【医師が警笛】夏の水難事故に要注意!避けるべき行動・対策[大人編]

"水難事故は夏の時期に多く、毎年約8~9割の水難事故が夏に起こります。事故には天候や休日数など、様々な要因が関与し、年ごとにより変化はあるものの、事故の件数は横ばいないしは増加している状況です。

今回、水難事故の中でも問題となっている「酔泳事故予防」の啓発に取り組む医師であり、酒販店を身内に持つ著者が水難事故の危険性と対処法について解説します。"
※この情報は、2017年8月時点のものです。

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1.水難事故で多い事例と避けたい行動

平成28年水難事故は、警察庁生活安全局発表によれば、全国で約1505件発生し、水難者1742名(うち死者・行方不明者816人)、都道府県別では、最も多いのが沖縄県85件、次いで千葉県72件、北海道と神奈川県が62件で、死者・行方不明者の発生場所は「海が約50%(425人)、河川約30%(250人)」でした。

全国の海浜事故を担当している「海上保安庁」が行った、平成24年から平成28年までの夏季期間の事故調査でも、事故者のうち遊泳中が61%を占めていました。飲酒が原因となった遊泳事故の犠牲者は5年間で103人でした。犠牲者数が多いのか少ないのか判断することは非常に難しいですが、毎年必ず事故に遭う方がいて、本人や家族・関係者など苦しむ方がいる現実に変わりはありません。

飲酒が原因の遊泳中の事故は、飲酒しない場合と比べ「死亡率が2倍も高い」ことが分かっています。

(1) 海編

海には、「離岸流(りがんりゅう)」という、岸から沖に離される流れが発生することがあります。その流れに逆らうことは水泳選手でも厳しいです。海水浴場以外で泳ぐことが最も危険です。

「日本ライフセービング協会」によれば、日本国内の197の海水浴場で、3446名のライフセーバーが活動しています。ライフセーバーはボランティアであるものの、地域の海を知り、心肺蘇生法などの訓練を行い、フロート(浮環)などの救助機材を準備しています。逆に、ライフセーバーがいない場所や遊泳禁止場所で泳ぐと、発見されず、救助もされず、結果として命に関わる危険性が高まります。ライフセーバーがいる海水浴場で遊泳することが重要です。

「海上保安庁」は、船艇455隻、航空機74機を擁し「海上での警察・救難・交通等を総合的に司る」機関<海の守護神>として、世界でも極めて優秀な組織の1つです。それでも、ドラマや映画のようにスマートに溺れる人を助けられないことがあり、「救助の現場にかっこ良いことは無い!」と話す海上保安官もいます。

著者撮影:海上保安庁 第三管区 巡視船艇・航空機展示総合訓練

(2) 川編

川には流れがあり、その速さや様子は天候などによって変化すること、川底に石がゴロゴロしていたり、砂地で歩きにくかったり、さらに深さも一定ではありません。冷たい川の水を見ると足を付けたり、入りたくなる季節ですが、急に流される危険もあります。

(3) プール編 

プールには監視員などが配置されていることが多く、安心感がありますが、遊泳者すべてに目が行き届くわけではありません。流れるプールなどの場合は特に注意が必要です。小さなお子さんなどの場合、大人が目を離さないように注意しましょう。

2.水難事故で一番身近で危険な「酔泳事故」2ケース

『2015年7月深夜、4名が宴会帰りに関東近郊の海岸で海に入った。4名のうち2名は海岸に戻ったが、2名が行方不明となり、岸に戻った者が緊急番通報。翌未明男性1名が約150m離れた海岸にて心肺停止状態で発見、その後死亡が確認。残り1名も後日遺体で発見される』事故が発生しました。
この事故は、深夜で監視者などが不在、海水浴場外の事故でしたが、同様の「飲酒後の遊泳事故(酔泳事故)」は日本各地で発生しています。
「酔泳(飲酒後の遊泳)」の名称は、2013年「海上保安庁 第八管区海上保安本部(福井県、京都府、兵庫県北部、鳥取県、島根県を管轄)」にて、飲酒後の遊泳事故が頻発したことを受け、複数の新聞に掲載されたことがきっかけで、名付けられました。
  
