精神科医

【精神科医が解説】統合失調症の症状(陽性・陰性)・経過と治療方法

豊田 早苗

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統合失調症といえば、「幻覚妄想が起こる」「治らない病気」というイメージを持っておられる方が多いと思いますが、統合失調症の症状は、幻覚妄想だけではありませんし、幻覚や妄想のない統合失調症もあります。また、早期に治療を開始すれば社会復帰も可能な病気です。

そんな統合失調症の症状から治療についてまで解説いたします。

1.統合失調症とは?

統合失調症は、思考や行動、感情を1つの目的に沿ってまとめていく能力、すなわち統合する能力が低下した結果、幻覚や妄想をはじめとする様々症状が引き起こされる精神疾患の1つです。

 

2016年現在、統合失調症と診断された患者さんの数は厚生労働省の統計によると約80万人とされており、病院を受診していない方も含めると、大体人口の約1%の方が統合失調症を発症していると言われています。

2.統合失調症の症状・特徴

100人に1人の方が発症していると言われる統合失調症ですが、一体どのような症状が現れるのでしょうか?

 

詳しく見ていくことにしましょう。

2-1. 陽性症状

統合失調症を特徴づける症状で、ないものがある状態になることから陽性症状と呼ばれています。

 

代表的な症状は、以下のような症状です。

①妄想

人によって様々な種類の妄想が起こりますが、統合失調症の妄想は、客観的に明らかに非現実的、非合理的とわかる内容の妄想で「盗聴器を仕掛けられている」「自分は命を狙われている」など自分が何らかの嫌がらせ、被害を受けていると考える被害妄想、「人が自分の事を見て笑っている」「人が自分の事をジロジロ見てくる」など人の言動を自分についての事と考える関係妄想が特に多いです。

 

その他、「自分の考えが人に漏れている」などと考える考想伝播、「自分が考えたことが声になって聞こえてくる」という考想化声、「誰かによって自分は操られている」と考える作為体験など、統合失調症特有の妄想が起こることもあります。

②幻聴

誰もいないのに人の声が聞こえたり、誰かに話しかけられたり、命令されたりするといった実際に人の声が聞こえてくる形式の幻聴が起こります。

 

内容としては、「お前は馬鹿で役に立たない奴だ」といった批判幻聴、「バスに乗って、公園に行け」といった命令幻聴、「今、携帯をいじっているな」といった監視幻聴が多いです。

③幻覚

いないはずの人の姿やないはずの物が見える幻視、「刃物で刺された」「体の中を電流が流れる」などの知覚幻覚などが起こります。

④まとまりのない会話

統合失調症では、思考過程の障害が起こるため、一定のテーマに沿って話を進めることが出来ず、話の内容があちこちに飛び、何を話しているのが分からない会話になったり、ひどい場合には、言葉の羅列だけの会話になったりします。

⑤興奮、奇異行動

統合失調症では、突然激しく興奮して、時には暴言を吐いたり、暴力をふるったりすることもあります。
また、パジャマ姿で外出したり、走行中の車から降りるなど、客観的に異様と思える行動をとったりします。

 

こうした陽性症状は、統合失調症の発症直後に見られることが多いです。

 

妄想、幻聴、幻覚といった陽性症状は、周囲の人からすれば、間違った考え、内容だとはっきりとわかるものですが、本人は事実と認識しているため周囲の人がいくら「違うよ」と否定しても信じることが出来ず、なかなか意見を聞き入れることができません。

 

また、こういった妄想、幻聴、幻覚は本人にとって心地悪い内容であることが多いため、統合失調症の患者さんは一人で苦しみを抱え込むことになります。

2-2. 陰性症状

本来あるべきものがない状態になることから陰性症状と呼んでいます。

代表的な症状は、以下のような症状です。

①感情表現の欠如

喜怒哀楽を感じなくなり、笑ったり泣いたりの感情表現が乏しくなり無表情となります。

②興味関心の欠如

何事に対しても、興味がわかず、無気力無関心の状態になります。

③閉じこもり

口数が少なくなり、応答もほとんどなく、人とのかかわりを避けるようになります。

④認知機能障害

情報処理能力、注意力・記憶力・集中力・理解力や計画能力・問題解決能力などの認知機能が低下します。このため、状況に応じた適切な行動がとれず、日常生活社会生活に支障が生じます。

