【物忘れが多い】認知症症状と年齢による物忘れはどう違う?その症状を解説

認知症の患者は2010年の時点で200-220万人程度と推定され、2025年には470万人にも達すると考えられています。



今後社会の高齢化が進むにつれて、ますます患者が増えると予想されます。それだけに身近な人に、物忘れがでて、歳のせいなのか、あるいはぼけてしまったのではないかと心配になっていらっしゃる方、あるいは自分自身物忘れがでてきて、心配になる方もいらっしゃるかもしれません。

どんな症状がでたら、認知症なのでしょうか。正常の老化に伴う物忘れとはどのように違うのでしょうか。病的な物忘れにはどのような特徴があるでしょうか。

ここでは認知症に伴う様々な症状について、述べていきます。
※この情報は、2017年12月時点のものです。

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1.認知症症状とは

いったん正常に発達した知能が、何らかの後天的な原因によって低下し、複数の認知障害をきたすために生活が困難になる状態を「認知症」といいます。

かつては‶痴呆”といわれていたものです。お年寄りは多少とも物忘れがあるものです。特に会って間もない人の名前などは誰でも忘れやすいものです。これは人の名前の場合、思い出すためのそれ以外の手がかりがあまりないためですが、こうしたことからも物忘れがあっても、すべて認知症というわけではありません。

2.認知症症状と年齢による物忘れの違い

それでは認知症と単なる年齢による物忘れの症状はどのように違うのでしょうか。

正常な物忘れの場合は、あとで思い出せるという特徴があります。認知症と正常の老化に伴う物忘れの違いのもう一つは、正常の老化では物忘れのみに症状が留まっており、時間が経過しても他の症状は出てきません。従って、何年かたっても症状がひどくならなければ、正常の老化に伴う物忘れと考えることができます。

 

これに対し認知症の多くは、物忘れなど認知機能低下や見当識障害(時間・場所・人などの状況を正しく認識する能力)からはじまりますが、進んでくると、症状は物忘れのみにとどまらず、他の認知機能も低下するようになってきます。

 

例えば判断力の低下、いつもと違うことが起きたときに対応できないなどの問題解決能力の障害や、計画をたててものを行うなどの実行機能が低下してきます。例えば、ガスをつけっぱなしにする、洗濯機の使い方を忘れる、などの日常生活上の問題が出てくるのです。

 

3.正常な物忘れと認知症の中間症状 MCI とは

このように説明すると、一見正常な物忘れと認知症の症状は簡単に区別できるように思えますが、実際は、これらの認知症と正常の老化による物忘れの区別は初めのうちはそれほど容易でないことがあります。

認知症と正常の老化の中間、「軽度認知障害(MCI,Mild Cognitive Impairment)」といわれる状態があることが知られています。

 

MCIは記憶障害など限局した問題はあるが、全般的な認知機能の低下のない状態のことをいいます。もっと言えば、記銘力の障害あるいは記憶以外の認知機能、上で述べた判断断力や時間・場所・見当識の障害、実行機能などのうち1つの機能のみに問題があるが、他の機能は保たれている人のことを言います。

MCIは65歳以上の高齢者の15-25%でみられるといわれますが、こうした人の中には、1年間に10-15%くらいは本当の認知症になっていく人もいます。つまり、MCIの人の一部は認知症の前段階にあると考えることができるのです。

 

近年、MCIの人が生活習慣改善などの適切な予防策や治療を受ければ、進行を防いだり、発症を遅らせたりすることができる場合があることがわかってきており、、MCIの段階での早期発見が重要になってきています。

 

4.認知症の中核症状と周辺症状

認知症には、認知症の患者、全てでみられる症状、いわば認知症のコアな症状ともいうべき「中核症状」と呼ばれている症状があります。認知症は、上で述べた物忘れや見当識障害の他、判断力の障害、問題解決能力の低下、実行機能の低下などは、すべての認知症患者にみられる症状です。

 