海の事故は波や風など、人間の手が届かない不測の事態や事故が起こり得ます。
「酔泳事故は、1人1人が注意をすることで防げる」特徴を持っています。

私は、「酔泳事故」には2種類の状況があり、対策も異なると考えています。

・ケース1: 自ら飲酒後に泳いだ結果、発生する「酔泳事故」
・ケース2 : 自分自身は元々「遊泳」を意図せず、何らかの事態が発生し、結果的に泳がざるを得ず発生する「酔泳事故」

お酒(=アルコール)が体内に入ると、まず「判断力や集中力(注意力)の低下」を起こし、続いて「運動能力の低下」などが引き起こされます。
「飲酒+遊泳=酔泳」は、アルコールの働きで「本来の泳力」が低下し、溺れやすくなります。

(1) 自ら飲酒後に泳いだ結果、発生する「酔泳事故」

「ケース1」の場合は、「飲酒」による遊泳力低下から溺れやすく、決して「遊泳」するべきではありません。「お酒が強いor弱い」という言葉がありますが、実は「お酒が強いこと=気持ち良く飲んでいる時間が長い(結果的に酒量は増える!)」だけで、「酔わない」訳ではありません。自分自身で「お酒が強い!ほろ酔い気分!」と感じる、その感覚こそ「酔っている」ことの何よりの証拠と言えます。

飲酒をして、自動車運転を行うと法的(+社会的)に罰せられます。「酔泳」を行った場合の法的強制力はありませんが、命の危険性が高いことに変わりはありません。事故が発生することで家族や友人・関係者も悲しみを抱えることになり、「自己責任」という言葉では決して済まされません。

ただし「酔泳事故=お酒が悪い」と決めつけてはいけません。昔からお酒は人間関係や社会を円滑にする重要な役目を持っています。お酒を飲む機会や販売量が減っている現状は、酒販店を身内に持つ私にとっても非常に悲しいことです。酒造酒販関係団体である「ビール酒造組合、日本洋酒酒造組合、全国卸売酒販組合中央会」なども、ホームページなどで「酔泳事故の危険性」を呼びかけ始めています。
「飲んだら泳がない、泳ぐなら飲まない」ことが大切です。

「救助に向かう海上保安官」著者撮影:海上保安庁 第一管区海上保安本部 訓練

(2) 自分自身は元々「遊泳」を意図せず、何らかの事態が発生し、結果的に泳がざるを得ず発生する「酔泳事故」

難しいのが、「ケース2」の場合です。
自分は泳がず、お酒を飲むために海に行き、家族や友人など「他の遊泳者が溺れている状態を助ける際」などに突発的に起きてしまった「救助目的の酔泳事故」が相当し、毎年各地で発生し、報道されています。
周囲に助ける人間がいない状況や困っている人を助けたい想いを考えると、「救助のための酔泳」行為を非難することは出来ません。それでも、「酔泳」は避けるべきなのは何故でしょうか??
「酔泳」状態は、飲酒(アルコール)による影響で、「救助者の判断力や状況確認能力、運動能力」が低下し、結果的として『救助者自身の救助能力』も低下しています。泳ぎが得意な人でも同様です。
救助能力の低下している人が救助を行うこと自体が非常に危険なので、たとえ救助目的であっても「酔泳」状態は避けるべきと言えます。

酔泳事故は、海だけでなく川やプールでも同じように起こる可能性はありますので注意をして頂きたいです。  

「救助に向かう海上保安官」著者撮影:海上保安庁 第一管区海上保安本部 訓練

3.【重要】もし現場に遭遇してしまったら

「溺れる者はワラをも掴む」という言葉の通り、溺れる人は必死でもがきます。水の上に出るために、(無意識のうちに)他者を押しのける(よじ登る)動作をします。この動作が救助者を沈めてしまう結果につながります。訓練を受けている人であっても、溺れている人を助けること自体が非常に難しいのです。

