全身に様々な症状を引き起こす難病「ミトコンドリア病」~そのすべて~

ミトコンドリア病とは、私たちの細胞内に数多く存在する「ミトコンドリア」に異常が生じる病気です。難病にも指定されており、脳や骨格筋、心筋など全身の様々な部位に症状を引き起こします。

日本国内では約1000人がミトコンドリア病と認定されており、非常に珍しい病気ですが、正確な診断が下されていないミトコンドリア病の人が大勢いると推測されています。

ここでは、ミトコンドリア病の症状や治療法、注意すべき点について詳しく解説します。
※この情報は、2018年6月時点のものです。

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1.ミトコンドリアとは?

成人の体は約60兆個の細胞からできていますが、この一つ一つの細胞の中には、「細胞小器官」と呼ばれる様々な構造が含まれています。細胞小器官は、細胞を維持するために様々な働きをしますが、ミトコンドリアも細胞小器官の一つです。

では、ミトコンドリアはどのような特徴と働きを持つのでしょうか?詳しく見てみましょう。

 

1-1. ミトコンドリアの特徴

ミトコンドリアは様々な細胞小器官の中でも非常に複雑な構造をしており、内部に独自のDNAを保持して分裂と増殖を繰り返します。

特に脳や筋肉などエネルギーを多く必要とする細胞に多く含まれており、平均すると一つの細胞の中に300個のミトコンドリアが存在します。全体重の約10%はミトコンドリアで占められると考えられており、人の体の中でも重要な構造であるといえます。

 

1-2. ミトコンドリアの働き

ミトコンドリアの働きは大きく分けて3つあります。

 

①エネルギーの産生

ミトコンドリアは、十分な酸素がある状態で、食事によって体内に取り入れられたブドウ糖をATPと呼ばれるエネルギーに変える働きを持ちます。酸素が十分でない状態では1つのブドウ糖から2つのATPしか生成されないのに対し、ミトコンドリアでは38個のATPが生成されます。

 

②アポトーシス

アポトーシスとは、新しい細胞を作り出すために古くなった細胞や機能を果たさない細胞を死に追いやる働きのことです。つまり、新陳代謝に必要な「細胞死」がアポトーシスであり、私たちの体内で作られたがん細胞の多くはアポトーシスによって排除されていると考えられています。

 

ミトコンドリアは、このアポトーシスを積極的に促す作用があり、正常で新しい細胞を作り出すために必要な小器官でもあるのです。

 

③カルシウムの貯蔵

私たちの細胞の中には様々なイオンが存在し、その中でもカルシウムイオンは筋肉運動や神経の興奮伝達などに重要な役割を果たしています。

ミトコンドリアは、一時的にカルシウムを貯蔵する働きがあり、細胞内のカルシウム濃度を一定に保つ働きを持っています。

 

④その他の働き

これらの働き以外にも、ミトコンドリアには活性酸素の産生や感染症の制御、鉄分の合成など様々な働きが知られています。

 

2.ミトコンドリア病とは?

ミトコンドリアは全身の細胞に広く分布していますが、ミトコンドリア病はこれらすべてのミトコンドリアに異常が生じるのではなく、限られた部位に分布するミトコンドリアのみに異常が生じることがほとんどです。このため、症状が現れるのもミトコンドリアに異常が現れる部位であるのが特徴です。

ミトコンドリア病は、特にエネルギーを多く要する脳や心臓、骨格筋に生じやすく、症状もそれぞれ異なります。

 

2-1. ミトコンドリア病の原因

ミトコンドリア病は遺伝子の変異によって引き起こされます。遺伝子の変異は通常のDNAに生じている場合と、ミトコンドリア独自のDNAに変異があるものに分けられます。

通常のDNAの変異の多くは常染色体劣性遺伝であり、ミトコンドリアDNAの変異は母親からの遺伝の影響を強く受けると考えられており、ミトコンドリア病は遺伝性がある病気なのです。

 

2-2. ミトコンドリア病の症状

ミトコンドリア病はミトコンドリアが正常な働きをせず、エネルギーが不足することによって様々な症状を引き起こします。症状はどの部位にミトコンドリアの異常が生じているかで大きく異なります。

発症する部位によって、それぞれ次のような症状が引き起こされます。

 

・脳:けいれん、知能低下、頭痛、精神症状、一過性麻痺、しびれ

・心臓:心筋症、心肥大、不整脈

・筋肉:筋力低下、疲れやすさ、筋肉の萎縮

・大腸・小腸:便秘、下痢

・膵臓:糖尿病、膵液分泌低下

・皮膚:発汗低下、多毛

・耳:難聴

・腎臓:腎不全

・肝臓:肝機能異常、肝不全

・内分泌腺:低身長、低カルシウム血症

・血液:貧血、汎血球減

 

