【医師が解説】認知症を予防する方法はある?予防方法に関する疑問を解決

400万を超える人が発症されているとされる認知症を予防する方法はあるのでしょうか。ここでは、認知症の進行について解説するとともに、予防方法や工夫できる生活習慣についてもご説明していきます。
※この情報は、2018年2月時点のものです。

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1.認知症とは?どのように進行する?

アルツハイマー病の原因はまだ完全には解明されていない部分もありますが,アミロイドβ(Aβ)タンパクが脳の神経細胞の外に沈着し,リン酸化したタウ蛋白と言われるタンパク質が神経細胞内に蓄積していくことにより神経細胞死・神経細胞の減少につながると考えられています。

 

これらのタンパク質が蓄積し変化の起こった状態を、病理学的に脳の切片で観察したときに、老人斑・神経原線維変化や神経細胞の減少という形でみることができます。問題は、認知症が発症する15―20年前からこのようなアミロイドの蓄積が始まっているということです。

 

アルツハイマー病の発症時点ではこれらの病理変化がかなり進んでいて、神経細胞の数もかなり減少しているということがわかっています。ということは、発症時点でいくら治療を開始しても、認知機能の大きな効果は望めないということになるのです。そこで予防が重要になります。アミロイドβ蛋白が蓄積しないようにする方法があればそれが治療になるわけですが、そのような薬は開発途上です。

 

2.認知症状を予防することは可能か?

根本的に認知症にならないために予防する方法はないということになりますが、私たちができることは全くないのでしょうか。一概にそうとも言えなさそうです。

 

アルツハイマー病だけでなく、認知症一般について日常生活の中でできる予防について説明していきます。

3.認知症の予防方法・なりにくい生活習慣

どのような生活習慣の人が認知症の予防になるのでしょうか。

 

社会に積極的に参加し、普段から運動をし、頭をよく使い、さまざまな刺激をまわりから受け、食事を含む規則正しい生活習慣をもっている高齢者は認知症になりにくいといわれています。

 

科学的には実際にはどうなのでしょうか。まずはこのあたりからみていくことにしましょう。ここでは主として認知症の半分以上を占めるとされるアルツハイマー認知症を念頭において述べていきたいと思いますが、その他の認知症、例えば脳血管性認知症の予防についても述べます。

3-1. 運動をする

 意外なことに、認知症の予防として最も効果があるとされているものの一つが運動なのです。

 

定期的な運動、とりわけ有酸素運動が高齢者の認知症やアルツハイマー病の予防に有益とされています。毎日30-50分程度の散歩を行った群は、行わなかった群の人より認知症の発症が抑制されるという報告がいくつかあります。


 運動していたほうが全般的に身体の老化によいのは確かでしょうし、何となく運動が認知機能にいい影響を与えそうな感じがすると思います。しかし運動はアルツハイマー病の予防になるのはどうしてでしょうか。これについては、βアミロイドを分解する酵素が活性化されるという説や、運動をすることで脳の細胞死を抑制する神経栄養因子(BDNF)を増加し、神経細胞の活動を活発にすること、運動が体内の酸化ストレスを減少させること、などの説があります。

 

 「運動習慣の介入は、日常生活の改善やQOLの改善には効果があるが、認知機能自体には影響を与えない」という報告もあるのですが、様々な報告を総合的にみてみると、全体としては「身体活動や運動習慣がある人では、認知機能の低下は抑制される」という結論が支持されるようです。

3-2. バランス良い食生活

 炭水化物を主体とする高カロリー食、低蛋白食、低脂肪食は認知症のリスクになるといわれています。

 

その一方で、大豆・大豆食品、野菜、藻類、牛乳、乳製品の摂取は認知症のリスクを低減するとされています。とりわけ酸化ストレスの予防とビタミンCやEの摂取、あるいは高ホモシステイン血症が認知症、認知機能低下と関連することから、これを予防する葉酸、ビタミンB12などのビタミンの摂取が注目されてきました。

 

しかしこれらのビタミンが明確にアルツハイマー病を予防する効果があるかどうかは、はっきりしていません。また魚などの食品やω3脂肪酸の摂取が認知症の予防になるとの研究もありますが、かならずしも認知症のリスクとの関連ははっきりしていません。コーヒー、緑茶、オリーブオイルなども認知症の予防によいという人もいますが、報告により食い違いがあるのと、どのくらいの量なら効果があるかということはわかっていません。個々の栄養素や食品だけで確実な効果があるか、確定的なことを言うのは難しそうです。

 


 近年は、食品よりも食事全体のパターン、あるいは中年期でメタボリック症候群を予防するような食事のとり方が重要だと考えられています。ただ注意しなくてはいけないのは、高齢者においてはむしろ低栄養になることのほうが問題になることが多いことです。

