片頭痛の治療薬「レルパックス錠」の効果と使い方

片頭痛は特に若い女性に多く見られる病気です。今回紹介する薬である「レルパックス」は、片頭痛治療で重要な「トリプタン系」というグループに属します。

そのため、適切に使用すれば有益ですが、一方で適切に使用しない場合には様々な問題が生じえます。

このコラムでは、薬の恩恵を最大限に受けつつ、問題点を回避するうえで必要な知識を紹介します。
※この情報は、2018年8月時点のものです。

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1.片頭痛とは

片頭痛。誰しも一度は耳にしたことがある病名でしょう。ちなみに「偏頭痛」と書かれていることもありますが、指している病気は同じものです。

 

ただし、厳密にいえば「片頭痛」が正式な標記なので、以後はこちらの書き方に統一します。この病気は、代表的な一次性頭痛の原因です。

 

たった今書いた「一次性」とは、他の病気によらないものという意味です。これに対して、何らかの別の病気があるために生じる頭痛が「二次性頭痛」です。例えば、頭部に腫瘍があるとか、頭の血管から血が出ている場合に起こるが、二次性頭痛です。

 

「片」という漢字が使われていることから連想できるように、この病気の名前は頭の片方が痛むことに由来します。

 

しかしながら、実際には頭全体が痛む片頭痛も多いことが、現在では分かっています。その他の特徴としては、痛みが拍動性であることが挙げられます。「拍動性」とは、心臓の鼓動とリンクしていることを指します。また、頭痛と同時に吐き気がしたり、音や光に対して過敏になる例があります (1)。

 

片頭痛の発作が起こるのに先立って、前兆が表れることがあります。これは多くの場合は、何らかの感覚の異常です。典型的には視覚に関連したもので、例えばキラキラした何かが見えるなどです。逆に、一時的に目が見えにくくなったように感じる場合もあります。こうした前兆があるかないかは、人によって異なります。

 

片頭痛の起こる仕組み

このように、単純に頭が痛む他にも特徴的な症状が見られる片頭痛ですが、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。その仕組みについては完全に解明されたわけではありませんが、いくつかの有力な仮説があります。

 

その一つが、脳における「セロトニン」という物質が片頭痛に関係するというものです (2, 3)。具体的には、次のような過程を経ると考えられています。

 

まず何らかのきっかけで、脳の血管にセロトニンがたくさん放出されます。セロトニンには血管を収縮させる効果があるので、脳の血管は縮こまり、一時的に血流が悪くなります。その後しばらくすると、セロトニンが分解されて、量が減ってきます。これまで血管を収縮させていた物質がなくなるので、今度は反対に血管が拡張します。これが引き金となって、血管に炎症を起こす物質が作られ、頭痛を生じる。こうした流れです。

 

2.レルパックスをはじめとしたトリプタン系とはどのような薬か

2-1. 不足したセロトニンのはたらきを補う

以上の仮説を理解すれば、片頭痛を抑えるためのポイントが見えてきます。そのうちの一つが、セロトニンが分解された結果として、血管が拡張するステップです。ここをブロックしてやれば、その後に続く血管の炎症を起きないようにすることができるからです。このような発想で作られたのが「トリプタン系」と呼ばれる、医薬品のグループです。今回のテーマであるレルパックスも、トリプタン系薬剤の一種です。

 

ちなみに、「トリプタン系」とは薬の成分名の最後に「トリプタン」が共通してつくことから来ています。「レルパックス」は薬の商品名で、成分名は「エレトリプタン」です。

 

トリプタン系薬剤は、セロトニンの化学構造を模して造られています。化学構造の類似した物質は、体内で同じようなはたらきを示すことが多いのが特徴です。

 

そのため、トリプタン系薬剤を使用すると、セロトニンの枯渇によって起こった脳血管の拡張を抑えることができます。これによって片頭痛の発作を抑制します (4)。つまりが、不足したセロトニンのはたらきを人工的に補ってやる薬です。

 

 

2-2. 発作初期に飲むのが効果的

レルパックスを含めたトリプタン系薬剤には、治療において重要な特徴があります。それは、片頭痛の発作が起きたらできるだけ早く使用した方が効果的であることです (5, 6)。

 

この理由は明らかでないものの、さきほど述べた片頭痛が起きる仕組みを考えれば、納得できると思います。というのも、セロトニンがなくなって血管が拡張すると、その後に血管の炎症が起きると書きました。事態がここまで進行してしまってからでは、もはや薬を使っても遅い。こう考えられるわけです。

