過敏性腸症候群に使用される薬を網羅的に解説

過敏性腸症候群とは、長期にわたって下痢や便秘といったお腹に関係する症状を起こす病気です。しかしながら、普通の検査を行っても異常が見られないことが特徴です。もう一つの特徴として、症状にストレスが影響していることが挙げられます。したがって、お腹に作用する薬の他、ストレスを緩和する薬などが治療に有効であり、それ故に使用される薬の種類が多岐にわたります。

そこで、このコラムでそれらの薬とその特徴について紹介します。
※この情報は、2018年3月時点のものです。

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1.過敏性腸症候群とは

 過敏性腸症候群とは、お腹の痛みや不快感、および便通の乱れを特徴とし、これが長期間継続する病気です (1)。

英語では「Irritable bowel syndrome」と書き、この頭文字をとって「IBS」と略されることが多いものです。このコラムでも、以下はIBSと表記します。

 

長期にわたってお腹の調子が悪くなる病気の例としては、他に大腸がんや潰瘍性大腸炎、クローン病といったものが挙げられます。こうした病気では、便を調べる・内視鏡を入れるなど、何らかの検査によって異常が見つかります。例えば、腸の中に腫瘍 (腫れもの) があるとか、腸の表面が荒れている、といったことです。こうした、腸の器質的な変化が病気の症状を生み出すもとになっているわけです。

 

ところが、IBSの場合はこうした病気とは異なり、検査をしてもこれといった異常が見つかりません。つまり、腸の本体には問題がないように見えるのに、腹痛や下痢・便秘を繰り返す病気だということです。こう書くと、ずいぶんと不思議だと感じるかもしれませんが、実際にはさほど驚くには値しません。というのも、腸を含めた臓器は、その機能を神経によってある程度支配されているのが普通だからです。つまり、神経機能の方に何らかの異常が起きれば、それが支配している臓器の方にも、異常が生じるのです。IBSにおいては、こうしたメカニズムが大きな影響を与えていると考えられています。

 

実際、IBSは心理社会的要因によってその症状が悪化することが、ほぼ確実であることが知られています (1, 2)。「心理社会的要因」とは、もっと有り体にいえばストレスのことです。腸は、脳から伸びてきた神経とつながっており、脳がストレスを感じるとそれが電気信号として腸に伝わり、結果として何らかの症状を起こします。実例を挙げれば、学生が試験前になって急にお腹が痛くなることなどが、これにあたります。こうした経験は誰しも一度や二度は思い当たるのではないでしょうか。IBS患者は、このようなメカニズムに、身体が過剰に反応しやすくなっているとも表現できます。そうした意味で、IBSはお腹だけでなく、神経の病気でもあるといってよいかもしれません。

 

IBSは、かなり頻度の高い病気です。統計の取り方によって数値は前後するのですが、様々な報告を加味すると、およそ人口の5-20%程度がIBSに当てはまると考えられています (1)。つい先ほど試験前の学生の例を挙げたように、IBSの症状に近いエピソードは、多くの人が経験するものです。したがって、「ここまでが正常で、ここから先が病気」というビシッとした線引きは事実上、難しいということです。しかしながら、この病気の頻度を考慮すれば、実際にはIBSと診断がつくにもかかわらず、病院を受診していない人は、かなりの数いると推定できます。あまりにも長期にわたって下痢や便秘が続いたり、その程度が激しかったりする場合は、一度医療機関を受診してみることを推奨します。IBSは薬を含めた治療によって症状を緩和することが十分に期待できる病気です。また、長期間継続するお腹の不調は、他の重大な病気の症状であることも多いですから、こうした別の病気を除外する意味合いでも、受診することは重要です。

 

2.過敏性腸症候群の分類

 さきほど書いたように、IBSでは検査所見上、明らかな異常がないのが特徴です。したがって、基本的にはこの病気を決め打ちで診断することはできず、問診や検査で他の病気である可能性を除外していくことで診断されます。

 

診断がついたら次に治療となるわけですが、IBSの症状は冒頭に書いたように腹痛などの他、便秘と下痢が両方あり得ます。便秘と下痢は症状としてまったく真逆の方向性ですが、同じIBSという病気でいずれも起こりえます。

 

ともあれ、人によって下痢になりやすいケース、反対に便秘になりやすいケースがあります。こうした症状 (特に便の性状) のパターンに応じて、以下のようにIBSを分類することがよく行われます。

