目次
1.肺がんの治療
前回のコラムでも少し触れましたが、、病期で4期と診断された肺がんでは、基本的に手術を行うことができません。
ただし、1~3期の場合、条件付きで手術ができることがあります。術式の話になるとややこしくなってくるので、ここでは手術が適応されない4期の肺がんの治療について説明していきたいと思います。
2.組織型と遺伝子変異
2-1. 肺がんの種類、組織型
肺がんとひとことで言っても、組織型にはたくさんの種類があります。みなさんも一度は耳にしたことがあるでしょう。「腺がん」、「扁平上皮がん」、「小細胞がん」などです。いずれのがんも、たばこがリスク因子になりますが、代表的な組織型は、やはり腺がん、扁平上皮がんの2つです。
2-2. 治療前に調べる遺伝子変異
がんの組織型が分かると、次は「遺伝子検査」を行います。
別にさらに痛い思いをするわけではなくて、生検した気管支鏡検体を用いて遺伝子検査を追加していくのです。最近では血液検査で遺伝子検査を行う技術も開発されました。
なぜ、遺伝子検査なんて実施するのかというと、この肺がんが遺伝子の異常によって発がんしたものだと分かれば、遺伝子の異常に特化した抗がん剤を使えば効果テキメンになることがあるからです。
どのような遺伝子変異があるか見てみましょう。
・EGFR遺伝子変異
・ALK融合遺伝子
・ROS1融合遺伝子
うーん、アルファベットばかりで分かりにくいですね。こんな名前は覚えなくてよいので、それぞれに特化した抗がん剤があることを知ってください。
2-3. それぞれに特化した抗がん剤
具体的には、
・EGFR遺伝子変異:ゲフィチニブ(イレッサ®)、エルロチニブ(タルセバ®)、アファチニブ(ジオトリフ®)、オシメルチニブ(タグリッソ®)
・ALK融合遺伝子:クリゾチニブ(ザーコリ®)、アレクチニブ(アレセンサ®)、セリチニブ(ジカディア®)
・ROS1融合遺伝子:クリゾチニブ(ザーコリ®)
といった薬剤があります。たくさんありますね。
これら遺伝子変異がないかどうかを治療前に調べることが重要なのです。治療法が大きく変わる可能性がありますからね。
3.注目されている“免疫チェックポイント阻害剤”
近年、「免疫チェックポイント阻害剤」という新しい抗がん剤が登場しました。新聞をにぎわせている「がん免疫療法」とはこの治療法のことを指します。世の中には怪しい免疫治療もたくさん存在するので注意してください。免疫チェックポイント阻害剤とは、「ニボルマブ(オプジーボ®)」と「ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)」です。
遺伝子変異とはまったく関係なく、腫瘍細胞に「PD-L1」という物質が発現しているとこれらが効きやすいとされているのです。まったく新しい切り口の抗がん剤で、この数年で脚光を浴びました。ただ、肺がん患者さんの全員に免疫チェックポイント阻害剤が効くのかどうかはまだよくわかっていません。
4.それ以外の抗がん剤
有名な「プラチナ製剤」や「タキサン系」といった従来の抗がん剤も、まだまだよく使われています。遺伝子変異もなく、免疫チェックポイント阻害剤の恩恵も受けられない患者さんだってたくさんいるのです。そういった方々にも、強力な抗がん剤がいくつも取りそろえられてます。
もちろん、どの抗がん剤も副作用がありますから、主治医としっかりと話し合って適切な抗がん剤を選ぶのがよいと思います。
5.まとめ
・4期の肺がんは抗がん剤治療の適応である。
・遺伝子に特化した抗がん剤がある。
・免疫チェックポイント阻害剤という新しい抗がん剤がある。