てんかんはどうして起きる?考えられる様々な原因を詳しく解説

てんかんといえば、突然意識を失って倒れ、泡を吹いて、けいれん(ひきつけ)をおこす病気、そんなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。てんかんの症状が疑われる方、あるいはご家族・友人など身近に症状の疑われる方がいる場合、いろいろと不安があることと思います。

例えば、てんかんは脳に原因があるといわれるけれど、一体どんな病気なんだろうか。てんかんは遺伝するという人もいるが、自分の場合はどうなんだろうか、てんかんは治すことができるのか、あるいは薬を一生のまなければならないんだろうか、などと心配されている方もいらっしゃるでしょう。

てんかんが起きる原因は様々なので、これらの疑問に一言で答えることはできません。ここでは、てんかんはどうして起きるのか、そして考えられる様々な原因について詳しく説明していきたいと思います。
※この情報は、2018年3月時点のものです。

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1.てんかんはどうして起きるの?

てんかんとは、種々の原因により大脳皮質の神経細胞が過剰に興奮し、発作性のけいれんや意識障害などの発作(てんかん発作)を繰り返す疾患です。

 

大脳皮質の神経細胞には、「興奮性」の神経細胞と「抑制性」の神経細胞があり、これらの働きのバランスが崩れると過剰に神経細胞の興奮が起きるとされています。

したがって、てんかんを起こす病変は、主に脳の神経細胞が存在している大脳の表面にある大脳皮質という部位にあることが多く、脳の奥の神経線維がメインに通っている白質といわれる部位の病変では原則としてあまりてんかんを起こしません。

 

初めに述べたように、全身性のけいれんを起こす典型的な発作もありますが、明らかなひきつけを起こさず、意識が混濁するだけだったり、問いかけに反応しなかったり、脱力をおこしてガクッと力が抜ける、という形で現れるものもあります。

例えば、側頭葉てんかんといわれるてんかん発作では、2-3分くらいの意識障害をきたし、自動症といって口をもぐもぐさせたり、衣服をいじったりといった目的のない動きを繰り返す特徴的な発作を認めることがあります。

 

てんかんは神経疾患の中で最も頻度が高く、1,000人に5-10人の割合(有病率0.5-1%)でみられ、全国に約100万人の患者さんがいると考えられています。若年者では3歳以下の発病が最も多く、また高齢者に多いという特徴があります。小児のてんかんでは、一部思春期ぐらいまでには治る年齢依存性のてんかんもあります。他方、高齢で発症したてんかんはなかなか自然には治りにくいものが多いとされています。

 

2.特発性てんかんと症候性てんかん

原因が特定できないものを「特発性てんかん」といい、脳腫瘍・脳血管障害などてんかんの原因が特定できるものを「症候性てんかん」と呼びます。

 

3.全般てんかんと部分てんかん

てんかんは脳の異常活動が起きる部位により、大きく脳の一部から発作が始まる「部分てんかん(発作)」あるいは「焦点性(局所)てんかん局在関連てんかん)」と、両側の大脳半球の広い範囲で同時に始まる全般てんかんに分けられます。

 

部分てんかんでは、局在関連てんかんとも呼ばれますが、その名前の通り局所的な脳の病変がみられることが多いです。他方、全般性てんかんは脳全体に病変が及ぶこともあれば、局所病変がある場合、はっきりした病変がわからない場合などもあります。

 

特発性てんかん、あるいは症候性てんかんなのか、全般てんかんあるいは部分てんかんなのか、これらの組み合わせによっててんかんは4つに分類されています。

 

4.てんかんの様々な原因

4-1. 脳に原因のあるもの

てんかんは脳自体に原因がある場合と、全身の病気の一部として起きる場合があります。

 

まず脳自体に原因のあるてんかんについては、周産期の異常、脳の先天的奇形といった生まれつきのものから、交通事故などの外傷、脳腫瘍、脳炎のほか、脳梗塞・脳出血など脳血管障害の後遺症など後天的なものもあります。さらに、認知症などの脳の変性疾患によって起きる場合もあります。比較的頻度の多いものを中心に、主なものについてのべていきます。