 

  • 便秘型:便が水っぽい、または泥のような形状であるタイプ
  • 下痢型:便が固い、またはコロコロした形状であるタイプ
  • 混合型:上2つの症状が入れ替わりあらわれるタイプ
  • 分類不能型:上のいずれにも該当しないタイプ

 

どうしてこのような分類をするかといえば、後述する治療法が異なるからです。ご想像の通り、便秘型ではいわゆる下剤など便を出しやすくする薬を使い、下痢型では俗にいう下痢止めなどを用います。

 

ここで強調しておきたいのは、上記の分類は同じ患者でも、時間とともに変化することがある点です (3)。

 

例えば、最初は下痢型のIBSだった人が、しばらく様子を見ているうちに症状の出方が変わっていき、ある時から便秘型の様相を呈する、といった具合です。つい先ほど引用した文献3での調査では、12カ月にわたって同じ分類にとどまった患者は全体の25%しかいませんでしたから、むしろずっと同じ分類のまま経過する人の方が少ないとさえいえるかもしれません。

 

こうした症状・分類の変化がなぜ起こるのか、その原因についてはよくわかっていないのが現状です。さきほども述べたように、IBSの分類が異なれば必然的に治療も変わってきます。そのため、最初の診断時点での分類に固執し、「自分は○○型だから」と過度に意識するのは得策ではありません。病気の経過中に、症状の程度や質が変化すると不安になるのが常ですが、特にIBSに関しては「そういうこともある」と考え、その都度あらわれてくる症状に対応した治療を行うことが大切です。そのためには、症状の移り変わりの様子をできるだけ詳細・正確に診察時に医師に伝えることが肝要です。場合によっては、日記のような形で記録をつけておけば、治療法の選択に役立ちます。

 

3.治療に用いる薬物

 ここからは、IBSに使用する薬について具体的に述べていきます。ですが、その前に一つ確認しておきたいことがあります。それは、治療の目的です。

 

どんな病気でもそうですが、治療には「さしあたっての目的」と「真の目的」があるものです。

 

例えば、関節リウマチという病気があります。この病気は、主に手の関節に炎症が起きることで痛みが生じ、放置すると関節の破壊が進行してしまいます。この場合、治療における「さしあたっての目的」は痛みという症状を取り除くこと、「真の目的」は関節の破壊を食い止めることであるといえます。このように、自覚症状を抑えることは、治療における「真の目的」とは異なることが多いものです。もちろん、症状をとることは重要なのですが、それだけでは十分でなくもっと大局的な目標設定も必要ということです。

 

ところが、IBSに関しては今述べたようなことが当てはまりません。つまり、治療の「真の目的」が、イコール症状をとることになります。

 

これは、冷静に考えてみれば当然です。なぜなら、最初に書いたようにIBSでは検査で異常がない、すなわち身体のどこかが物理的にどうこうなっているわけではないからです。さきほどの関節リウマチの例を再び出しますと、関節に炎症という変化が起きていることが、関節が破壊される原因です。

 

したがって、これを鎮めることが重要です。ところがIBSの場合は、こうした除去すべき病変がそもそもありません。そのため、対症療法を行って症状が除去できればOKなのです。「対症療法」というと、いかにも場当たり的な治療という印象を受けるかもしれませんが、腹痛をはじめとしたお腹の症状は、日常生活の質 (我々の言葉では、「QOL」といいます) を著しく低下させるものですから、こうした症状を抑えることは患者さんにとって大きな利益となります。

 

以上のことから、個々のケースで起きている症状に対応した薬を使い、これを抑えることが治療における最終ゴールとなります。

 

本来であれば、「下痢型に使う薬はこれ、便秘型に使うのはこれ」といった具合に分けることができれば分かりやすいのですが、さきほど述べたようにIBSは時間経過と共に症状が変化することがよくあります。こうした事情から、どの薬は何型に使用する、とはっきりと線引きできないのが実情です。そのため、以下の記載で「○○型に使用する」などとあるのは、いずれも「どちらかといえば」くらいの意味合いで捉えていただければ幸いです。

 

一般に、下痢型に使う薬は排便を止める方向に働くものが多く、便秘型に使う薬はこの逆になります。したがって、副作用として前者は便秘が、後者は下痢が共通して認められます。

