自然に熟睡できるようになりたい。不眠症との向き合い方と改善方法を解説

このコラムをご覧になっている方には、夜中眠りにくくて睡眠薬をのんでいらっしゃる方も多いと思います。睡眠薬を飲めばよく眠れるけど、ずっと続けていてよいのか(副作用などはないのか)、のまないで眠れる方法はないだろうか、と考えている人もいらっしゃるでしょう。睡眠薬をのみ続けていたらだんだん以前のように効かなくなったというご心配のある方もいらっしゃるでしょう。年齢とともに途中で起きてしまい、その後は一睡もできずに朝まで眠れない、というお悩みのある方も。


熟睡できるようになり、日々を元気に過ごすにはどうしたらよいでしょうか。ここでは不眠症の改善についてご説明していきます。
※この情報は、2018年7月時点のものです。

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1.睡眠覚醒のリズムができあがる仕組み

人には日中に覚醒し、夜間は覚醒度がさがって眠くなるという自然の睡眠覚醒のサイクルがあります。睡眠と覚醒のリズムは、脳が作り出しています。睡眠と覚醒のリズムには、昼と夜という大きなリズムの他にも、1時間30分ほどで繰り返す睡眠覚醒の小さな山や谷があることが知られています。

 

例えば昼食後午後1-2時に眠くなるのは、昼食でおなかがいっぱいになって、血流が消化管にいってしまうということの他に、日中にもこの時間あたりで身体のリズムとして眠くなってしまう覚醒度の”谷”があることを意味しています。

 

ですから睡眠を改善するためには、人の脳がもっているこの自然のリズムをうまく利用することが大切です。具体的には、うまく自分の睡眠覚醒のリズムを合せて、寝たい時間に、睡眠の覚醒度が低くなるようにもっていくことが望ましいのです。

 

でも、そのリズムを自分の意思で勝手に変化させることができないところがむずかしいところです。睡眠薬をのんで脳のスイッチを切る、みたいなイメージで、睡眠薬をのんで寝たい時間に無理やり眠ってしまおうとするとうまくいかないのです。そのような考えがいかに無謀かを説明していきましょう。

 

睡眠覚醒のリズムはどのように作り出されているのでしょうか。

 

人間の脳の奥の視床下部というところに、視交叉上核といって人間の約24時間の睡眠覚醒サイクル、いわゆる概日リズム(サーカディアンリズム)を決定している”脳の時計”があります。

 

この核の中の神経細胞が24時間のリズムを、いわば自動的に作り出してくれているのです。昼は目が覚めていて(覚醒度があがり)、夜は眠くなるというリズムは、大まかに言えばこの時計が睡眠覚醒の周期を作りだすために起きると考えられています。

 

さらに大事なことは、このリズムの情報が脳をはじめ、体のいろんな臓器に送られ(例えば消化管)、体全体の活動もこの24時間周期をもつようになるのです。つまり昼間は活動し、夕方以降リラックスして、夜しっかり眠ることができるのは、脳だけではなく、消化管を含む様々な内臓までが同調して、体全体の睡眠覚醒のリズムがしっかり出来上がっていることを意味しています。

 

逆にこのリズムが崩れてしまうと、眠れなくなるのです。このようなことから、毎日寝る時間と起きる時間がばらばらであったら、体は大混乱を起こしてしまい、きちんと眠りにつくどころではなくなることがわかるでしょう。脳のリズムだけでなく、各種内臓臓器の調子もおかしくなるので、体調もおかしくなってきます。

 

視交叉上核の24時間時計があれば、それだけで問題なく睡眠覚醒リズムが保たれると思われるかもしれませんが、実はそうではありません。

 

この時計は正確に24時間周期を持っているわけではなく、実は24時間より少し長い周期をもっています。ですからこの時計にまかせっぱなしにしておくと、昼夜の周期と身体の睡眠覚醒のリズムが段々ずれていってしまうのです。

 

実際まったく外の光を遮断した環境、例えば洞窟の中で何か月も暮らしていると、睡眠覚醒のリズムが昼夜のリズムとどんどんずれていってしまうということが知られています。昼夜の長さは季節によっても変わりますから、この視交叉上核だけにまかせておくと、睡眠―覚醒のリズムと明暗の周期が段々ずれていってしまい、社会生活上も支障をきたすようになるのです。