2-3. その他

①病識の欠如

統合失調症では、自分は病気であると認識していない場合が多く、統合失調症の97%に病識の欠如が認められるというWHOの報告もあります。

 

これは、統合失調症を代表する症状の妄想、幻聴、幻覚が、本人にとっては現実的に起こっている事、体験している事であるため自分は病気かもしれないとの疑いが起こらないためと言われています。

 

ここまで統合失調症で見られる代表的な症状について説明してきましたが、ここで紹介した症状すべてが統合失調症で見られるわけではなく、人それぞれ起こる症状は違いますし、症状の強さも違います。

 

特に、破瓜型(はか型)と呼ばれるタイプの統合失調症では、統合失調症に特徴的な妄想、幻聴、幻覚は、ほとんどなく、陰性症状が主体となります。

3.統合失調症の診断基準

統合失調症の診断基準としては、アメリカ精神医学会が作成したDMS-Ⅳに基づくものと、WHOの国際疾病分類ICD-10に基づくものの2つがあります。

①DMS-Ⅳによる統合失調の診断基準

DSM-IV 精神疾患の分類と診断の手引き.医学書院.高橋三郎ら訳 より引用

A. 特徴的症状:以下のうち2つ(またはそれ以上)、各々は、1ヶ月の期間(治療が成功した場合はより短い)ほとんどいつも存在。

(1) 妄想
(2) 幻覚
(3) 解体した会話(例:頻繁な脱線または滅裂)
(4) ひどく解体したまたは緊張病性の行動
(5) 陰性症状、すなわち感情の平板化、思考の貧困、または意欲の欠如

妄想が奇異なものであったり、幻聴が患者の行動や思考を逐一説明するか、または2つ以上の声が互いに会話しているものであるときには、基準の症状1つを満たすだけでよい。

B. 社会的または職業的機能の低下:障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している(または小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)。

C. 期間:障害の持続的な徴候が少なくとも6ヶ月間存在する。この6ヶ月の期間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも1ヶ月(または治療 が成功した場合はより短い)存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、 障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(たとえば、風変わりな信念、異常な知覚体験)で表されることがある。

D.分裂感情障害と気分障害の除外:分裂感情障害と気分障害、精神病性の特徴を伴うものが以下の理由で除外されていること。
(1) 活動期の症状と同時に、大うつ病、躁病、または混合性のエピソードが発症している。
(2) 活動期の症状中に気分のエピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は、活動期および残遺期の持続期間の合計に比べて短い。

E. 物質や一般身体疾患の除外:障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)、または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではない。

F. 広汎性発達障害との関係:自閉性障害や他の広汎性発達障害の既往歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が少なくとも1ヶ月(治療が成功した場合は、より短い)存在する場合にのみ与えられる。

 

②DSM-IV 精神疾患の分類と診断の手引き.医学書院.高橋三郎ら訳 より引用

1) 考想化声、考想吹込または考想奪取、考想伝播。

2) 他者に支配される、影響される、あるいは抵抗できないという妄想で、身体や四肢の運動、特定の思考・行動や感覚に関連つけられているもの、および妄想知覚。

3) 患者の行動に対して絶えず注釈を加えたり、仲間たちの問で患者のことを話題にする形式の幻聴、あるいは身体のある部分から発せられる幻声。

4) 宗教的・政治的な身分や超人的な力や能力といった、文化的に不適切で実現不可能なことがらについての持続的な妄想(たとえば天候をコントロールできるとか、別世界の宇宙人と交信しているといったもの)。