 

 

■ポリカルボフィルカルシウム (コロネル / ポリフル)

 

この薬は、体内に吸収されず、消化管のなかを通過し、そのまま排泄されます。その本体は、水を吸うことで膨張しゲルのような形になる樹脂です。

 

こうしてできたゲルは、腸の中で大きな体積を保持するとともに、たくさんの水分を吸着することができる性質を持ちます。下痢型IBSの場合、便の水分量が多くなりすぎることが多いため、このゲルに過剰な水分を吸わせることで、便通の状態が改善されます。一方、便秘型IBSにおいては腸の内容物の量を増やすことで排便を促し、便秘を改善します。このため、IBSの分類にあまり関係なく使用できます。

 

服用の際の注意点として、必ず十分な量の水 (コップ1杯くらい) で飲むことが挙げられます。なぜなら、飲むときに使う水の量が少ないと喉につかえ、そこで膨張してしまうことがあるからです。つまり、確実に薬を胃まで洗い流すために、多めの水が必要なのです。また、名前に「カルシウム」とあることから分かるように、この薬はカルシウムを含んでいます。こうした薬は、他の薬との相互作用 (いわゆる「飲み合わせ」) が比較的多く知られています。したがって、使用にあたってはあらかじめ他に使っている薬について医師・薬剤師に伝えるようにしてください。

 

 

■プロバイオティクス製剤 (ビオフェルミン・ラックビー・ミヤBMなど)

 

プロバイオティクスとは、腸内細菌のバランスを整えることでヒトの健康によい影響をもたらす微生物やそれを含んだ薬・食品のことです。ヒトを含めた動物の腸には大腸菌をはじめとした多くの細菌が住み着いていて、宿主と共存関係にあります。これが、腸内細菌です。腸内細菌は、食中毒などの原因となる他の微生物から宿主を守ってくれるほか、栄養素や薬などの吸収にも貢献するなど、生体機能に重要なはたらきをしています。プロバイオティクス製剤とは、この腸内細菌の仲間を飲む・食べることでおなかの調子を整えるものです。

 

少し難しい書き方になりましたが、皆さんもおなかのことを考えてヨーグルトを食べたりすると思います。根本的な考え方は、それと同じです。医薬品のなかには、乳酸菌や酪酸菌などおなかの調子にプラスにはたらく菌を有効成分として含んだものがあります。これらがIBSにも有効であることが知られており、治療に用いられます。

 

ここまで順番に読んで来られた方の中には、「IBSでは腸自体に問題があるわけではない、と書いてあったのに、おなかの調子を整えるプロバイオティクス製剤が効くのはおかしいのでは?」と感じた方がいらっしゃるかもしれません。理屈としてはその通りなのですが、実際に使ってみると効果があったことが複数の試験で報告されています (4, 5)。このように、メカニズムについてはよくわからないものの、実際には効果がある、というケースは臨床では割りとよくあることです。おなかの調子を「整える」性質上、下痢型・便秘型などの分類に関係なく使用されます。大きな副作用もまずないので、使いやすい薬といえます。

 

なお、こうしたプロバイオティクス関連のものとして、いわゆる健康食品などがいたるところで広告・販売されているのが現状です。こうしたものは、魅力的な販売ページやキャッチコピーで読者を誘いますが、端的にいって購入することはおススメできません。というのも、現時点ではどのような菌種を使っても明確な治療効果の違いはないと考えられていますし、こうした健康食品等は医薬品と比較して非常に高価だからです。つまり、これらを購入するまでもなく、医療機関を受診して処方を受けた方が、より安く品質も確かなものを入手できます。

 

 

■トリメブチン (セレキノン)

 

この薬は、消化管運動機能調節薬とも呼ばれ、その名の通り腸を含めた消化管の運動機能を調節する作用を持ちます。IBSに関していえば、トイレに行く回数や腹痛などを改善する効果が知られています (2)。

 

ただし、劇的に効くという感じの薬ではなく、良くも悪くも比較的おだやかな作用を示す傾向にあります。そのため、どちらかといえば補助的な立ち位置で使用される薬といえます。「調節」という言葉にあるように、下痢つまり消化管の運動機能が行き過ぎているときはブレーキの役目を果たし、便秘で運動機能が落ちているときにはアクセルの役割を果たします。こうした性質上、IBSの型に関係なく使用されます。