 

そこで大事になるのが、脳の時計のリズムを日の光により修正して、昼と夜のリズムにあわせていくシステムです。メラトニンというホルモンは、脳の覚醒度を下げて眠気を催す作用をもっています。メラトニンは脳の深部にある松果体というところから分泌されますが、その血中濃度は1日のサイクルで変化しており、日中は血中濃度が低く、夜になると上昇するという概日リズム(サーカディアンリズム)をもっています。夜にこのメラトニンが分泌されるために眠くなってくるのです。

 

 

メラトニンの分泌のリズムは外界からの光によって制御されています。朝になって網膜に光が当たると、この情報が脳視交叉上核に達します。

 

さらに視交叉上核から松果体まで情報が伝わると、松果体にあるアリールアルキルアミンN-アセチルトランスフェラーゼというメラトニンを合成する酵素の活性が抑制されます。従って朝の光の情報が脳にはいると、メラトニンが作られなくなるのです。逆に夕方から夜に光が少なくなると、酵素が再び活性化してメラトニンを合成するようになります。

 

つまりメラトニンの血中濃度が昼に低く夜に高いという分泌パターンは光によって作り出されているのです。いわば朝の光がスイッチをオフするようにメラトニンの分泌が止まるのです。夜暗くなると、メラトニンの合成のスイッチが入ります。夜寝る前に光を発するスマートホンやパソコンをいじると眠ることができなくなるのは、このようなことが関係していると考えられます。

 

これに対しオレキシンという物質は視床下部の神経細胞で作られ、覚醒状態を安定化させ起きている状態を維持する役割をもつ脳内物質です。脳の視床下部という部分の近くに覚醒中枢と睡眠中枢が存在していますが、オレキシンの分泌が高まると覚醒中枢が活発化になり、覚醒状態が作られるのです。このようにメラトニンとオレキシンは”眠い状態”と”覚醒状態”の切り替えに重要な役割を果し、睡眠覚醒のリズム形成に重要な役割を果たしています。

 

 

なぜ、睡眠が必要か?睡眠の重要性

 

睡眠の悩みはいろいろありますが、熟睡できないと疲れがとれず、その日頑張る気力が出なかったり、日中眠くて日常生活に支障をきたしやすくなってしまうというのはみな共通しています。

 

睡眠中には成長ホルモンというホルモンが分泌されており、これが身体組織の修復をする役割を果たすことがわかっています。この他にも睡眠中、脳では日中の情報や記憶が整理・定着したり、脳の老廃物が睡眠中に排出されることがわかってきています。ですから毎日一定時間質のよい睡眠をとることは、心や体の健康のためにも、とても重要なのです。

 

2.薬に頼らないでできる睡眠の工夫

睡眠薬に頼ることなく、睡眠を改善させるには生活上どのような工夫をすればよいのでしょうか。

上で説明したように、夜しっかり眠るためには、身体のリズムを整えることが最も大切です。

 

例えば昼寝をしてしまって、夜寝られない人は、昼は覚醒していて夜は眠いという正常な睡眠覚醒のリズムがくずれてしまっているので、なかなか眠ることは難しいでしょう。この場合、まずは睡眠覚醒のリズムをもとに戻していくことが必要になるのです。日中眠くなった場合は、昼間の昼寝は15分か30分以内に切り上げるようにしましょう。そうしないと睡眠覚醒のリズムがくるって眠れなくなります。

 

年齢とともに睡眠時間は短くなっていくことが知られています。年齢が高くなったら、早く起きてしまう傾向が誰にでも出てきます。“8時間眠れなければ健康に良くない”というふうに思い込む必要はありません。日中全く眠くなければ、睡眠は足りていると考えてよいのです。

 

すっきり寝つくためには、睡眠を誘う適度な疲労があることが大事になります。これには日中定期的な運動をすることや、寝室の環境を整えるなどの方法があります。寝るまで少し時間があるようであれば、ちょっとした運動をするのもよいのですが、これも寝る直前にやると睡眠の妨げになってしまうことに注意しましょう。夕食は、就寝の少なくとも二時間前までには済ませておくようにしましょう。これは内臓のリズムを整えることにもつながります。

 