5) 持続的な幻覚が、感傷的内容を持たない浮動性あるいは部分的な妄想や支配観念に伴って、継続的に(数週から数カ月)現れる。

6) 思考の流れに途絶や挿入があり、その結果まとまりのない話しかたをしたり、言語新作がみられたりする。

7) 興奮、常同姿勢、蟻屈症、拒絶症、鍼黙、昏迷などの緊張病性行動。

8) 著しい無気力、会話の貧困、情動的反応の鈍麻や不適切さのような、社会的引きこもりや社会的能力の低下をもたらす「陰性症状」。

9) 関心喪失、目的欠如、無為、自分のことだけに没頭する態度、社会的引きこもりなど、個人的行動の質的変化。

診断のための標準的な必要条件:上記の(1)~(4)のうち、明らかな症状が少なくとも1つ(十分に明らかでないときは2つ以上)、あるいは(5)~(9)のうち少なくとも2つ以上が、1カ月以上にわたりほとんどの期間、明らかに存在していること。

ICD10 国際疾病分類第10版より引用)

4.統合失調症の治療方法

統合失調症の治療の主体は、薬による投薬治療です。

特に、妄想や幻聴幻覚が強い場合は、投薬治療を主体とした治療が行われます。

これは、妄想や幻聴幻覚などの統合失調症に特徴的な症状が脳の神経伝達物質の1つであるドーパミンが過剰になって症状が起こっているとする「ドーパミン仮説」に基づいた治療です。

①ドーパミン仮説とは?

統合失調症では、脳の中心部(中脳辺縁系)で脳の神経伝達物質の1つであるドーパミンが過剰となり、ドーパミン神経が過剰興奮していることが幻覚や妄想といった陽性症状を引き起こしている仮説。

 

統合失調症の治療として使用される薬のほとんどは、脳の神経細胞のドーパミン受容体(ドーパミンが結合する部位)にドーパミンが結合する事をブロックする働きを持っており、この働きにより、妄想や幻聴幻覚などの陽性症状を改善させる効果を発揮します。

 

投薬治療によって、妄想や幻聴幻覚などの陽性症状が改善し、状態が落ち着いてくると、投薬治療に加え、SST(社会技能訓練)や作業療法、認知行動療法などを行い、陰性症状の改善や社会復帰のためのリハビリを行っていきます。

 

②SST(社会生活技能訓練)

数名にグループで行われる社会生活日常生活を送るうえで必要となる基礎知識を学ばせていく訓練法です。

 

例えば、買い物に行った際のレジでの受け答えの仕方や職場での人との関わり方など、日常生活社会生活の中で遭遇する状況を想定し、ロールプレイングを行い、どう対応すればよいのかを学んでいきます。

③作業療法

ゲームを行ったり、レクリエーションを行ったり、パン作りなどの物作りを通して、集団の中に入っていくこと、集団の中でのコミュニケーションを学んでいくとともに、認知機能や感情の回復を図っていきます。

④認知行動療法

妄想や幻聴幻覚の症状が改善してくると、「自分は病気である」と認識できるようになってきます。そこで、認知行動療法を実施し、妄想や幻聴幻覚などについて話し合い、病気によって起こっていた症状で現実に起こっていたことではないという意識付けを行います。

5.統合失調症の症状がみられてから回復までの経過

統合失調症は、一般的に、前兆期⇒急性期⇒消耗期⇒回復期を経て症状が安定した状態(寛解)に至ります

それぞれの時期に、どんな特徴があるのか見ていきましょう。

5-1. 前兆期

統合失調症の症状が出始めた時期の事です。

 

この時期に本人が自覚する症状として「ちょっとしたことが気になって仕方がない」「人が自分を見ているような気がする」「頭が回らない」などがあります。
この時期に病院を受診、治療を開始できれば、短い治療期間で、元の状態に戻ることができます。