 

<特発性>

てんかんの3分の2のものは原因がわからないものです。頭部CT、MRIのような脳の画像を撮影しても、とくに異常はみつかりません。しかし後述のように、病理所見といって顕微鏡で亡くなった方の脳の標本をみると、異常が認められたりすることがあります(後述の「病理でみてみると」の項を参照)。また形態学的な異常がなくても、細胞膜にあるイオンなどを通すチャンネルの異常によるものであることがわかってきているものもあります。

 

例えば神経細胞の興奮性をおさえる細胞膜のカリウムチャンネルやクロライドチャンネルの異常、あるいは神経細胞の興奮性にかかわるナトリウムチャンネルの異常によりてんかんを発症することもわかっています。

 

<脳血管障害>

脳出血・脳梗塞・くも膜下出血などの脳血管障害によって起きるてんかん発作で、これらによって神経細胞のダメージが起きることにより起こります。高齢者のてんかん発作では最も多くみられるもので、特発性以外のものでは最も多い原因です。人口の高齢化に伴い増加傾向にあります。

 

<頭部外傷>

外傷などにより、脳の一部に傷がついたことで起こるてんかんです。重篤な頭蓋骨の骨折があれば脳が傷つくのは当然ですが、外表上は傷がなくてもてんかんを起こす場合もあります。たとえば転倒事故などで、頭蓋骨のなかでやわらかい脳が急激に硬い頭蓋骨にぶつかって傷つくことがあるからです。

 

<脳腫瘍>

脳腫瘍でもてんかんが起こることがあります。脳の神経細胞の周囲にあるグリア細胞、脳の膜にある細胞などから出てきた腫瘍の他、転移性の脳腫瘍も原因となります。悪性度の高い腫瘍ほどてんかんを生じやすい傾向にあります。また腫瘍が大きい場合、急に大きくなった場合などにも起こりやすいとされています。

 

<先天奇形>

胎児の時期に脳がうまく形成されない場合(脳の形成異常)でもてんかんが起こります。

 

極端なものとしては、滑脳症といって皮質の溝ができないような脳の奇形もあります。もっと局所的な異常では、本来大脳皮質など脳の表面にあるはずの神経細胞が他の、例えば白質などに存在する異所性皮質は、てんかんの原因になります(後述の「病理でみてみると」の項を参照)。結節性硬化症は常染色体優性遺伝の疾患ですが、大脳皮質結節といわれる脳の局所的な形成異常や石灰化が起こり、てんかんをきたします。

 

<遺伝性>

てんかんの多くのものは遺伝性ではありませんが、一部に遺伝性のものがあります。遺伝性のてんかんにもいろいろな種類のものがあります。

 

例えば、上で述べた脳の奇形には遺伝性のものが多くあります。歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(常染色体優性)という脊髄小脳変性症でも、てんかんが起きやすいことが知られています。後述の代謝疾患でも先天的な酵素欠損を伴う遺伝性の疾患があります。

 

<周産期脳損傷>

お母さんのお腹の中にいる間、あるいは妊娠・出産時に起きた何らかの問題により脳が傷つき、それが原因でてんかんが起きる場合もあります。

例えば。分娩時に脳に十分血流がいかなくなる低酸素症もてんかんの原因となります。また頭部外傷、脳の感染症によりてんかんを起こすこともあります。

 

髄膜炎、ヘルペス脳炎など感染症の後にも、てんかんは起こります。

この他、アルツハイマー病のような認知症などでもてんかんを起こすことがあります。

 

4-2. 全身疾患に伴うもの

てんかんには、脳自体ではなく、全身疾患に伴うものもあります。その主なものについてみていきます。

 

<低酸素症>

小児では分娩時に低酸素症が起こることがありますが、高齢者では心筋梗塞、心室細動や、ショックによる血流低下、窒息などで脳への血液供給が途絶えると脳が低酸素になり、てんかんを起こすことがあります。

 

