薬剤師が解説!高血圧の治療ではどのお薬を飲むべき?お薬を飲むことの大切さとは

昨今、週刊誌等のメディアで、「高血圧等の治療に対して、お薬を飲み続けないほうがよい」といった嫌薬系の記事を目にするようになりました。

実際に、そのような記事をみてお薬を飲む必要があるのか、不安になっている方もいらっしゃるかと思いますが、ここで名言しておきたいのは、高血圧の治療において、お薬を飲むことは大切なことだということです。

もちろん、お薬だけに頼らず、食事や運動など生活習慣を改善することが第一です。

自覚症状がないとされる高血圧において、治療の目的は、血圧が高い状態が持続することによって起こりうる合併症のリスクを下げることです。

今回は、お薬をなぜ飲んだほうが良いのかについて解説するとともに、どのお薬を飲むと良いのか、またお薬は一生飲み続けないといけないか?などの疑問にお答えしていきます。
※この情報は、2017年2月時点のものです。

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1. お薬を飲むことの大切さ

(1) 自覚症状がない高血圧の合併症

そもそも、高血圧を治療する目的をご存知でしょうか? 血圧を下げ、基準値内を維持することはひとつの指標ですが、本来の高血圧の治療の目的は、「高血圧の持続によって起こりうる心血管病等の発症・進展・再発を抑制し、死亡する可能性を減少させること」です。

高血圧は、「サイレントキラー」ともよばれ、多くの場合、自覚症状なく進行していきます。そこが恐ろしいところで、治療を放置し、高血圧が進行すると、血管や心臓に負担がかかり、合併症や他の病気の発症につながります。具体的な合併症としては、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)、心臓病(冠動脈疾患、心肥大、心不全など)、腎臓病(腎硬化症など)および、大血管疾患などがあります。

(2) お薬を飲まないことによって何が起きる?

高血圧と診断され、お薬をもらったものの、お薬を飲まなくなってしまい(生活習慣などの改善はせず)、治療を放置してしまった場合、どのようなことが起こるのでしょうか? 前述のとおり、血管や心臓に負担がかかり、様々な合併症や他の病気の発症により死につながる可能性が高くなります。年齢を問わず、血圧が高いほど、心血管病死亡リスクが高いという報告があり、85歳以上の高齢者では関連が弱まるものの、至適または正常血圧でいることが、最も心血管病による死亡のリスクが低くなるという報告があります。 (1)

 

至適血圧・・・ 血圧が高すぎず、低すぎず、丁度良いとされる血圧。収縮期血圧(上の血圧)が120未満・拡張期血圧(下の血圧)が80未満。

(3) 高血圧の治療の有効性

高血圧の治療の有効性を説明するにあたって、参考となるデータがあります。 過去の臨床試験のデータで、収縮期血圧(上の血圧)10mmHg、拡張期血圧(下の血圧)5mmHg下がることによって、心血管病リスクが、脳卒中で約40%(33%〜48%)、冠動脈疾患で約20%(17%〜27%)それぞれ減少するという報告です。 (2) この報告以外にも、様々な臨床データがあり、従来から高血圧の治療において、合併症のリスクを減らすために血圧を下げる治療を行うことが有効な手段であるされている根拠となっています。

(4) お薬を飲むことによって起こるリスク

お薬を飲むことの大切さを伝えるにあたって、お薬を飲むことによって起こるリスクを理解することも重要です。 お薬を飲むことによって起こるリスクとは、「副作用」のことです。どんなお薬にも、期待したい効果である「主作用」と、本来の目的とは違う体にとって好ましくない効果である「副作用」があります。

高血圧の治療に用いられるお薬を例にすれば、ブロプレス®(「ARB」とよばれるタイプ)では、

■主作用・・・血圧を下げる

■副作用・・・めまい、ふらつき、頭痛、浮腫、高カリウム血症など があります。

 

このように、血圧を下げるという効果を期待できる反面、副作用があります。副作用を最小限にして、効果を最大限に発揮できるようにお薬は設定されていますが、それでも、副作用というリスクはどうしてもあります。 しかし、どんなお薬でも、副作用というリスク以上に、飲むことによって得られる効果が高い場合に、治療に用いられるのです。