 これに対して、必ずしもどの認知症の患者にもみられるわけではない症状もあります。例えば、暴言や介護への抵抗、興奮、抑うつ、幻覚、せん妄、徘徊などがあり、これらを「周辺症状」と呼んでいます。いわば認知症になってしまったことに反応して、行動や心理的な反応を起こしているための症状と考えられるので、「認知症に伴う行動・心理症状(Behavioral and psychological symptoms of dementia,BPSD)」とも呼ばれています。

 

5.認知症に伴う様々な症状

ここまでは認知症の基本的な症状で、いずれもお聞きになったことがあるものが多いでしょう。しかし、認知症にはこれ以外の症状、一部認知症とは一見関係のないようにみえる特徴的な症状もあります。

 

5-1. 行動異常・人格変化

 一般に物忘れの症状で発症することが多い認知症ですが、前頭側頭型認知症というタイプの認知症は、行動異常・人格変化で発症することがしばしばあります。

この認知症では、初期には記銘力低下がそれほど目立たないことがある一方で,初期から自発性低下,感情鈍麻,脱抑制などの人格変化や情緒障害がみられるのが特徴です。具体的には、それまできちょうめんに仕事をしていた人が休みがちになる,下着が汚れたのに気にしなくなる,自分や周囲に無関心になる,周囲への配慮ができなくなる,ふざけたり,人をこばかにしたような態度をとる,ヒトの話を聞かずに的外れな答えをする,などの変化で気づかれます。また,怒りやすくなるなどの易怒性や,人のうちに勝手に上がりこむ,万引きをするなどの脱抑制の症状もみられます。進行とともに自発性が低下して、徐々に意欲が減退し、テレビなど今まで興味を持っていた物にも関心がなくなり、寝てばかりいるようになります。

 

5-2. 言語の障害

認知症では言語の障害もみられます。これはろれつがまわらないということではありません。例えばアルツハイマー病でははじめのうちは、言葉の理解や、こちらが話しかけた短い言葉をそのまま復唱する能力は比較的よく保たれ、一見日常会話は問題なくできます。しかし、例えば鉛筆があっても”鉛筆”という物の名前が出てこず、「あれ」などの指示代名詞で指示したりします(喚語困難や呼称の障害)。鉛筆という物の名前の代わりに、”書くもの”というような、まわりくどい表現をしたりすることもあります。進行すると語彙が減少して、話の内容が具体性を欠くようになり、唐突に現在の話題とは無関係な話をしだしたり、同じような内容の話を繰り返したりするようになります。

 前頭側頭型認知症といわれる疾患でも、初期から言語の障害が目立つ場合があります。やはり言語表出の障害、呼称の障害などを認めますが、毎日同じ時刻に同じ行動をとる常同行動、同じ言葉を繰り返す滞続言語がみられるのも特徴です。

 

 いずれの場合も、進行すると次第に言葉の理解が悪くなり読解や書字も障害され、末期になると、全般的に認知機能が低下し、発話もなくなり、無言・無動の状態になっていきます。

 

5-3. 地誌的見当識障害

 認知症では、地誌的見当識障害も見られます。地誌的見当識障害というのは、場所同志の空間的な位置関係が把握できなくなるため、見渡せる範囲を超えて屋内外を移動するときに、道に迷ってしまう症状です。いわば「方向音痴になった」みたいな感じの症状ですが、認知症の場合は症状がつよく、自分の家の近くであっても道順を思い出せない、覚えられないなどの障害が出現し、外出すると家に帰れなくなって徘徊したりします。このような症状は両側、あるいは右側の後頭葉の障害などで起きると考えられています。

 

5-4. 失行

認知症の症状として、日常で当然できていたことができなくなる失行という症状が みられることがあります。運動麻痺や知覚の障害があってできないのではなく、頭では理解しているのに、指示された動作や行動ができない状態をいいます。単純なものでは、手をあげる、拍手、頬を膨らます、口笛を吹くなどといったものから、右手を左手の上に置く、マッチでろうそくに火をつける、急須でお茶を入れるなどのより複雑な、あるいは系列的な動作が障害されます。

 