寝る前に脳を刺激する作用のあるカフェイン、タバコに含まれるニコチンを避けるようにしましょう。お茶、コーラ、ココア、栄養ドリンクなどにもカフェインがはいっていますから、寝る前は避けるようにしましょう。チョコレートなどもできれば、避けたほうがよい場合もあります。逆に温めた牛乳や、カモミールティーなどのハーブティーを飲むと、リラックス効果が期待できます。リラックスのためには、寝る前にストレスのかかる仕事、感情的な言い合いなども避けたほうがよいでしょう。

 

睡眠には暗くて、静かな環境が大切です。寝る前は、パソコンやスマートホンをみたり、ゲームをしたりして、不用意に光にあたらないようにしましょう。ちょっとした光であっても脳にその情報がはいってしまうと、上で述べたように睡眠のリズムを崩すもとになってしまうのです。

 

寝る前の”儀式”をつくっておくのも一つの方法です。風呂にはいる、本を読むなどはよい習慣です。ただお風呂にはいった直後はすぐには寝つきにくいのが普通で、風呂に入った後、温まった体の表面の温度が下がってくると眠気が出て来ます。就寝2時間前までに、ぬるめのお風呂にゆっくりはいっておくと、寝つきやすいです。

 

寝つきをよくしようとして晩酌をする人もいますが、これは基本的にやめたほうがよいでしょう。というのもアルコールをのむと、確かに一時的には寝つきやすくなるのですが、結局睡眠が浅くなり夜中に目覚めやすくなってしまいます。夜中に起きてまたお酒を飲むようなことを繰り返していると、今度はアルコール依存になってしまいます。

 

最後に、なかなか寝つけないときは、いったん無理に眠ろうとするのをやめて、いっそのこと起きあがって何かしてみるのもよいでしょう。ちょっとした本を読んだり、音楽を聴いてリラックスして、本当に眠くなってきたら眠ればよいのです。

 

この他、不眠はストレスや心配事、環境の変化などの心理的な影響を受け、生活習慣病やうつ病といった病気も原因となる場合があります。とくに後で述べる早朝覚醒は、うつ病によくみられる症状です。日々気分がうつうつとするなど、うつ病が疑われる場合は、精神科や心療内科を受診することが大切です。

 

3.不眠の症状と睡眠薬の使い方

生活習慣を整えても不眠が改善しない場合、どのような睡眠薬を用いていったらよいでしょうか。それには、どのような不眠の症状があるかをはっきりさせなくてはなりません。不眠の症状には寝つきが悪い場合と夜中に何度も目覚める場合があります。前者には入眠障害があります。後者には、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、寝つくことができても、早朝に目が覚め、その後睡眠に戻ることができない(早朝覚醒)、熟睡感がない、起床時にすっきりしない(熟眠障害)などがあります。

 

入眠障害では床についてもなかなか寝つけない、寝つくまでに2時間以上かかることなどがありますので、超短時間・短時間作用の睡眠薬を用います。短時間作用の薬は朝起きたあとにも薬が残ることなく、快調な目覚めになります。

 

中途覚醒(睡眠維持障害)・早朝覚醒とも、十分睡眠が維持できない状態ですので、中時間型・長時間型の睡眠薬が用いられます。ただし、年齢が高くなるとともに誰でも睡眠時間は短くなる傾向がありますから、高齢者では睡眠時間が短いというだけで異常というわけではありません。早朝に目がさめてしまっても、その後日中全く眠くないという方は実は睡眠が十分足りているかもしれません。その場合、あえて睡眠薬を飲む必要はありません。その一方で、早朝覚醒では、うつ病が原因になっている場合もありますから注意が必要です。

 

熟眠障害は長時間寝ているわりには、朝起きた時にぐっすり眠った気がしない、という症状です。眠りの量よりも質が低下した状態となります。熟眠障害では非ベンゾジアゼピン系薬剤に切り替えたり、抗精神病薬や抗うつ薬の併用をすることがあります。ただし熟眠障害の場合、他の病気が原因で起きていることがあり、注意が必要です。

 