メディアで、嫌薬系の情報が流行る理由

「飲んではいけない」「寿命をのばす証拠がない」などといった記事が、週刊誌などでとりあげられることがあります。こういった記事では、考え方がリスクである「副作用」に偏ってしまっており、お薬による効果に目が向けられていないことが多々あります。

このような嫌薬系の情報が流行するのは、病気の治療をすすめている中で、常に不安を感じている患者さんの心につけこむような内容となっており、メディアとして注目されやすいためだからだと考えられます。 また、お薬の信頼が失われる事件があったことも、嫌薬系の情報が氾濫する一因でしょう。その事件とは、ディオバン®(ARBとよばれるタイプ)という高血圧のお薬で、臨床研究の結果を発表した論文のデータに問題があり、一連の論文が撤回された、という一件です。

しかし、この事件があったからといって、ディオバンというお薬に効果がない、というわけではないのです。お薬の効果をより良く見せようと改ざんしたものであり、効果が全くないことが判明したわけではありません。 今まで服用していて、副作用がでていないのであれば、心配はいりません。しかし、お薬への信頼という意味で不安であれば、他のお薬もありますので、固執する必要はなく、医師、薬剤師に相談するとよいでしょう。 また、嫌薬系の情報には、信憑性が薄いものも多々ありますので、鵜呑みにするのではなく、ときには疑ってかかることも大切です。

(5) お薬で治療を行うことの大切さまとめ

治療を前向きに進めるためには、しっかりとお薬を飲むことが大切です。

■自覚症状がなく進行する高血圧の恐ろしさは、血圧が高い状態が続くことで起こりうる合併症である
■お薬を飲まず治療を放置すると、合併症のリスクが高まり、死亡のリスクが高くなる。
■お薬には副作用というリスクがあるが、副作用以上にお薬によって得られる効果、健康への恩恵が大きい場合に治療に用いられる。

 

(1) Fujiyoshi A, et al. Blood pressure categories and long-term risk of cardiovascular disease according to age group in Japanese men and women. Hypertens Res. 2012; 35: 947-53.

(2) M. R. Law, et al. Use of blood pressure lowering drugs in the prevention of cardiovascular disease: meta-analysis of 147 randomised trials in the context of expectations from prospective epidemiological studies. BMJ. 2009; 338: b1665

2. 高血圧の治療では、どのお薬を飲むべき?

(1) 高血圧の治療に用いられるお薬にはどんな種類がある?

高血圧の治療に用いられるお薬には、様々なタイプがあります。

カルシウム拮抗薬  ⇒ノルバスク®、アダラート®、コニール®、ヘルベッサー®など

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)  ⇒ブロプレス®、ミカルディス®、ディオバン®、オルメテック®など

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)  ⇒ロンゲス®、レニベース®など

利尿薬  ⇒ラシックス®、フルイトラン®、ダイアート®、アルダクトンA®など

β(ベータ)遮断薬  ⇒テノーミン®、インデラル®、ミケラン®など

α(アルファ)遮断薬  ⇒カルデナリン®、ミニプレス®、デタントール®など

αβ遮断薬  ⇒アーチスト®、ローガン®など

配合剤  ⇒ユニシア®、エックスフォージ®、ミカムロ®、レザルタス®、プレミネント®、ミコンビ®、コディオ®、エカード®、アイミクス®など

 

このように、高血圧のお薬と言っても、非常に多くの種類があります。どのお薬も結果的には、血圧を下げる作用がありますが、作用、副作用など、それぞれに特徴があります。 一般的によく処方されるお薬としては、利尿薬、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARBです。

(2) どのお薬を飲んだら良い?

