目次
1.むくみはなぜ起きるの?
脚や顔、手首などが通常よりも太く、腫れぼったくなる症状を「むくみ」といいます。むくみは軽度であれば、外見上の違和感しか生じませんが、重度になると目が開けずらくなったり、物を握りにくくなるといった症状が現れます。
では、むくみはどのようなメカニズムで生じるのでしょうか?詳しく見てみましょう。
1-1. むくみは体内水分のアンバランスが原因?
むくみとは、医学的には「細胞外液のうち間質液が増加した」状態であると定義されています。
成人の体は体重の60%が水分で占められており、そのうちの三分の二は細胞の中に存在し、残りが細胞の外に存在しています。細胞の外に存在する水を細胞外液と呼びますが、細胞外液は血液中の水分成分である「血漿」、細胞間の隙間を埋めるように存在する「間質液」に分けられます。
通常であれば、間質液は全体重の15%を占めるに過ぎません。しかし、何らかの原因で間質液が増加すると、細胞と細胞の間に水分が多く蓄積し、皮膚が腫れぼったい状態になります。
この腫れぼったさがむくみの正体であり、むくみは謂わば体内の水分の配置バランスが何らかの原因で乱れていることが原因なのです。
1-2. むくみの原因「間質液」の性質とは?
「間質液」は細胞と細胞の隙間を埋める細胞外液の一つですが、どのように作られ、どのような流れをするのでしょうか?
むくみの原因を知るために詳しくみてみましょう。
①間質液の役割
間質液は細胞に酸素や栄養を行きわたらせる役割を持ちます。また、細胞から排出された老廃物や二酸化炭素を吸収し、体外への排出を促す作用もあり、成人の体内には体重の15%にも及ぶ間質液が存在します。
②間質液はどのように作られるの?
私たちには血液を全身に送り出す働きをする心臓があり、血管には常に「圧」がかかった状態となっています。毛細血管では、この「圧」によって血液中の水分が血管の壁を通って血管外へ押し出される仕組みがあり、この時に押し出される水分が間質液の正体です。
③間質液はどのように循環するの?
毛細血管から血管外へ押し出された間質液は、細胞と細胞の間を行きわたりますが、浸透圧の原理に従って、より濃度が高い血管内へ戻ろうとする力が働きます。また、老廃物が多く混ざった間質液は静脈の壁を通り抜けることができないため、リンパ管に吸収され、そこから静脈へ流入します。このようにして、間質液は最終的に静脈へ吸収され、心臓へと戻って再び全身へ送り出されるという循環を繰り返すのです。
2.むくみを引き起こす生活習慣
多くの人が悩まされるむくみは生活習慣によって引き起こされる間質液の分布異常によるものです。これらのむくみは生理的に生じるものであり、生活習慣を改めることで多くは改善します。
2-1. 過剰な水分
体内に過剰な水分が存在すると、結果として間質液も増加することとなり、むくみを生じることがあります。
体内の水分が過剰になるには単なる水分の摂りすぎに限らず、塩分やアルコールの摂りすぎによって水分の排出が減少することも原因となります。
2-2. 長時間の立位・座位
立位や座位の体勢は、重力によって足先に流れやすくなった血液を心臓へ送り返すためにはパワーが必要となります。このため、立位や座位が長時間に及ぶと、水分が脚に停滞しやすくなり、むくみの原因となります。特に夕方から夜にかけてむくみが悪化するのが特徴です。
2-3. 運動不足・加齢
主に脚に生じるむくみの原因となりますが、重力に逆らって血液が心臓へと戻るためには静脈やリンパ管の働きを補助するための適度な筋力が必要です。このため、運動不足や加齢によってふくらはぎなどの筋力が低下するとむくみの原因となります。
2-4. 肥満
肥満の人は、過剰な皮下脂肪が心臓へ戻る静脈やリンパ管を圧迫し、血液が停滞しやすくなることでむくみを生じることがあります。
3.むくみを引き起こす病気
むくみの多くは生活習慣や年齢が関連した生理的なものですが、中には重篤な病気が原因となる場合があります。病気が原因となって生じるむくみには全身に生じるものと部分的に生じるものがありますが、ここではむくみを引き起こしやすい病気について詳しく見てみましょう。
3-1. 全身に生じるむくみ
全身に生じるむくみの原因には大きく分けて次のようなものがあります。
①心臓の病気
心臓は、全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。心不全のような心臓の機能が低下する病気では、十分なポンプ機能が果たせません。血液が送り出される量が減少すると共に全身に行きわたった血液を心臓に戻す量も減少し、水分が体内のいたるところで蓄積してむくみを生じるのです。
②腎臓の病気
腎臓は、老廃物と余分な水分から尿を生成して排出する働きをします。腎不全やネフローゼ症候群のような腎臓の機能が低下する病気では、余分な水分を排出することができず、体内に水分が貯留する結果となります。このため、細胞内液や血漿だけでなく、間質液の量も増加して浮腫を生じるのです。
③ホルモンの異常
私たちの体では様々なホルモンが分泌されていますが、甲状腺ホルモンや女性ホルモンなどのように水分の排出・貯留を促す働きを持つホルモンもあります。このようなホルモンのバランスが崩れるとむくみを生じることが知られています。
④栄養不足、肝臓の病気
極端なダイエットやガンなどによって体の栄養が著しく不足すると、血液の濃度が下がり、浸透圧の原理に従って血液中の水分がより濃度の高い間質液側への移動するようになります。その結果、間質液が増加した状態となりむくみを生じるのです。
また、肝硬変などの重度な肝臓の病気では、血液中を流れるアルブミンというたんぱく質の産生が低下するため、血液の濃度が下がり、同じ原理でむくみを生じることがあります。
3-2. 部分的に生じるむくみ
多くの人が悩むのは脚や顔などに生じる部分的なむくみです。部分的なむくみの原因には次のようなものがあります。
①静脈の異常
深部静脈血栓症や静脈瘤などの静脈の異常が生じると、主に脚にむくみを生じます。これは、静脈から心臓へ戻る血液の量が減るため、脚に水分が溜まってむくみを引き起こすためです。
②リンパ管の異常
術後やガンの転移などによってリンパ管が閉塞すると、吸収された間質液が静脈へ流れず、停滞するため、むくみを生じることがあります。
4.生理的なむくみと病的なむくみの見分け方は?
生理的なむくみは多くの人が経験するものですが、次のようなむくみは何らかの病気が潜んでいる可能性がありますので注意が必要です。
・数日の間に3~4キロ以上の体重増加を伴うむくみ
・むくんだ部位に痛みがある
・むくみ方に左右差がある
・朝からひどいむくみがある
・むくみがひどく、関節運動に障害がある
・顔がむくんで目を開けにくい
・息切れや寝苦しさを感じる
・尿量が減ったり、血尿が出る
・お腹が張りやすい
これらの症状を伴うむくみがある場合には、なるべく早めにお近くの病院を受診して適切な検査・治療を受けましょう。
5.まとめ
むくみは多くの人が悩まされる症状ですが、心臓や腎臓などの重篤な病気が原因であることもあり、決して看過できる症状ではありません。
むくみ対策を行っても頑固に改善しないむくみは病的なむくみである可能性もあります。病的なむくみが疑われる場合には、早めに病院を受診し、治療を受けるようにしましょう。