 

 適度な飲酒が認知機能の低下やアルツハイマー病の予防に有効とする報告もあります。とくに赤ワインの適量摂取は効果があると報告されています。これは過剰に飲酒している人と適度な飲酒をしている人を比較した観察に基づくものですが、同様の報告がいくつかなされており、上で述べたビタミンや食物の話より確実な予防効果が期待できそうです。

 

しかし実際に過剰な飲酒をさせた群と、適度な飲酒をさせた群で比較検討するという実験は行いにくいので、これを科学的に実証することはなかなかできません。おまけにお酒の飲めない人に無理に飲酒をさせるのが適切でないことは確かです。

 

また適度な飲酒の量がどの程度なのかは決めるのは難しく、大量飲酒は脳を萎縮させるということも知られていますので、むやみと飲酒をすすめるのはもちろんよくありません。

 

 

3-3. 認知症のリスクファクターを予防・治療する

脳血管性認知症というタイプの認知症があります。文字通り、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など脳血管障害によって引き起こされる認知症です。老年期認知症の20-30%を占め、認知症の中では二番目に多いものです。

 

 動脈硬化という言葉を聞いたことがあると思います。これは文字通り年齢とともに動脈の壁が硬く柔軟性を失っていく状態のことです。実際起こっていることは、高血圧などにより血管が傷ついたり,動脈内壁に沈着したコレステロールや血小板が徐々にたまり,アテローム(粥腫,プラーク)が形成されるため動脈内腔が徐々に狭小化(アテローム硬化)し,血管が狭窄をきたし段々に閉塞しやすくなるのです。

 

これにより脳の血管がつまって脳梗塞が起きます。脳出血、くも膜下出血は、弱くなった血管の一部がやぶれて出血するものです。脳梗塞、脳出血などにより神経細胞が障害され減少したり、神経細胞同志の線維連絡が障害されることにより起こる認知症を脳血管性認知症と呼んでいます。

 

 脳血管性認知症は、神経細胞に問題があるというより、脳血管の問題による認知症で、予防することができます。基本的には、上で述べたような血管の病態が起きない、あるいはそれ以上悪化しないようにすればよいのです。


 中年期の高血圧は脳梗塞などのリスクファクター(危険因子)になりますし、認知症のリスクファクターであることもわかっていますので、積極的に治療する必要があります。また脳梗塞、脳出血いずれでも高血圧の管理が重要です。糖尿病や、コレステロールが高いなどの脂質異常症なども、動脈硬化のリスクファクターになることが知られており、これらを治療することで、動脈硬化ひいては脳梗塞を防ぐことができます。

 

これらの予防効果は40-65歳の中年期では証明されていますが、高齢者でははっきりしなくなるといわれています。即ち予防は特に中年期に行わないといけないということになります。もちろん禁煙も重要です。

 

 さらに脳梗塞による認知症では、アテローム血栓性の機序によるものについては抗血小板薬、心房細動によるものでは抗凝固薬により再発予防の治療を行います。この場合もADLの低下は認知機能の低下を進行させるため、脳血管障害の初期からリハビリテーションを行うことが重要です。

 

 脳血管性認知症に上記の対策が有効であることは理屈からもわかりますが、アルツハイマー型認知症にも効果があるのでしょうか。実は糖尿病や脂質異常症はアルツハイマー病の危険因子になることもわかっています。中年期の血糖の管理が、認知症発症の予防に重要であるといわれています。

 

糖尿病による高血糖状態が続くと、βアミロイドの蓄積が進みやすくアルツハイマー病を合併しやすいこととされています。またアルツハイマー病に糖尿病が合併すると、認知症も悪化します。糖尿病を治療すると、認知症もよくなるのです。


 中年期にコレステロールが高いこともアルツハイマー病の危険因子になることがわかっています。ですから、きちんとコレステロール値をコントロールすることも重要です。食事のみでコントロールが十分でなきない場合には、スタチンというコレステロールを下げる薬を内服します。しかし高齢者では、コレステロール値とアルツハイマー病の関係はあまり明確ではありません。

3-4. 睡眠をよくとる

 脳を取り囲む脳脊髄液は 150ml程度ありますが、毎日500mlくらい産生されては吸収されており、一日3回くらい循環するといわれています。アミロイドβは健康な人の髄液中にも存在し、毎日作られては脳脊髄液から除去されるのですが、日中の活動で生じた老廃物を、脳脊髄液が循環する際に回収しています。この除去の過程に、睡眠が重要であることがわかってきています。


 徹夜をした被験者としない被験者で、髄液中のアミロイドβタンパクの量を調べたところ、徹夜をした被験者の方が多かったという研究があります。

 