 

 

■抗コリン薬 (ブスコパン・チアトンなど)

 

これは純粋におなかの痛みを和らげるために使用するグループです。身体の中には「アセチルコリン」という物質があり、これが腸に作用すると腸の運動が活発になります。ところが、その程度が過ぎると腹痛を起こします。抗コリン薬の「コリン」とは、アセチルコリンのことを指しており、この物質のはたらきをブロックすることで行き過ぎた腸の運動を抑えるわけです。

 

このグループに属する薬に共通する注意点として、アセチルコリンのはたらきをブロックする結果、眼圧を上昇させる・男性では排尿がしにくくなる、といったことが挙げられます。こうしたことから、緑内障や前立腺肥大などの病気を持っている人では使用できないことがあります。よくある副作用は、口の渇きです。

 

 

■ラモセトロン (イリボー)

 

下痢型のIBSに使用します。さきほど、脳と腸は神経でつながっていて云々ということを書きましたが、こうした脳-腸間の情報伝達に重要な物質に「セロトニン」があります。

 

セロトニンは脳内での情報伝達にもかかわる物質ですが、体内貯蔵量のほとんどは腸にあります。これが腸に作用すると、水分吸収が悪くなり、便が水っぽくなります。その結果として、下痢を生じます。ラモセトロンは、こうしたセロトニンの作用に拮抗することで下痢症状を改善する薬です。その性質上、便秘が優位な状態には用いません。便秘症状を悪化するからです。

 

この薬は、発売当初は男性にしか効果がないと考えられていました (1)。しかし、後の検証によって女性にも効くことが分かったため (6)、現在では性別に関係なく使用できるようになっています (7)。ただし、どういうわけか女性の方が、効果を得るために必要な量が少なくて済む傾向にあるため、男性の半分程度の量で治療されることが多くなっていることも特徴です (6, 7)。

 

 

■ロペラミド (ロペミン)

 

いわゆる古典的な下痢止めです。腸が便を直腸側に押し出す動き (「蠕動運動」と呼びます) を抑制することで下痢を抑えます。

 

IBSでは下痢型や下痢症状優位の混合型などに使用されることがありますが、有効性に関する検証は上のラモセトロンと比べると十分なされているとはいい難いのが実情です。それでも、通常の治療にプラスアルファで加えることで、症状のコントロールに役立つ可能性はあります。この他にも、いわゆる下痢止めとしては、以下のようなものが使用されることがあります。

 

  • タンニン酸アルブミン (タンナルビン)
  • ベルベリン (フェロベリンなど)

 

しかし、これらはロペラミドに輪をかけて有効性に関するデータが不足しているところがあります。やはり、現時点では補助的な立ち位置にとどまっているといえるでしょう。

 

 

■粘膜上皮機能変容薬

 

このグループは、腸の粘膜からの水分分泌量を増やす効果を、共通して持っています。現在、日本で使用されている薬では、以下の2つがこのグループに該当します。

 

  • ルビプロストン (アミティーザ)
  • リナクロチド (リンゼス)

 

IBSにおいては、便の水分量を増やすことで、便秘症状を改善します。もう少し具体的にいえば、便の硬さ・排便時のいきみ・おなかの張りなどに効果があります (2)。こうした性質から、主に便秘型IBSに使用されます。

 

使用する際に注意すべき点として、リナクロチドは食事の前に飲むことが挙げられます (8)。この理由は、食後に飲むと効果にバラつきが大きく、また副作用である下痢の頻度が高かったためです (9)。「食前」とは、一般的には食事をはじめる30分程度前です。一般的な薬は食後服用するものが多いので、タイミングを間違えないように注意してください。

 

 

■酸化マグネシウム (マグミットなど)

 

非常に古くから使用されている、便秘の薬です。便の水分量を増やすはたらきがある、いわゆる「便をやわらかくする薬」です。

 

基本的には安全性が高く、効果が出過ぎるために起きた下痢を除けば、副作用も稀です。ただし、ポリカルボフィルカルシウムのところで、カルシウムと他の薬の飲み合わせを述べましたが、それと同じことがマグネシウムでも起こります。このような理由から、一緒に使わない方がよい薬も多く、酸化マグネシウムの使用頻度の高さもあって、臨床ではよく飲み合わせ問題に遭遇します。やはり、使用している薬の内容は、医師・薬剤師に必ず伝えることが大切です。

