1.鉄分の役割とは?
鉄は必須ミネラルの一つです。人間の体内には3gから4gほど存在しています。体内の鉄のうち、70%ほどは機能鉄と呼ばれ、血液や筋肉中に存在し酸素の運搬をしています。残りの30%は貯蔵鉄と呼ばれ、肝臓や骨髄に蓄えられており、機能鉄が不足した際に利用されます。
鉄分の役割で最も重要なものが「酸素の運搬」です。人間の血液の中には赤血球があり、赤血球の中にはヘモグロビンが存在しています。鉄はヘモグロビンを構成する成分です。ヘモグロビンは酸素と結合する性質を持つため、肺で取り入れられた酸素はヘモグロビンと結合し、血液に乗り全身に運ばれます。
酸素は全身の細胞が代謝する際に必要不可欠です。鉄が不足すると酸素が細胞にスムーズに運搬されず、様々な症状が現れます。
2.鉄分が不足するとどんな症状が起きる?
鉄が不足することで起きる欠乏症の代表は「鉄欠乏性貧血」です。その名の通り、鉄が不足することにより酸素の運搬が滞り、貧血症状が現れます。鉄欠乏性貧血の症状には以下のようなものがあります。
・立ちくらみ
・疲れやすくなる
・フラフラする
・倦怠感がする
・動悸、息切れがする
・免疫力が低下する(風邪を引きやすくなるなど)
人間の体内にある鉄は機能鉄と貯蔵鉄に分けられます。たとえヘモグロビンとして働いている機能鉄が少なくなっても、貯蔵鉄から補給されるため本来ならば鉄欠乏性貧血は生じません。しかし貯蔵鉄も少なくなってしまうと、十分な鉄が供給できずに鉄欠乏性貧血が生じます。「たかが貧血」と思ってしまうこともあるかもしれませんが、鉄欠乏性貧血が起きた時点で鉄不足は深刻な状態であることを理解してください。
3.女性にとって鉄分が大切な理由
鉄欠乏性貧血の最大の原因は「出血」です。例えば胃潰瘍などで出血が起きると鉄欠乏性貧血が起きます。女性の場合は生理があるため、月に1度出血をします。そのため鉄分が失われやすく、鉄欠乏性貧血を起こしやすくなります。
日本人の鉄の必要量は上記の表のようになっています。体格の問題で基本的にほとんどの栄養素は女性より男性が多く必要とします。しかし鉄だけは逆で、生理がある女性は男性よりもはるかに多い鉄が必要となります。
鉄はもともと吸収率が10%程度と吸収率が低い栄養素です。加えて女性は食事を食べる量も男性に比べて少ないため、鉄が不足しやすい傾向にあります。
4.鉄分摂取に適した食材と対策
鉄分は特に女性が意識して摂取したい栄養素です。鉄分が多い食品には以下のようなものがあります。
・豚レバー
・鶏レバー
・卵黄
・鶏ハツ
・赤貝
・しじみ
・あさり
・パセリ
・油揚げ
・がんもどき
・納豆
注意したいのが、基本的に「動物性食品に含まれている鉄のほうが吸収率が良い」ということです。鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があります。ヘム鉄はタンパク質と結合した形になっている鉄で、吸収率は15%から25%と高い水準です。一方で非ヘム鉄の吸収率は5%未満ととても低くなっています。
5.こんな時は病院へ
前述したように、鉄欠乏性貧血はその症状が現れた時点で体内の鉄不足は深刻なレベルになっています。今までは平気だった動作で動悸や息切れがする、急に立ちくらみをするようになった、疲労がなかなか取れないなどの貧血症状が出たらなるべく早めに病院で診察を受けることをおすすめします。
「貧血なら鉄分を取ればいいか」とサプリメントなどで鉄を摂取して治そうとするのは絶対にやめましょう。鉄欠乏性貧血は食事療法だけでは、ほとんど改善しません。機能鉄を回復させるとともに、貯蔵鉄も回復させる必要があるため、処方された鉄剤を服用する必要があります。安易な自己判断は避けるようにしましょう。
6.まとめ
鉄は全身に酸素を運搬する栄養素です。不足すると鉄欠乏性貧血になり、全身に不調が現れます。特に女性は鉄不足になりやすいため、鉄分を意識的に摂取する必要があります。鉄欠乏性貧血の症状が現れるということは、体内に貯蔵されている鉄も不足しているということ。この状態になると食事療法だけではよくなりません。たかが貧血と思わず、病院で治療を受けましょう。