アミロイドPET)

 アルツハイマー病の原因となる脳へのアミロイドβという蛋白の沈着を画像的に観察できる方法です。アミロイドイメージングは、アミロイドβの沈着している部位に特異的に結合する放射性同位元素のトレーサーを用いて、アミロイドβタンパクが蓄積する様子を画像化するものです。この画像をみることにより、アルツハイマー病が発症する15―20年前からこのようなアミロイドの蓄積が始まっていることもわかってきています。従ってアミロイドイメージングによりアルツハイマー病の初期からの診断が可能になると考えられます。逆にアミロイドイメージングで陰性の場合、認知症の原因がアルツハイマー病以外のものである可能性が高くなります。

 

④ドーパミン神経細胞を画像化:ドーパミントランスポーター画像(DATスキャン)

ドーパミントランスポーター画像は、脳内のドーパミン神経細胞を画像化する手法です。脳の黒質というところにあるドーパミン神経細胞はドーパミンを産生し、神経細胞体からのびた突起の先端から、大脳の真ん中にある大脳基底核にこれを放出することにより、体をスムーズに動かす役割をしています。

 

この細胞が減少するパーキンソン病では、脳内のドーパミンが減少し、体がスムーズに動かなくなり、手足の震えや筋のこわばり(筋強剛)、歩行障害などの症状がみられます。

 

パーキンソン病でも認知症をきたすことがあります。またレビー小体型認知症はパーキンソン病と関連の深い認知症です。この認知症でも、ドーパミントランスポーター密度の低下が認められます。

 

3.認知機能検査、心理検査

①総合的に評価:ウエクセラー成人用知能検査第三版(WAIS-III)

WMS-IIIは欧米をはじめ世界的に使われている認知機能テストで、日本語版WAIS-IIIは2006年に出版されました。言葉の問題と図形を並べかえるなどの課題が含まれており、これらに答えてもらうことで記憶力や集中力、注意力などを総合的に評価することができます。対象年齢は16-89歳で、全検査知能指数、言語性知能指数、動作性知能指数を算出できます。ただ検査の項目が多く、すべてを行うのに約3時間と時間がかかります。診察の間に簡単に行うことができないため、診察時には以下のスクリーニング検査が用いられます。

 

②国内で一般的なスクリーニング評価法:長谷川式認知症スケール(HDS-R)

長谷川式認知症簡易評価スケールは、1974年に長谷川和夫らによって開発された認知機能の評価スケールで、1991年に改訂されています。年齢、日時や場所の見当識注)、簡単な計算、言葉の記銘や再生、数字の逆唱、物品再生、言語の流暢性などをみるものですが、答えが正確かどうかで点数が付けられます。5-10分以内といった短時間で施行することができるので、診察でもよく用いられ、国内で最もよく使われている認知症のスクリーニングテストです。30点満点ですが、得点が20点以下だと認知症の可能性が高いとされています。

注)現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況を認識する能力のこと

 

 ③ベッドサイドで実施でき国際的に用いられているスクリーニング検査:Mini-Mental State Examination(MMSE)

1975年にFolsteinらにより、ベッドサイドで実施できる簡便な認知評価スケールとして開発されました。長谷川式認知症スケールよりも少しだけ質問項目が多いですが、やはり5-10分と時間をかけずに行うことができるため、認知症のスクリーニングとして全世界で広く使われています。

 

時間や場所に対する見当識、3単語の記銘、注意と計算、3単語の遅延再生、簡単な言語指示に従う、簡単な線画の模写、などの項目が含まれています。30点満点ですが、22〜26点で軽度認知症の疑い、21点以下で認知症の疑いが強いとされています。

 

④認知症の全般的重症度を評価:臨床認知症尺度(Clinical Dementia Rating, CDR)

認知症の全般的重症度の評価尺度として広く使われています。被験者に検査を行うだけでなく、家人からも患者の日常生活の様子を聞きます。記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家族状況および趣味、介護状況の6項目を5段階で評価し、認知症の疑い(CDR0.5)、軽度認知症(CDR1)、中等度認知症(CDR2)、高度認知症(CDR3)のいずれの段階になるかを判定します。

 

⑤認知症の薬の効果を評価し、症状の変化に鋭敏:アルツハイマー病評価尺度(日本語版 ADAS-Jcog)

 アルツハイマー病に用いられるコリンエステラーゼ阻害薬など認知症の薬の効果を評価する目的で1983年Mohsらにより開発された簡易認知機能スケールです。記憶、言語、行為、構成などを調べる項目からなります。ADAS-Jcogはアルツハイマー病の経時的な変化を鋭敏に検出できるといわれています。