夜間の睡眠の質もその分解に関係しているといわれており、睡眠効率が悪い人はアルツハイマー病になる可能性が高い、また昼寝をする人はアルツハイマー病になりにくいという報告もあります。逆に、睡眠障害が認知症のリスクを高めることも明らかになってきており、実際に睡眠障害が認知症の前兆になっている症例もあるといわれています。


 即ち睡眠不足や睡眠の質の低下があると、アミロイドβタンパクの除去が十分できなくなり、認知症のリスクが高まることが考えられるのです。良い睡眠を保つことがアミロイドβの蓄積を抑え、認知症を予防する上でも重要と考えられるのです。

3-5. 頭をよく使う

頭をよくつかうことは認知症予防に繋がるとされています。

 

他人と話をするというのは脳の良い刺激になるので、他人と上手にコミュニケーションをとることが、認知症の予防になると考えられています。

 

その他にも友達に会う、ボランティア活動などの社会参加、余暇への活動、精神活動はアルツハイマー病の予防だけでなく、高齢者の認知機能低下の予防になるといわれています。高齢者の余暇の活動と認知症の発症の関係を調べたアメリカの研究でも、新聞を全く読まない人に比べて、新聞をよく読む人は認知症になりにくいと報告されています。

 

余暇活動としては旅行、映画鑑賞・観劇、囲碁・麻雀、編み物、コンサートなどが挙げられます。ただ一口に社会参加をする、他人とコミュニケーションをとるようにする、余暇活動を大事にするといっても、その内容は人によってそれぞれいろいろなことを含んでいますので、一つ一つに科学的な根拠が出しにくいのも事実です。

 認知症の患者さんの生活習慣と認知症の発症を多数の修道女の協力を得て行ったnun studyという研究がアメリカのケンタッキー大学により行われました。78歳から100歳まで600人以上の修道女が参加し、亡くなった後、脳の病理所見も調べられました。

 

修道女は同じような環境で、同様の生活習慣で生活していますので、この集団で認知症を発症した人としなかった人がいた場合、どのような要因が認知症につながるかが解明しやすいのです。

 

この研究でわかった意外な事実は、死後脳が高度に萎縮し老人斑や神経原線維変化のような明らかなアルツハイマー病の病理所見を呈していた修道女が、生前全く認知症を示していなかったばかりでなく、知能テストでも高得点をとっていたことでした。この修道女の生活の様子の記録を調べ返してみると、若い頃から高齢になるまで一貫して好奇心が高く、知的な活動を維持していたことがわかったのです。

 

教育歴が長い人は、そうでない人に比べて認知症になりにくいというデータも最近出てきていますので、頭を使うことは認知症に対してある程度予防効果があるということになるでしょう。さらに高齢になっても頭をつかいつづけることが認知症の予防にもつながるかもしれません。

 

ただ、様々な認知訓練については、認知機能予防に効果があるとする報告とないとする報告があり、かならずしも意見の一致をみていません。新聞の短いコラムなどを書き写すなど、何かを見ながら書く事や、声に出して読む事、計算ドリルなどいろいろなものが試されていますが、確実な効果があるかどうかは不明です。

 

4.おわりに


 最近では神経機能画像などを用いることなく、血液検査でアミロイドβの蓄積を検出できる方法がでてきています。アルツハイマーの発症を未然に検出し、それをもとに発症を抑えていく治療が現実のものとなる日も近いかもしれません。

しかし一度発症してしまった認知症では、治療をしたとしても効果はあまり期待できません。その意味で も予防は非常に大切なのです。

 

 日常生活でできることで、認知症のリスクを減らす方法にはどのようなものがあるか、についてご説明してきました。ここで書いてきたことは、いかにも認知症の予防によさそうなものばかりですが、科学的根拠がうすいもの、やるとしても注意してやった方がよいものがあることもおわかりいただけたでしょう(高齢者でカロリーの制限をすることなど)。


 予防は認知症のタイプによっても異なります。アルツハイマー型認知症などでは脳にアミロイドβタンパクなどの異常蛋白がたまることが原因となっている以上、上で述べた予防を実際に行ったからといって100%確実に予防ができるわけではありません。他方、脳血管性の認知症については、日常生活、薬を使った治療など予防の手段がいろいろあります。医師とも相談しつつ、安全で確実な情報に基づいた予防を考えていきたいものです。

 

 

参考文献:

 

①認知症疾患診療ガイドライン2017. 日本神経学会監修 医学書院

②脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方. ジョン J. レイティ、 エリック ヘイガーマン著 NHK出版
③100歳の美しい脳―アルツハイマー病解明に手をさしのべた修道女たち.
デヴィッド スノウドン著

 

 

執筆
医師:子煩悩神経内科医
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