5-2. 急性期

妄想や幻聴幻覚などの陽性症状が強く出ている時期で、日常生活においても社会生活においても支障が多くなり、生活自体が困難を極めます。この時期は、周囲から見ると明らかにおかしいと分かりますが、本人に病識があることはほとんどなく、受診を促しても拒否される場合が多いです。

 

ですので、治療が強制的にならざる得ないこともあり、入院治療を行う事が多い時期でもあります。

5-3. 消耗期

陽性症状が治まり、陰性症状が出現してくる時期で、無関心無気力状態となり、ボーとして1日を過ごす、1日中寝ているといった状態が起こります。

5-4. 回復期

症状が徐々に改善してくる時期で、陰性症状も改善し始め、意欲や関心が少しずつ出てきます。

この時期に、SSTや作業療法などの社会復帰を目指したリハビリ治療を投薬治療と平行して行っていきます。

早期発見、早期治療で完全かつ長期的な回復は期待できる?

統合失調症の経過について説明してきましたが、統合失調症を一度発症してしまうと、残念ながら完治(完全に病気が治り、再発も起こらない状態)することはありません。

それは、統合失調症がストレスだけによって引き起こされた病気ではなく、生まれつき持っている病気のなりやすさ(脆弱性)が基盤にあり、そこにストレスが加わることで発症する病気と言われているからです。

ですので、病気の症状が治まり、社会復帰できても、強いストレスを受けると再発してしまうことが多いです。

ですが、完治は無理でも、早い段階(できれば前兆期)で病院を受診し、治療を開始出来れば、寛解状態(病気の症状は治まり、社会復帰可能な状態)に回復する事は可能です。

6.統合失調症かな?と疑ったら:家族や周囲の方へのアドバイス

統合失調症は、治らない病気とあきらめていませんか?

前述しました通り、統合失調症は、完治は難しくても、寛解は可能な病気です。

ただそのためには、出来るだけ早く、できれば、前兆期と呼ばれる症状が出始めた時期に精神科もしくは心療内科を受診して治療を開始する事が必要となってきます。

統合失調症は、本人に病気の自覚がない場合が多いですので、家族の方が受診を促しても、受け入れてもらえないことも多いですが、家族の方のサポートなしに、病気が治ることはあり得ません。

「最近、行動がおかしい」とか「変な事を言っている」と指摘しても、本人には理解できないどころが、反対に、自分を病気にしようとしている等と不信感を抱かせてしまいますので、そのような言い方で病院への受診を促すのは逆効果です。

そういった言い方ではなく、「最近、夜、眠れていないのでは?」とか「最近、食欲が落ちているのでは?」といった具体的な不調を指摘すると上手く受診に結びつく場合が多いです。

なぜなら、こうした具体的な不調は、本人も病気かどうかは別として自覚できている場合が多いからです。「もしかして統合失調症では?」と思われたら、具体的な不調を指摘して、精神科もしくは心療内科を受診するように促しましょう。

7.まとめ

統合失調症の症状から経過、治療について説明してきました。

統合失調症では、どんな症状が起こるのか?どんな経過をたどるのか?どんな治療が行われるのか?理解できましたでしょうか?

統合失調症は治らないと諦めていた方も多かったと思いますが、統合失調症は治らない病気ではなく、治すためには早期発見・早期治療が必要ということです。

統合失調症は治らないと諦めることなく、症状が出始めた早い時期に「おかしいな?」と気づき、精神科でも心療内科でもどちらでも構いませんので、病院を受診していただき思います。

8.参考書籍および文献

(1)ICD10 国際疾病分類第10
(2)DSM-IV 精神疾患の分類と診断の手引き.医学書院.高橋三郎ら訳
(3)Janal of The Open University of Japan No27(2009) 石丸昌彦
(4)統合失調症治療ガイドライン 精神医学講座担当者会議(2008)医学書院
(5)CNS today Vol3 No3 池淵恵美
(6)統合失調症と上手に付き合うために 上島国利 共和薬品

 

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