このように、ミトコンドリア病は非常に多様な症状を引き起こす可能性があり、症状の程度も重症なものから日常生活にほとんど影響を及ぼさない軽度なものまで様々です。

 

2-3. 代表的なミトコンドリア病

ミトコンドリア病は全身に様々な症状を引き起こす可能性がありますが、主に症状が生じるのはミトコンドリアが多く存在する脳、心臓、筋肉です。

ミトコンドリア病には3つの代表的な病型があり、三大病型とされていますが、それぞれの特徴は以下の通りです。

 

①CPEO(慢性進行性外眼筋麻痺症候群)

ミトコンドリアDNAの一部が欠損しているもので、発症年齢は10~20歳です。外眼筋の麻痺から始まり、不整脈や視野障害などが生じます。

 

②MELAS(ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様症候群)

最も多いミトコンドリア病ですが、ミトコンドリア遺伝子の変異によって生じます。発症年齢は2~15歳で、頭痛や嘔吐から始まり、筋力低下や麻痺などの脳卒中に類似した発作やけいれんを生じます。平均して発病してからの生存期間は6年とされています。

 

③MERRF(赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群)

ミトコンドリアDNAの変異によって生じます。発症年齢は小児から40歳台と幅広く、てんかんから始まり、けいれん発作や筋力低下、知的障害を生じ、半数近くで心筋症を合併します。

 

2-4. ミトコンドリア病の検査

ミトコンドリア病を診断するには、種々の身体所見だけでなく血液検査、髄液検査、画像所見、生検などの検査が必要になります。

 

①血液検査、髄液検査

ミトコンドリア病では血液と髄液中の乳酸やピルビン酸、CKの上昇が見られます。特に髄液中の乳酸は正常の2倍以上であることが多く、特徴的な所見の一つです。

 

②画像検査

MERASやMERRFなどのように脳のミトコンドリアに異常が生じるタイプのミトコンドリア病ではCTやMRIで脳に梗塞巣が多数見られます。

 

③生検

筋肉や肝臓の組織の一部を採取して、顕微鏡で観察する病理検査のことですが、確定診断を行うために必須の検査です。

生検では、ミトコンドリア酵素の欠損が見られ、骨格筋には「赤ぼろ線維」と呼ばれる異常なミトコンドリアが赤く染まった像が確認できます。

 

2-5. ミトコンドリア病の治療

ミトコンドリア病を根本的に治す方法はなく、ミトコンドリア病で生じる様々な症状を改善するための対症療法を行うことしかできません。

例えば、てんかんには抗てんかん薬、不整脈にはペースメーカー、糖尿病にはインスリンや血糖降下薬の投与などが必要に応じて行われます。

また、近年ではミトコンドリアの機能を向上させるため、ビタミン類やアミノ酸の投与が有効であることがわかりつつあり、今後の治療への応用が期待されています。

 

3.ミトコンドリア病になったら…?

現在、日本では約1000人がミトコンドリア病と認定されています。しかし、認定を受けるための診断基準は極めて厳密であり、実際には非常に軽度な症状のみで日常生活を特に問題なく過ごしている人が大勢いると考えられています。

 

糖尿病患者の1%はミトコンドリア病によるものであるとの報告もあり、潜在的な患者数は登録されている患者数よりもはるかに多いことが予想されます。

 

では、ミトコンドリア病になったら、どのようなことに注意すればよいのでしょうか?

 

3-1. 食生活

ミトコンドリアは食事から取り込んだブドウ糖をエネルギーに換える働きを持つため、食生活を改善し、ミトコンドリアに負担がかからないように注意が必要です。

三食きちんと摂る、暴飲暴食や極端なダイエットは避ける、栄養バランスを取ることなどを心がけましょう。

 

3-2. 十分な休息

ミトコンドリア病を発症すると、疲れやすく、細菌やウイルス感染を起こしやすくなります。このため、日常生活では無理をせずにしっかりと休息を取って適度な体力を維持することが必要です。

 

また、早寝早起きをこころがけ、規則正しい生活を送りましょう。

 

4.まとめ

私たちの細胞にあるミトコンドリアは非常に重要な役割を持ち、このミトコンドリアに異常が生じたものをミトコンドリア病と呼びます。

 

ミトコンドリア病は発症部位によって症状が大きく異なり、生死に関わる重篤な症状が引き起こされるものもあれば、軽度な症状のみで気づかれないものまで様々です。

 

しかし、いずれの場合でもミトコンドリア病は完治させるための治療法がなく、生活習慣を改善しながら対処療法を続けるしかありません。何かしらの症状に困っている場合には、病院を受診するとともに、ここで挙げた生活習慣改善を試みましょう。

執筆
医師:ママさん女医あっきー
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