 

 

■大腸刺激性下剤 (ラキソベロン・プルゼニドなど)

 

ロペラミドのところで、腸の蠕動運動について書きました。あちらはそれを止める作用を持つ薬でしたが、大腸刺激性下剤はその逆の作用を持っています。つまり、腸をしっかり動かして排便を促す薬です。

 

便秘症状のみられるIBSにおいても一定の効果を持つ薬ですが、デメリットとして長期の使用には向きません。さきほど「腸をしっかり動かす」と表現しましたが、これはすなわち腸の筋肉の運動を活発にすることです。重い荷物を何度も持ち上げるときのことを想像してほしいのですが、きつい運動を繰り返していると、筋肉が疲労しそのうち持ち上げられなくなります。これと同じことが、腸の筋肉でも起こります。要は、薬を使って無理に腸を動かすことを続けていると、筋肉が疲れてもはや動かなくなってしまうのです。

 

こうしたことを避ける意味でも、使うならば必要最小限の量と期間とし、漫然と継続することはしない方が無難です。

 

 

■各種抗うつ薬 (パキシル・アモキサンなど)

 

いきなり「抗うつ薬」と出てきて驚いたかもしれませんが、実はIBSにも効果があることが分かっています。どのようなメカニズムで効果があるのかは、はっきりしない部分もありますが、最初の方で「IBSにはストレスが関与する」と書きました。したがって、メンタル面に何らかの作用をもたらす薬が効果を示すことは、十分に予測できることです。抗うつ薬が使用されたからといって、「IBSだけでなく、うつ病とも診断された」ということには必ずしもならないので、この点にはご注意ください。

 

抗うつ薬にはいろいろな種類があるのですが、そのなかでIBSに特に有効と考えられているのは、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)」と「三環系抗うつ薬」という2グループです。基本的には、症状分類によらず有効ですが、三環系はどちらかといえば下痢型により適していると考えられています (2)。

 

副作用としては、SSRIでは特に飲み始めの時期に吐き気がよく起こります。一方の三環系抗うつ薬は、口の渇き・便秘・眠気などが比較的多いと知られています。

 

 

■抗不安薬 (ソラナックス・コレミナールなど)

 

これも抗うつ薬と同様に、精神面にアプローチすることでIBSの症状を緩和する薬です。化学構造の観点からいえば「ベンゾジアゼピン系」と呼ばれる薬が、おおむね該当します。

 

その名の通り、不安を和らげる作用を持ちますから、IBSの大敵であるストレスをやり過ごす上でプラスにはたらきます。しかしながら、抗不安薬には眠気など無視できない副作用がある他、依存性があることが知られているため、長期にわたって漫然と使用することは避けるべきです (2)。こうしたことから、他の薬の効果を補助する目的で使用し、必要なくなった時点で出来るだけ速やかに使うのを止める、というのが理想的です。

 

4.まとめ

 多くの薬について書きましたが、裏を返せばIBSにはそれだけ多くの治療薬の選択肢があるということです。繰り返しになりますが、時間経過と共に症状が変化することが多い疾患ですから、その都度よく主治医と話し合って治療方針を決めてください。

 

■一般にIBSでは、各種検査で異常が見つからない

■IBSの症状には、ストレスが関係する

■下痢・便秘どちらも起こり得る病気で、症状によって使う薬も変わる

■経過中に症状のパターンが変わることがよくある病気である

 

参考文献

1. Ford AC, et al. BMJ Clin Evid. 2012 Jan 6;2012. pii: 0410. PMID: 22296841

2. 日本消化器学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群 (IBS)

3. Drossman DA, et al. Gastroenterology. 2005 Mar;128(3):580-9. PMID: 15765393

4. Kim HJ, Neurogastroenterol Motil. 2005 Oct;17(5):687-96. PMID: 16185307

5. O’Mahony L, et al. Gastroenterology. 2005 Mar;128(3):541-51. PMID: 15765388

6. Fukudo S, et al. J Gastroenterol. 2016 Sep;51(9):874-82. PMID: 26800997

7. イリボー錠 添付文書 アステラス製薬株式会社

8. リンゼス錠 添付文書 アステラス製薬株式会社

9. リンゼス錠 インタビューフォーム アステラス製薬株式会社

執筆
薬剤師:黒田 真生
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