 

レルパックスに関していえば、通常は1回に1錠を服用します (7)。そのため、「片頭痛の発作が来たな」と感じたらできるだけすみやかに1錠を飲む。これが重要です。すでに述べたように、片頭痛の発作では、吐き気を伴うこともあります。こうなると、薬を飲むこと自体が現実的に難しくなりますから、そうした状況を避ける意味でも早めに使用することが肝要です。

 

ところで、さきほど人によっては片頭痛発作に前兆があると書きました。であれば、この前兆のタイミングでトリプタンを使用しておけば、痛くなる前に予防ができるのでは?と考えた方がおられるかもしれません。しかし、残念ながら前兆の段階では、使ってもあまり効果がないと考えられています (8)。これはレルパックスに限った話ではなく、他のトリプタンでも概ね同様の傾向だと推定されています (9)。

 

 

2-3. 持病やほかの薬との飲み合わせに注意

ここまでに述べたように、レルパックスをはじめとしたトリプタン系薬剤の効果の中心は、端的にいえば血管を収縮させることにあります。片頭痛においては、これが症状緩和に役立つこともすでに述べた通りです。一方で、身体の他の部位にとっては、こうした作用がマイナスになるケースがあります。

 

血管が収縮すると、それが通っている臓器や組織に向かう血液の量が減少します。この影響を受けやすいのが、心臓と脳の血管です。これらの部位の血管は、動脈硬化などの原因で血流が途絶え、結果的に臓器の一部が壊死することが比較的よくあります。いわゆる、心筋梗塞と脳卒中です。過去にこうした病気を起こした人がトリプタンを使用すると、同様の病気や症状を起こしやすいと考えられます。そのため、そうした人には使用できません (7)。

 

同じメカニズムによって使用を制限される可能性があるのが、高血圧の人です。血管が収縮すると、より強い圧力をかけないと血が流れなくなります。血圧とは簡単にいえば心臓が血液を押し出すときの圧力ですから、血管の収縮により血圧は上昇します。よって、高血圧の程度によってはトリプタンを使用できないことがあり得ます (7)。

 

その他、トリプタン系の薬剤には、一緒に使ってはいけない、または使わない方がよい薬がいくつかあります。いわゆる、飲み合わせに注意する必要があるということです。身体の中に入った薬の成分は、主に肝臓で代謝を受けて、解毒されます。この代謝の経路はいろいろなパターンがあるのですが、トリプタンのそれは他の薬と重複するものが多く、結果的に薬の解毒が遅れることが起こりがちです。具体的にどの薬がまずいかについては、トリプタンの種類によっても異なるので、その都度主治医か薬剤師の指示を受けてください。

 

 

2-4. 重い副作用はまれ

このように、トリプタンには使わない方がよい人や状況が比較的多くあります。一方で、副作用ではあまり大きな問題となることがありません。頻度が高いものはめまい、吐き気、眠気など軽いものが大半です (7, 10, 11)。

 

3.薬剤乱用頭痛とは

重い副作用は少ないと聞くと、だったら遠慮なくガンガン使っていけばよいだろう、と考える方もいると思います。しかし、これは2つの理由から推奨できません。

 

1つ目は、経済的な負担です。レルパックスをはじめとしたトリプタン系の薬剤は、一般的に薬価が高額です。したがって、不必要に使いまくっていると、それに伴う薬代の支払いが無視できない金額になりがちです。ともあれ、こちらはどちらかといえば補助的な理由となります。

 

過度なトリプタンの使用を勧めない、より本質的な理由は「薬剤乱用頭痛」の存在です。「乱用」と聞くと、例えば覚せい剤などの違法薬物を連想するかもしれません。しかし、ここではそうした意味合いではなく、本人も自覚がないうちに頭痛薬を使いすぎたために起こった頭痛、といったニュアンスです。そう、皮肉にも頭痛を抑えるために使った薬のせいで、さらなる頭痛を起こすことが、実際にあるのです。

 

どうして頭痛薬を使いすぎると、逆に頭が痛くなるのか。これについては、薬剤乱用頭痛という概念が知られるようになってまだそれほど時間が経っていないこともあり、不明な点が多いのが現状です。ちなみに、薬剤乱用頭痛は、トリプタン以外の薬、例えば市販の頭痛薬でも起こります。

 