例えば、睡眠時無呼吸症候群が原因になっている場合もあります。舌は筋肉でできています。睡眠時無呼吸症候群は夜中に睡眠が深くなると、身体から力が抜けてくるとともに舌根も重力で沈下し、これが気道を一過性に塞いでしまいます。そうすると夜中にいびきがでて、気道がふさがれることで一時的に低酸素になり、(自分では気づいていなくても)覚醒してしまうのです。覚醒度が上がると、また舌根があがって無呼吸が改善するのですが、このように覚醒度が上がったり下がったりを繰り返すために、深い睡眠をとることができず睡眠の効率は低くなります。その結果、長く寝ていても、ちっとも寝た気がしないということになります。本人は全くこのような状態が起こっていることに気がついていないことが普通です。睡眠時無呼吸症候群では、持続陽圧呼吸療法(CPAP)といって、睡眠中マスクをつけ、機械で圧力をかけた空気を鼻から気道に送り込む装置が用いられることがあります。

 

レストレスレッグ症候群は、夜に寝ている間に足がむずむずしてしまい、足を動かさないと落ち着かなくなる病気です。原因としてはドパミン機能や鉄分の異常が関係すると考えられており、ドパミン受容体に働く薬を服用する場合があります。

 

3-1. 睡眠薬の種類と特徴

睡眠薬にはいくつかの種類があります。

 

①作用時間による分類

睡眠薬は作用時間によって分類されています。作用の持続時間の指標としては、半減期といって血中濃度が半分になるまでの時間が目安として使われます。作用時間(半減期)の長短により、超短時間型(2-4時間)、短時間(6-10時間)、中時間(12-24時間)、長時間型(24時間)に分類されます。

 

②化学的な構造および作用による睡眠薬の種類

以下のように数種類の系統の睡眠薬に分類されています。

 

(1) ベンゾジアゼピン(BZD)系
通常の睡眠薬はベンゾジアゼピン系の薬剤といわれています。一番多いタイプの睡眠薬です。

 

・超短時間型・・・トリアゾラム(ハルシオン)

・短時間型・・・ブロチゾロラム(レンドルミン)、リルマザホン(リスミー)など

・中時間型・・・フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール)、ニトラゼパム(ベンザリン、ネルボン)、エスタゾラム(ユーロジン)など

・長時間型・・・フルラゼパム(ダルメート)、クアゼパム(ドラール)など

 

多くのベンゾジアゼピン系睡眠薬は、不安を和らげ、精神を安定させる抗不安薬や精神安定剤としての作用もあります。筋弛緩作用をもつものもあります。短時間作用の薬では、作用が短いので、早朝覚醒が起きる可能性があります。一方で長時間型のものは、朝から午前中まで眠気が残るという、持ち越し効果が出やすい特徴があります。

(2)非ベンゾジアゼピン系
非ベンゾジアゼピン系はベンゾジアゼピン系と比較して筋弛緩作用が少なく、安全性が高いのが特徴です。マイスリー、アモバン、ルネスタなどがあります。マイスリー、アモバン、ルネスタはいずれも短時間作用の薬です。マイスリーは筋弛緩作用が弱く、高齢者に使いやすい薬です。アモバンは苦味がデメリットですが、ルネスタは苦味が軽減され改良されたもので、依存性や耐性をより起こしにくいといわれています。

 

(3) バルビツール酸系
かつては睡眠薬としてよく用いられていましたが、副作用が強いため、今では上のベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の薬が主に用いられるようになっています。

 

(4) メラトニン受容体作動薬
視交叉上核にあるメラトニンのMT1/MT2受容体刺激により、催眠効果をもたらします。睡眠・覚醒リズムを調整して自然な睡眠を作り出す薬です。効果は若干弱く、他の睡眠薬と違って速効性がありません。入眠困難に用いられ、短時間作用です。ラメルテオン(ロゼレム)があります。


(5)オレキシン受容体拮抗薬
覚醒を作り出すオレキシンという物質もあります。オレキシンがオレキシン受容体にくっつくと、覚醒がもたらされるのです。逆にオレキシンの受容体と拮抗する薬は、これを遮断することにより中途覚醒や早朝覚醒に効果的です。スボレキサント(ベルソムラ)があります。

 

この他、うつが基盤になっている不眠にも抗うつ薬を就寝前に飲むと眠りやすくなる場合があります。抗精神病薬も用いられることがあります。抗ヒスタミン薬は花粉症、じんましんなどにも使われることのある薬の系統です。ヒドロキシジン(アタラックスP)は眠気をひきおこすため、不眠でよく用いられます。高齢者での使用は注意が必要です。

 