「溺れている人を救助出来ない」だけでなく、「救助者自身も一緒に溺れる」危険性が高くなります。
お酒を飲んでいる、いないに関わらず、無理な救助行為は避けた方が良いでしょう。

まず優先するべきは
① (浮き輪やペットボトル、クーラーボックスなど)浮く物を投げること
② 周囲に助けや応援を求めること(1人で対処しないこと)
③ 118(海上保安庁)や119(消防)、110(警察)に通報すること
これらも大切で重要な「救助行為」です。

4.まとめ

「飲んだら泳がない、泳ぐなら飲まない」こと!
「溺れている人を見つけたら、1人で対応しない」こと!
「溺れている人を見つけたら、いきなり飛び込まず、浮き輪やペットボトル・クーラーボックスなど浮く物を投げ込むこと、応援を呼ぶ」こと! <ひと呼吸おく!>
「ライフガードがいる、安全な海水浴場で泳ぐ」こと!
以上のことに十分気を付けて、海や川・プールでの夏を楽しんで下さい。

参考文献(資料)・引用文献(資料):

警察庁生活安全局地域課(2017年6月15日)『平成28年における水難の概況』
海上保安庁 交通部HP 『海の事故防止対策』
http://www6.kaiho.mlit.go.jp/info/marinesafety/jikotaisaku.html
海上保安庁 交通部安全対策課(2017年6月)『Summer Report 2017~夏季期間における海難の傾向分析~』
日本ライフセービング協会(2017年6月)『わが国の海水浴場における溺水の実態』
海上保安庁 JAPAN COAST GUARD(2017年3月)
海上保安庁(2017年3月)『平成28年版 海難の現況と対策について』
倉田大輔(2016年8月)『Medicine of Sea『飲んだら泳がない!泳ぐならノンアルコール!
<酔泳の危険性>』雑誌『Perfect Boat 9月号』
倉田大輔(2015年8月)『Medicine of Sea<静かなる「溺水事故」>』雑誌『Perfect Boat9月号』
海上保安庁 第三管区海上保安本部(2015年7月)『マリンレジャーに伴う人身事故発生状況』参考事例1 
倉田大輔(2015年7月)『酔泳の危険性を探る!!』海上保安庁 海の安全推進本部HP
http://www6.kaiho.mlit.go.jp/info/marinesafety/jikotaisaku/leisure/pdf/suieikikentop1.pdf
倉田大輔(2014年11月)『海の医学』 『新宿区医師会 会誌』第54巻11
世界保健機関(WHO)(2014年11月)『Global Report on drowning』
倉田大輔(2013年)『過信せずに、十分な安全対策をとること~海の医学について~』
『一般社団法人ロングステイ財団』第18巻第3号
倉田大輔(2013年11月)「酔泳は厳禁!(学会発表:筆頭演者)」『日本旅行医学会第6回東京大会』
菱田繁(2005年8月)「血中アルコール濃度と酔いの科学」『治療』Vol87,No8
堀江竜弥(2003年)「少量のアルコール濃度が作業効率と新機能に及ぼす影響」『北日本看護学会誌』5(2),5-12
元宿めぐみ(2008年)「春によく見られる疾患①急性アルコール中毒」『EMERGENCY CARE』Vol.21 No.1
「お酒と健康 飲酒運転防止」社団法人アルコール健康医学協会 
「法医学から見る、宴席での飲酒」Vol.16 No.2社団法人アルコール健康医学協会
「アルコールが運転に与える影響―飲酒運転根絶を目指して」Vol.14 No.1
社団法人アルコール健康医学協会
海上保安庁 第一管区海上保安本部(2017年7月)『遊泳は安全な海水浴場で』

執筆
医師:倉田大輔
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