 

⑥軽度の記憶障害を検出:MoCA-J(Montreal Cognitive Assessment 日本語版)

視空間機能、記憶、注意、言語、抽象概念、遅延再生、見当識などが含まれています。MMSEより難度が高いですが、比較的簡便に短時間で行うことができます。軽度の記憶障害を検出するのに用いられます。MCIではMoCAは25点以下とされています。

⑦視空間認知機能を評価:Clock Drawing Test

文字通り、患者に丸い時計の文字盤を描画してもらう検査です。あらかじめ書かれた円を時計として仕上げさせる、口頭の指示に従って白紙に時計の絵を描かせるなどの方法があり、10 時10分、8時20分などの時刻を書かせます。本来は視空間認知機能として用いられるテストですが、聴覚理解を含めた様々な認知機能も反映するため、認知症のスクリーニングに用いられるようになりました。HDS-R、MMSEではわかりづらい、作業記憶、遂行能力、視空間認知といった機能もみることができるので、これらと組み合わせて用いられます。

 

⑧うつ症状を鑑別する:老年期うつスケール

 高齢者ではうつの症状と認知症の症状が紛らわしいことがよくあります。うつ自体も認知症の発症リスクといわれています。うつ病は薬物で治療することができますので、認知症との鑑別は重要です。そこでGeriatric depression scale(GDS)、Hamilton病状評価スケールなどのうつ病スケールが併せて行われることがあります。

 

4.その他の検査

一般の認知症は根本的な治療がないものが多いのですが、その一方で治療により症状の改善が期待できる認知症もあります。このような認知症の原因には、内科的な疾患に伴うものが多く、例えば甲状腺機能低下症のような内分泌疾患、代謝疾患、ビタミンB1・B12欠乏などのビタミン不足、抗コリン薬などによる薬剤性認知症などがあります。脳そのものの疾患ではなくても、さまざまな病気で全身状態が悪化すると認知症のような症状を呈することもあります。正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫などは脳外科的な治療が有効な認知症です。これらの認知症はそれぞれの疾患に応じた治療をすれば改善させることができるので、検査により早めに診断し、見落とすことなく治療にもっていくことが大切です。

 

①脳のまわりにある脳脊髄液を調べる:髄液検査

 アルツハイマー病ではアミロイドβと、リン酸化タウ蛋白などのタンパクが脳内に蓄積することにより、老人斑や、神経原線維変化などの病理所見が生じると考えられています。脳のまわりにある脳脊髄液を調べる髄液検査でもアミロイドβ42というタンパクの低下と、タウタンパクの上昇が見られ、診断に役立つとされていますが、髄液検査は負担のある検査ですので、患者全員に行うというわけにはいきません。

 

②最先端の検査事情:血液検査、脳波など

血液中のアポリポ蛋白質の遺伝子にはε2、ε3、ε4の3種類の対立遺伝子注)があることが知られています。

 

この遺伝子がアルツハイマー病のリスクに大きな影響を与えると考えられています。具体的には、2対の遺伝子の上にのっている対立遺伝子に疾患感受性遺伝子であるε4が1つあると、アルツハイマー病のリスクは2-4倍に、2つあると5-30倍になるといわれています。

 

注)ヒトでは、22対の常染色体と1対の性染色体がありますが、1対の染色体における「相同な」遺伝子座に、異なる遺伝情報を有する遺伝子を対立遺伝子といいます。

 

最近では、アルツハイマー病の原因物質の一つで、血液中にごく微量含まれている、リン酸化タウ蛋白を検出する方法が開発されたことが報道されました。このような検査ができるようになれば、限られた施設でしかできない画像検査や負担の大きい髄液検査を行うことなく、アルツハイマー病の診断を早期につけることができるようになる可能性があります。

 

しかし高齢者検診などで利用されるのはもう少し先になると思われます

 

高齢者のてんかんは、一部認知症と間違えられやすいものがあります。脳波などでてんかんの診断をつけることができれば、抗てんかん薬によってこのような症状を改善させることができます。

 

5.おわりに

認知症は残念ながら現時点では根本的に直す治療がないものが多いのが実情です。

しかし、どうせ直らないから、とあきらめることなく、医師とよく相談して対応していくことが大事です。どのタイプの認知症であるか診断し、治療やケアに役立てていくことも大切です。治療できる認知症もあるので、見落とさないことも重要です。

 

参考文献 : 

日本神経学会(編):認知症疾患 診療ガイドライン2017. 医学書院

辻 省次、河村 満(編):認知症 神経心理学的アプローチ. 中山書店

 

 

 

執筆
医師:子煩悩神経内科医
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