こんなに沢山のお薬があって、どれが一体効果があるの?どのお薬が良いの?とすごく不安になって、色々と調べだす方もいるかもしれません。又、今飲んでいるお薬を不安に感じ、飲まなくなってしまう方もいるかもしれません。

ですが不安なときこそ、どのお薬が良いのかは医師・薬剤師などの専門家の判断を信じ、毎日しっかりとお薬を飲むことが大切です。

もちろん、ご自身で調べることは、お薬を理解する上で大切なことです。 しかし、まずは医師から処方されたお薬をしっかりと飲むことを勧めます。

「新しいお薬=効果が高い」と思われる方もいますが、一概にそういうわけではありません。効果や副作用にも個人差があり、あるお薬がよく効くという方もいれば、同じお薬でもあまり効かない、副作用が出る…そういったケースもあります。様々な臨床データと経験から、どのお薬が適切であるか判断しますので、専門家でないと判断は難しいのが実情です。 医師はそのために診察を行い、適切な薬が何であるかを考えます。

3. 高血圧のお薬を飲み忘れないためのコツ3つ

「高血圧のお薬をしっかり飲むことの大切さは分かった。ただ、どうしても飲み忘れてしまうことがある」という方のために、簡単ですが、お薬を飲み忘れないためのコツを5つご紹介します。

(1) ライフスタイルに合った飲み方を医師や薬剤師に相談しましょう。

そもそもご自身のライフスタイルに合っていない場合は、お薬を飲むタイミングを考え直す必要があります。例えば、朝食を普段食べないのに、朝食後に飲まなければいけないお薬があると、飲み忘れてしまう原因です。 お薬によっては、飲み方を変更することができるものがあります。医師や薬剤師に、ご自身のライフスタイルを伝え、飲み方を相談されることをおすすめします。

(2) お薬ケースで管理し、固定の場所に置き、準備する習慣をつけましょう。

お薬が部屋のあちこちに散乱し、薬袋(飲み方など書かれている袋)から出してしまっていると、「あれ、一体何のお薬を飲めば良いのかな?」となり、飲み忘れてしまう原因です。その場合は、お薬ケースを購入し、固定の場所に置いておくことを勧めます。食事の際に、そのケースを用意する習慣をつけておくことで飲み忘れを防ぐことができます。

(3) スマートフォンのアプリ等のアラーム機能で飲み忘れを防ぎましょう。

最近は、スマートフォンのアプリで、お薬を飲む時間になるとアラームでお知らせしてくれるものが出てきました。アプリでなくても、アラーム機能でも代用できます。お知らせがくることで、ついつい忘れてしまいがちなお薬の服用を思い出すことができます。

参考)

お薬アラーム iphone

お薬のじかん iphone / Android

お薬執事 iphone / Android

(4) 家族に声かけをしてもらい、飲み忘れを防ぎましょう。

自分だけではついつい忘れてしまう場合は、家族のサポートも大切です。お薬を飲むことが習慣化するまで、家族に声かけをしてもらうことで、飲み忘れを防げます。逆に、ご家族がお薬を飲んでいる場合には、声かけをするようにしましょう。

(5) お薬の量・数が多い場合は、一包化を依頼しましょう。

一包化とは、朝食後・昼食後・夕食後など、お薬を飲むタイミングごとにひとつずつの袋にまとめてもらうことをいいます。1回に飲むお薬の量や数が多い場合におすすめです。お薬の量が多く、どれを飲めば良いかわからなくなってしまった場合に適しています。一包化をご希望する場合には、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

6. 高血圧のお薬は一生飲み続けないといけないの?

高血圧のお薬を飲み始めた方からよく聞かれる質問のひとつです。私は、一生飲み続けないといけないか?と聞かれた場合は、「これからの生活次第です」とお答えしています。

(1) 飲み続ける必要があるわけではない理由

前述でも触れたとおり、副作用というリスクがあるお薬は飲まないにこしたことはありません。

しかし、ご自身の健康を維持し、寿命を最大限に伸ばすために、お薬を飲むことも時に必要です。お薬は、血圧が上がるのを抑えるという作用があっても、高血圧の原因から解消するものではありません。遺伝的な素因も考えられますが、運動や食事、お酒などの生活習慣の改善やストレスを解消することにより、根本の原因を解決し、本来の正常な血圧に戻していくことができます。

血圧が少し下がったからといって、自己判断で飲むのをやめることはよくありませんが、血圧が下がり安定したところで、医師に「血圧が下がっているのでお薬をやめても(減らしても)いいですか?」という提案をすることは可能です。生活習慣を改善することによって、高血圧のお薬は一生飲み続けるものではなくなるのです。

(2) 本当に生活習慣によって、血圧が下がるの?