3-2. 睡眠薬の副作用と使用上での注意点

睡眠薬は用法、用量を適切に守っていればほとんど副作用はありませんが、それでもむやみと使ってよいものではありません。睡眠薬を使う上での注意点はどのようなものがあるでしょう。

 

例えばベンゾジアゼピン(BZD)系薬剤のようにふらつき、筋弛緩作用などをもつ睡眠薬があります。

高齢者ではとくに、筋弛緩作用による脱力が起きやすく、睡眠薬の効果が朝まで持ちこされると、ふらつきや転倒のリスクなども生じます。過量に投与した場合には、呼吸抑制が生じる場合もありますので、注意が必要です。

 

眠りを誘発するタイプの睡眠薬は、不眠の時期に一時的に使う頓用の使い方をするのが望ましく、漫然と使わないようにしないといけません。長く使い続けていると、以前別のコラムでもご説明したように耐性、依存性などがあるからです。

 

ベンゾジアゼピン系薬剤は、これらの副作用はそれほど強くないとされていますが、しかし全くないというわけでもありません。耐性とは、繰り返し使用することにより薬に対して体が慣れてしまい効果が減弱することをいいます。漫然と内服して耐性が生じると、以前と同じ量を内服していても同様の効果が得られなくなってしまうため、薬を増量しなくてはならなくなります。

 

またある一定期間薬を使い続けると、止められなくなる依存性があるとされています。繰り返し薬を摂取することで、効果が切れてきたときに脳が自動的に薬を欲します。依存が起きやすいのは、短時間作用の睡眠薬が多いといわれています。ですから、短時間作用の睡眠薬は持ち越し効果がないからといって、漫然と使用しつづけることは避けないといけません。

 

かといって睡眠薬はある程度の期間、例えば1か月以上使ったら、急にやめないようにすることも大切です。薬を急にやめたときに離脱症状という症状が起きることがあります。体が薬になれてしまった状態になり、いきなり薬がなくなるとこれについていけなくなると考えられます。睡眠薬を急にやめると、不安感・焦燥などの離脱症状が出現することがあります。この他、反跳性不眠といって却って眠れなくなることもあります。そのため、開始してから1か月以上経った後に服用を中止する場合は、医師の指示に従いながら、少しずつ減量することが大切です。

 

メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬は、副作用が少ない、例えば、筋弛緩作用や記憶障害、依存性がないため、使いやすい側面もあります。しかしこれらの薬にも、難点がないわけではありません。例えばメラトニン受容体作動薬は一定の時間に床につくという習慣ができた状態で飲んでいると、それに睡眠覚醒のリズムがあってくるというタイプの薬です。自然な感じの睡眠を生み出すという意味ではよいのですが、通常の睡眠薬のように速効性に眠気が生じるわけではありません。毎日床に就く時間がばらばらという状態ではなかなか効果が発揮されにくいのが特徴です。他方、オレキシン受容体拮抗薬では、悪夢がみられやすいという特徴もあります。

 

睡眠薬とアルコールを一緒に用いることは極めて危険です。絶対にしないようにしてください。上でも述べたように、飲酒自体が眠りを浅くし、睡眠効率を悪化させるということもありますから、不眠症にとっては逆効果でもあるのです。

 

最後にうつ病に伴って不眠、とくに早朝覚醒がみられることがあります。うつ病の場合は不眠だけでなく、うつ病自体の治療も必要になってきます。うつ症状がある場合には、医療機関の受診が必要になります。

 

4.まとめ

不眠症の改善についてお話ししてきました。最初にお話ししたように、睡眠が規則正しく、しっかりできるためには、脳だけでなく、臓器を含む体全体のリズムができあがっていることが必要です。とりあえず睡眠薬を飲んで、脳のスイッチを切るみたいに、すっと眠って熟睡しようとするのは、無理だというのがおわかりいただけたと思います。しっかりとした睡眠をとるには、睡眠覚醒のリズムを調節するように生活の改善をする必要があります。

 

現在一般に用いられている睡眠薬は副作用が少なく、使いやすいものも多いのですが、漫然と使用することはできるだけ避けましょう。安易に自己判断で開始したり、急に中止したりすると、かえって全く眠れなくなることなどがありますので、注意が必要です。睡眠薬をのんでも、なかなか眠れない人は一度医師にかかってよく相談することも大切です。

執筆
医師:子煩悩神経内科医
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