【精神科医が解説】自律神経失調症は治る?原因・症状と検査・治療方法

豊田 早苗

吐き気、めまい、立ちくらみ、不安、頭痛などの症状に悩まされ病院を受診したところ、自律神経失調症かもしれないと突然言われ、不安に思っている方もいるでしょう。

自律神経とは、体全体の機能をコントロールする神経のことで、何らかの原因でうまく働かなくなると体全体に様々な身体症状・精神症状を生じることがあります。

自律神経失調症は、日常のストレスや生活の乱れに起因していることも多く、お薬による治療をはじめ、生活習慣を見直すことも大切になってきます。

今回は、自律神経失調症の症状や原因などを解説するとともに、実際にどのように検査され、治療を行なっていくかということもふまえて説明していきます。診断された方へのアドバイスもしたいと思いますので、ご参考いただければ幸いです。

 

※この情報は、2017年12月時点のものです。


 

1.自律神経失調症とは?

1-1. 自律神経失調症の特徴と症状

自律神経失調症とは、活動神経である交感神経とリラックス神経である副交感神経の2つの自律神経のバランスが崩れてしまい、頭痛や吐き気、めまいなど様々な体の症状が出ている状態を言います。

自律神経は、心臓や呼吸、胃腸の働きなど、自分の意志でコントロールできない体の活動を調整する役割を担っており、交感神経と副交感神経のバランスが保たれていることで、私達は、状況に応じて体を動かすことができ、普段何の支障もなく生活することができています。

 

どういうことか?例を挙げて説明しますと、食事をして、胃の中に食べ物が入ってくると、副交感神経の働きが強まり、胃腸の動きを活発にして消化吸収を促進させます。

朝になって目が覚めると、交感神経の働きが強まり、血圧を上げたり、心臓の動きを活発にするなどして、体が活動できる状態にしてくれます。

 

このように自律神経は、私達が生きていくうえで重要な働きを担っているため、交感神経と副交感神経2つの自律神経のバランスが崩れてしまうと、途端に、体が上手く機能しなくなり、様々な症状が起こってくることになります。

 

では、自律神経失調症では、どのような症状が起こってくるのでしょうか?

具体的にみていくことにしましょう。

 

1:動悸、胸部圧迫感、胸痛

2:息苦しい

3:吐き気、胃部不快感、腹痛、下痢、便秘

4:頭痛、頭重感

5:目が疲れやすい、乾きやすい

6:めまい、耳鳴り、立ちくらみ

7:口が乾く、味覚がおかしい

8:喉のつまり感

9:手足のしびれ、いたみ、冷え

10:異様に汗をかく、体全体がかゆい

11:頻尿、生理不順

12:微熱、体がだるい、食欲がない

13:気分が落ち込む、不安になりやすい、イライラしやすい、不眠

 

このように、自律神経は、全身の器官の働きを調整している神経なので、その働きが上手くいかなくなると、起こってくる症状は、全身多岐にわたります。

 

 

1-2. 自律神経失調症の原因

一体なぜ、今までバランスよく機能していた自律神経が上手く働かなくなってしまうのでしょうか?

自律神経失調症を起こす原因として、「ストレス」「ホルモン分泌の乱れ」「生活習慣の乱れ」の3つがあります。

それぞれについて、説明していきます。

 

①ストレス

ストレスが加わると、体は、ストレスに対応するために交感神経の働きを強め、血圧を上げ、心臓の動きを活発にし、筋肉の緊張を高めて、臨戦態勢をとります。

ですので、ストレスが長期間続くと、リラックス神経である副交感神経の働きは抑えられ、常に交感神経が優位の状態となってしまい、自律神経のバランスが崩れてしまうのです。

 

②ホルモン

自律神経と深くかかわっているホルモンに「甲状腺ホルモン」と「女性ホルモン」があります。

女性ホルモンは、脳の視床下部からの命令を受けて分泌されています。

また、自律神経の働きを調整しているのも視床下部で、女性ホルモンのバランスが崩れると自律神経のバランスも崩れますし、自律神経のバランスが崩れると女性ホルモンのバランスも崩れるという非常に密接な関係にあります。

甲状腺ホルモンは、自律神経の1つである交感神経を刺激する作用があります。

ですので、甲状腺ホルモンの分泌に異常が起こると、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまう事になります。

③生活習慣の乱れ

私達の体には、生体リズムと呼ばれる睡眠・覚醒のサイクルや自律神経やホルモン分泌、体温や血圧など体の基本的な動きを24時間周期で刻んでいる体内時計があります。

特別意識しなくても、朝になると目が覚めて、夜になると眠くなってくるのは、このためです。

ところが、この体内時計、例えば、昼夜逆転の生活を送ったり、朝食を抜いたりするなどの不規則な生活を送っていると、24時間の周期でリズムが刻めなくなってしまい、狂った体内時計の影響で、自律神経やホルモン分泌まで乱れてしまう事になるのです。

 

うつ病との違い

 

うつ病は、ストレスによって、心身のエネルギーが枯渇してしまった状態です。

つまり、心も体も疲弊しきってしまった状態ですので、体の様々な機能を調整している交感神経と副交感神経の両方の自律神経の働きが鈍ってしまっています。

これに対して、自律神経失調症は、心身のエネルギーが枯渇して自律神経が働かなくなっているのではなく、交感神経と副交感神経の2つの自律神経は働いているけれども、バランスが悪い状態です。