運動や食事などの生活習慣によって、血圧にどのような影響があるかを検討した研究は多々あり、私の実感としても、多くの患者さんで実際に効果があった方を目にしてきました。ここでは、運動により血圧が下がる例を補足として記載します。

(補足)高血圧症の血圧を下げるために必要な運動量 本態性高血圧を有する未治療被験者207名を対象(日本人)。運動の時間および頻度/週に基づいて5つの群に分け(坐位対照(非運動)、30~60分/週、61~90分/週、91~120分/週、および> 120分/週)、8週間、専門家の指導の元、運動を行った。結果、非運動時では、血圧に変化はみられなかったが、運動した4つのグループでは、血圧の有意な減少がみられた。

図:収縮期血圧(上の血圧) 特に、収縮期血圧において、30~60分/週のグループと比較して、61~90分/週でより大きな減少がみられ、それ以上の運動時間では、それほど大きな減少はみられなかった。又、面白いことに、運動頻度と血圧の減少には関連性がなく、つまり、1週間に90分の運動を1日で終えても、毎日少しずつ運動しても統計的には変わらないという結果でした。

 

(参考・図引用) Ishikawa-Takata K1, Ohta T, Tanaka H. How much exercise is required to reduce blood pressure in essential hypertensives: a dose-response study. Am J Hypertens. 2003 Aug;16(8):629-33.

(3) 生活習慣ではどんなことに気をつけるべき?

では、生活習慣としてどのようなことに気をつければ良いのでしょうか?ここでは、明日からできるように取り組みやすい事例をご紹介します。

運動

続けることが大切なので、はりきって急に長時間のジョギングをはじめたりするよりも、毎日少しずつ無理のない程度に運動(有酸素運動)をしましょう。 まずは、ウォーキング(1日30分程度やや早歩き)をおすすめしています。毎日とは言わなくても、無理ない程度で長く続けていけば、効果が少しずつでてきます。 他には、水中ウォーキング(プール)、ゆっくりジョギング(無理しない)、ラジオ体操(地域イベント)などもおすすめです。スポーツの経験がある方は、昔楽しんでいたスポーツを久しぶりに再開してみるのもいいですね。

食事

食事のポイントとしては、

・塩分を控える(減塩)

・食べ過ぎない(カロリーを抑える)

・栄養バランスのとれた食事 ・飲酒を控える

があります。

「運動をしっかりしているから、食事は気にしていない」という方もおられますが、食事と運動はセットで気を遣わなければいけません。まずできることとしては、「味が濃いものは控える」「間食(おかしなど)をとらない」「お酒を控える」ことです。 又、植物性の食品が血圧降下に有効という結果が出ている報告がありましたので、下記に補足します。

(補足)植物性の食品を中心とする食事が血圧降下に有効 国立循環器病研究センターの研究チームが肉類の摂取を制限し、野菜、大豆を中心とした豆類、豆腐、精製していない全粒穀物などの植物性の食品を中心とするベジタリアン型の食事を摂ることと血圧降下とが関連していることを、過去の先行研究のデータをまとめて解析する手法(メタアナリシス解析)を行いました。 その結果、ベジタリアン型の食事パターン群は、最高血圧(収縮期血圧)は6.9mmHg、最低血圧(拡張期血圧)は4.7mmHg、それぞれ低いという結果になりました。

 

 

参考) 植物性の食品を中心とする食事が血圧降下に有効(国立循環器病研究センター 2014年2月25日)

7. おわりに

今回は、高血圧の治療でお薬を飲み続けることへの不安を抱えている方のために、お薬を飲むことの大切さと、また生活習慣の改善を合わせて行っていくことの重要性について解説しました。 様々な情報が飛び交う世の中で、不安になってしまうのも無理はないと思います。正しい情報を見極め、前向きに治療を行っていくことが大切です。 お薬を飲むことの大切を、今回は長々と語りましたが、お薬は飲まないに越したことはありません。お薬に頼らなくとも健康な生活が送れるよう、心から応援しております。

執筆
薬剤師:竹中 孝行
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