ここでの「使いすぎ」とは、具体的にどのくらいのことなのか。この定義については、必ずしも明確でなく、時代とともに少しずつ修正されてきています (1)。しかしながら、現時点では「3カ月以上にわたって、月に10~15日使う」のが一つの基準となっています (1)。今、「10~15日」と幅がある書き方をしたのは、薬の種類によって線引きの仕方が異なるからです。ともあれ、月あたりの回数だとイメージがわきにくいと思います。これを週単位に変換すれば、毎週およそ2~3になります。

 

薬剤乱用頭痛の治療の基本は、原因となっている薬を止めることです。具体的な止め方、つまり一気に中止するのがよいのか、徐々に減らした方がよいのか、については今のところ確定しておらず、専門家の間でも意見が分かれています。原因となっている薬を止めると、一時的に頭痛が悪化するのが普通です。これを「反跳頭痛」といい、通常1週間ほど続きます。しかし、トリプタンが原因となっている薬剤乱用頭痛の場合は、他の薬と比べて短期間で反跳痛が治まる可能があることが示されています (12)。いずれにしても、1週間程度が過ぎれば、徐々に頭痛がよくなってくるということですから、実際の治療に際してはこうしたことを念頭に、主治医等の指示に従ってください。

 

レルパックスなどのトリプタン系薬剤は、片頭痛の発作が起こったときに使用し、これを和らげることを目的にしたものでした。つまり、必要な時だけ使う薬です。一方で、片頭痛には予防薬もあります。こちらは発作の有無にかかわらず使用することで、発作自体を起こりにくくすることが目的です。薬剤乱用頭痛の存在を考慮すれば、慢性的に続く片頭痛の場合は、こうした予防薬を使うことで、トリプタンなどの使用回数を減らす治療を考慮したほうがいいでしょう。予防薬にはいろいろな種類がありますが、このコラムの範囲を超えますので、詳細は割愛します。

 

 

頭痛ダイアリーを活用する

薬剤乱用頭痛と関連して、便利なツールを一つ紹介します。「頭痛ダイアリー」というもので、一定期間の頭痛の回数・強さ・そのとき使った薬の情報などを書き込んでおけるものです。名前をインターネット検索すればすぐに見つかり、そのままプリントアウトして使うことができます。

 

これをきちんとつけておけば、薬の使用回数が分かるので、薬剤乱用頭痛を起こすほどのものなのかなどの判断がしやすくなります。また、それとは無関係に発作の起き方に傾向性があるのか、今行っている治療が上手くいっているのか、などの参考にもなります。頭痛治療を受けている方には、負担にならない範囲でつけていただければ、役に立つでしょう。

 

4.まとめ

レルパックスを含めたトリプタン系薬剤は、他の薬を比較しても使い方や使える人に制約が多いといえます。このコラムでは一般的な内容をまとめましたが、治療には例外がつきものですから、実際にこの薬を使う場合は担当の医療者からの指示をしっかりと守ることが大切です。

 

■レルパックスは、脳血管において不足したセロトニンのはたらきを補う薬である

■片頭痛の発作が起きたときに、できるだけ早く飲むと効果が高い

■血管を収縮させるので、特定の持病がある人は使えない

■頭痛薬を使いすぎると、それが原因で逆に頭が痛くなることがある

■頭痛ダイアリーは、片頭痛を含めた頭痛の治療に役立つ

 

参考文献

 

  1. 日本頭痛学会 慢性頭痛の診療ガイドライン2013
  2. Chugani DC, et al. Neurology. 1999 Oct 22;53(7):1473-9. PMID: 10534254
  3. Nagata E, et al. Headache. 2006 Apr;46(4):592-6. PMID: 16643553
  4. Sheftell F, et al. Headache. 2003 Mar;43(3):202-13. PMID: 12603638
  5. D’Amico D, et al, Expert Rev Neurother. 2006 Jul;6(7):1087-97. PMID: 16831121
  6. Moschiano F, et al. Neurol Sci. 2005 May;26 Suppl 2:s108-10. PMID: 15926006
  7. レルパックス錠 添付文書 ファイザー株式会社
  8. Olesen J, et al. Eur J Neurol. 2004 Oct;11(10):671-7. PMID: 15469451
  9. Aurora SK, et al. Headache. 2009 Jul;49(7):1001-4. PMID: 19438735
  10. Dodick DW, Headache. 2001 May;41(5):449-55. PMID: 11380642
  11. MacGregor EA, et al. Headache. 2009 Oct;49(9):1298-314. PMID: 19788471
執筆
薬剤師:黒田 真生
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