2.自律神経失調症の検査方法

自律神経失調症は、体の病気や心の病気など同じ症状を起こす病気を否定した上で診断されるのが一般的です。

ですので、例えば、「動悸がする」という症状があれば、心臓に異常かないかどうかを心電図や心エコー等の心臓の検査を行いますし、「気分が落ち込む」「イライラしやすい」等の精神的な症状があれば、心理検査などを行い、心の病気かどうかを調べます。

このように、患者さんが訴える症状から考えられる心身の病気をまず検査します。

 

検査の結果、心身の病気はないと判断されると、自律神経失調症と診断されます。

補足的に、自律神経の働きを調べる検査を行ったりすることもあります。

 

自律神経の働きを調べる検査として、よく行われる検査に「シェロング起立試験」があります。

シュロング起立試験は、横になっている状態から立ち上がった時の血圧を調べる検査です。

具体的には、まず、ベットに横になった状態で血圧を測ります。その後、ベットから起き上がり、立った状態で血圧を測ります。

自律神経の機能が正常であれば、横になった状態で測った血圧も立ち上がった状態で測った血圧もほとんど変わりません。

ですが、自律神経のバランスが崩れていると、立ち上がった時に即座に血管を収縮させて血圧を保つことが出来ないので、血圧が大きく下がります。

 

その他、ヘッドアップティルト試験、バルサルバ呼吸試験、寒冷昇圧試験などがありますが、あまり一般的に行われていません。

 

何科を受診すれば良い?

 

自律神経失調症では、心身の様々な症状が起こります。

ですので、何科を受診するべきか?迷う方も多いと思います。

基本的には、自律神経失調症は、ストレスが原因となっている事が多いので、心療内科を受診するのが良いですが、頭痛やめまい、胃腸症状など体の症状が主であれば内科、腰痛や肩こりなどが主であれば整形外科と言った具合に症状に応じた専門の診療科を受診されても良いです。

 

3.自律神経失調症の治療方法・流れ

3-1. お薬による治療

自律神経失調症では、様々な症状を和らげるために気持ちを落ち着かせる薬と症状そのものを抑える薬の両方を使って治療していきます。

具体的には、抗うつ剤や抗不安薬(安定剤)、睡眠薬などを使用して、気持ちを安定させ、ストレスの緩和を図り、自律神経のバランスを整えながら、めまいに対してはめまいを抑える薬、頭痛に対しては頭痛を抑える薬という具合に個々の症状を抑える薬を併用していきます。

また、トフィソパム(商品名:グランダキシン)という自律神経のバランスを整える作用を持つ薬や多彩な症状を緩和させる作用のある漢方薬(半夏厚朴湯ハンゲコウボクトウ、女神散ニョシンサンなど)を使う場合もあります。

 

3-2. その他の治療

自律訓練法や筋弛緩法などで、意図的に心身をリラックス状態にさせ、自律神経のバランスを整えていく治療法や生活習慣の改善やストレス原因の改善など自律神経失調症を引き起こしている原因そのものを取り除いていく治療法など薬を使わない治療方法もあります。

 

薬は飲むべき、飲まないべき?

 

薬は、たとえ漢方薬であっても、副作用がありますし、長期間服用することで薬に依存してしまう危険性もあります。ですが、自律神経失調症は、症状が多彩で、しかも長期間続くため、症状自体が苦痛を生みだし、それがストレスとなって、さらに症状を悪化させてしまったり、うつ病など心の病気を引き起こしてしまう可能性もあります。

ですので、症状がひどく、苦痛を感じるようであれば、病院を受診して薬を服用する方が良いです。

4.自律神経失調症と診断された方・ご家族へのアドバイス・生活の工夫

まず、自律神経失調症と診断されたら、生活習慣に以下のようなことがないか?チェックしてみましょう。

生活習慣の乱れは、自律神経のバランスをさらに崩す原因になります。

心当たりのある場合は、改善するように意識して生活してみましょう。

 

□夜遅くまで起きている

□体を動かすことがほとんどない

□外食やインスタント食品で食事を済ませてしまうことが多い

□毎日忙しく、休む暇がない

□仕事など何かしらの悩みを常にかかえている

□毎日お酒を飲む。あるいは、飲む量が多い

□たばこを毎日吸う。あるいは、本数が多い

□食事が不規則で、3食食べない時もある

□ストレスを発散する趣味や方法がない

 

そして、自律神経失調症では、交感神経が優位になりやすく、常に体には力が入り、心は緊張した状態で、心身ともにリラックスできない状態となっています。

そこで、深呼吸(おおきく息を吸い込んで、ゆっくり吐き出す)を行ったり、お風呂にゆったりつかったり、気持ちが落ち着く空間づくりや時間づくりを行うなどして、一時的にでもリラックスできるようにしてみましょう。

 

5.おわりに

自律神経失調症は、体の至る所に症状が出ます。

このため、体の不調がさらなるストレスを生み出し、症状の悪化やうつ病などの心の病気を引き起こしてしまうことが多々あります。

自律神経失調症を予防する上で、症状を改善させていく上で、重要な事は、いかにしてストレスを少なくするか、いかにして生活習慣の乱れをなくすかです。

ここで紹介した内容を参考に、生活習慣の改善やストレス発散に取り組んでみてください。

 

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