認知症でよくみられる失行の一つとして、着衣失行があります。着衣失行は、運動麻痺などがないのに、衣服を正しく着る動作が出来なくなる、あるいは誤って着てしまう症状です。着衣の方法を口頭で説明することはできるのに、衣服の前後、上下が判断できず、袖に頭を入れようとしたり、ボタンを掛け違えたりすることがあります。場面に応じた服の選択もできなくなります。着衣失行は右半球の頭頂葉を中心とする病変・障害により起きると考えられており、頭頂葉の障害がおこりやすいアルツハイマー病などでも見られることがあります。

 

5-5. 幻視

レビー小体型認知症といわれる認知症にしばしば見られる症状です。そこにいないはずの人がみえる,知らない子が部屋で遊んでいる、虫や蛇などが壁を歩いているのが見えるなどの生き生きとした視覚的な詳細な幻覚(幻視)を伴う点が特徴的です。幻聴などはそれほど多くありません。レビー小体型認知症は症状に変動があり、日によって、また一日の中でも時間によって症状の程度が変化するのが特徴です。

 

5-6. 嗅覚の低下

嗅覚の低下も実は認知症でよく見られる初期症状の一つです。脳の中では、記憶にかかわっている脳領域である海馬の近く、やや外側にある嗅内皮質といわれる皮質領域、また扁桃体や海馬・眼窩前頭野といった嗅覚伝導路が嗅覚に大きく関わっています。日本人の認知症で最も多いアルツハイマー病では嗅内皮質が障害されやすく、嗅覚の低下もみられることがあります。実際アルツハイマー病では認知機能と嗅覚の低下には関連があるといわれており、アルツハイマー病の前段階であるMCIでも嗅覚の低下が見られることがあります。

 他方、パーキンソン病と関連の深いレビー小体型認知症といわれる認知症でも、嗅覚の受容体を含んでいる嗅球やより中枢側の嗅覚伝導路にもレビー小体という細胞内封入体ができやすく、嗅覚の低下が初期からみられることがあります。嗅覚の低下がレビー小体型認知症の発症に何年も先行することもあります。嗅覚識別テスト(UPSIT)というアメリカで開発された嗅覚テストが、レビー小体型認知症の早期診断の方法の一つとして用いられることもあります。

5-7. 睡眠の障害

パーキンソン病などでは持続的な睡眠が分断され、夜中に起きてしまうこともよくあります。パーキンソン病に関連した認知症とされているレビー小体型認知症では、睡眠中に突然大声をあげたり、走り回ったり、激しい動きをしたりするレム睡眠行動障害がみられることがあります。レム睡眠行動障害はレビー小体型認知症の発症に数年先行してみられることもあります。

6.内科的疾患に伴う認知症で見られる症状

認知症は、内科的疾患に伴って起きることもあります。例えば甲状腺機能低下症、ビタミンB1欠乏のような内分泌・代謝疾患、正常圧水頭症、抗コリン薬など薬の副作用などで認知機能低下が起こることがあります。

甲状腺機能低下症では、低体温になり、異常に寒がりになったり、皮膚はかさかさして、むくみがみられたり、声がしわがれ声になったりします。ビタミンB1欠乏による認知症は、眼球運動障害を生じ全く視線が動かせなくなったり、歩行のふらつき(失調症状)、動悸、手足の浮腫といった心臓の症状、手足のしびれなどを起こすことがあります。正常圧水頭症では、物忘れなどの認知機能低下の他に、歩行障害や尿失禁なども伴うことが多いです。内科疾患に伴う認知機能低下は、適切な治療を行うことによって認知機能を改善させることができることもあるので、これらの内科的な症状を見逃さずに早期に診断し、治療することが重要です。

 

7.まとめ

認知症には様々な症状があり、一般には認知症とは思われていない症状もしばしばみられることがおわかりいただけたと思います。物忘れや判断力だけでなく、これらの症状を知っていれば、認知症により早期に気がつくこともありますし、さらにどのタイプの認知症なのか診断にも役立つこともあるのです。

執筆
医師:子煩悩神経内科医
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