<熱性けいれん>

てんかんの患者さんは、しばしば小さい頃に熱性けいれんを起こした既往が多いことが知られています。熱性けいれんは6 か月から4 歳に起きやすく、通常38 度以上の発熱に伴って乳幼児期などにけいれんをきたすものです。一般に自然によくなり、その後はけいれんを起こさなくなることが多いのですが、一部後にてんかんになっていく人もいます。

 

<代謝性疾患>

先天性の代謝疾患とは、健康人が持っている一つあるいは複数の酵素が生まれつき欠損しているため、体内にその酵素が処理するべき産物などがたまってしまう病気です。

これらの疾患は一つ一つはまれなものですが、遺伝するものが多く、例えば先天性のアミノ酸代謝異常、脂質代謝異常などの疾患では、てんかんが起こりやすいことが知られています。またこのような先天的な酵素欠損ではなくても、例えば腎機能が悪化し、尿毒症になると電解質異常などにより、てんかんが起きやすくなります。

 

この他、低カルシウム血症、低ナトリウム血症、低マグネシウム血症などの電解質異常や、低血糖・低酸素症もてんかん発作の原因になりえます。アジソン病、全身性エリトマトーデスなどの内分泌疾患、膠原病などにてんかんを伴う場合もあります。

例えば低カルシウム血症の臨床症状は、神経の細胞膜電位が不安定になり、神経・筋の細胞膜が興奮しやすくなることによると考えられています。

 

4-3. その他の原因

その他の原因として注意しなければいけないものには次のようなものがあります。

 

<薬剤の中止、抗てんかん薬の血中濃度の低下>

抗てんかん薬を服用していた人が急に止めたときには、発作が起こりやすいことが知られています。抗てんかん薬の血中濃度の低下も発作の原因になります。同じ量の薬をのんでいても、体重が増加すると、血中濃度が低下することがあり、注意が必要です。発作のきっかけとなる誘因として、飲酒、疲労、睡眠不足、月経、精神的ストレスなどがあります。

 

<アルコール中毒>

慢性アルコール中毒(アルコール依存症)は アルコールの長期摂取で発症する薬物依存症です。アルコールの離脱後、禁断症状として、てんかん発作を認めることがあります。

 

この他、ヒステリーなどに伴う心因性の痙攣、過呼吸症候群に伴う痙攣などがあります。

 

4.脳の病理でみてみると

検査などで原因が明らかなものがなかったてんかんの症例であっても、亡くなった人の脳の病理切片を作って調べてみると、異常がみつかることがあります。肉眼上ははっきりしなくても、顕微鏡で見た場合にミクロのレベルで病変が見られることもあるのです。

 

多いのは、海馬硬化といって記憶に関係する脳の部位である海馬が、瘢痕化して萎縮しているものです。これは頭部MRIでよくみると画像でわかる場合もあります。海馬硬化の起きる原因は熱性けいれん、外傷、低酸素性脳症などいろいろですが、これがもとになっててんかんが生じ、難治性になることが多いのです。

 

また、異所性皮質といって脳の形成異常がみられることもあります。胎生期に脳が出来上がる際には、多くの神経細胞が脳の中心部から大脳皮質の表面に向かって移動していくのですが、この移動がスムーズにいかないと、本来大脳皮質に到達すべき神経細胞が皮質の下の部分に残ってしまう、あるいは間違った場所に移動していってしまうようなことがあり、それがもとになって、てんかん発作が起きるのです。

 

5.おわりに

てんかんには、様々な原因があることがおわかりいただけたと思います。

 

上に書いたように、まず検査では原因が不明のものも結構多いのです。一部遺伝性のものは確かにあるのですが、遺伝性でないものが多いのもおわかりいただけたかと思います。

 

小児のてんかんでは、一部は自然に治っていくものもあるのに対し、高齢者で発症したてんかんはなかなか自然には治りにくいことも多いです。いずれにしても、てんかんは医師の診察を受けたうえで、きちっと診断をつけてもらうことが大切です。それによって必要な治療や処置もかわってくるからです。

執筆
医師:子煩悩神経内科医
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