【医師が高山病予防を解説】ダイアモックスの活用で、旅を楽しく安全に!山酔い、標高対策

近年、国内でも富士山や北アルプスへの登山が日本人に加え、外国人観光客にも人気です。海外旅行でも標高の高い場所に行かれる方が増え、気軽に行きやすい一方で、現地で山酔いなどの「高山病」になり、目的地に行けなかったという方もいます。

「高山病」については、『登山・旅行時の高山病対策 高山病に効果が期待できる薬・市販薬を薬剤師が徹底解説』にも詳しく記載されていますので併せてご覧頂きたいです。

私は、自分自身が行う「海外旅行外来(リゾート・トラベル外来)」での診療を通し、高山地帯への旅での頻度が高く、ご相談も多い「山酔い」を中心にご説明をさせて頂きたいと思います。
※この情報は、2018年1月時点のものです。

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1.高山病になりやすい場所とは?意外な場所も。

富士山は、2017年7~9月の約2ヶ月間で28.5万人が登山し、外国人観光客からの人気も高い観光地です。日本人が、観光でよく訪れ、私の外来でも訪問される方が多い「高山地帯の一例」を標高が高い順に書かせて頂きます。

 

・ハワイ島(マウナケア山:4,250m)

・キリマンジャロ(タンザニア:4,000m)

・マッターホルン展望台(スイス:3,883m)

・エギュー・ド・ミディ展望台(シャモニー、フランス:3,842m)

・チチカカ湖(ペルー:3,825m)

・富士山山頂(日本3,776m)

・ウユニ湖(ボリビア:3,650m)

・ラパス(ボリビア:3,600m)

・ユウングフラウヨッホ展望台(スイス:3,454m)

・クスコ(ペルー:3,400m)

・マチュピチュ遺跡(ペルー:2,400m)

・九塞溝(中国:約2,000m)

 

普段は、登山をする趣味がない方でも、「富士山」とほぼ同じか、それ以上の標高の場所に、

ツアーなどを活用すれば、バスや飛行機で気軽に訪問することが出来ます。「高山病」は登山者だけに発生する訳ではなく、高山地帯に旅をする人にとって大きな問題となってきます。

 

2.山酔いについて

2-1. 「山酔い」とは何か?

「山酔い」は「高山病(①山酔い②高地肺水腫③高地脳浮腫)」の一種です。「山酔い」を発生した後に、さらに重症な「高地肺水腫や高地脳浮腫」に進む可能性があります。「山酔い」自体は、標高を下げれば症状が無くなるという特徴があります。

 

2-2. 「山酔い」の症状とは?

標高が高い場所で、「頭痛」を主症状として、「だるさ、めまい、立ちくらみ、食欲低下、吐き気、寝つきが悪い」など、二日酔いに似ています。

 

言葉で説明すると簡単に感じるかもしれませんが、実際の現場では、風邪の初期症状や時差ボケ、旅の疲れと区別がつきにくいこともあります。「山酔い」の段階では命の危険は無いとしても、めまいや立ちくらみがきっかけで転倒し、怪我や事故を起こす恐れもあります。

 

「山酔いでは死なないから、大丈夫(気を付ける必要が無い)」という考え方は危険でしょう。

 

2-3. ナゼ「山で酔う」のか?

標高2,000m以上の土地では、酸素が薄く、呼吸数が増加し、尿量も増加するため、血液が凝縮され、脱水気味になります。脳や全身の臓器が低酸素状態に曝された結果「酔った」様に感じるため、「山酔い」と呼ばれています。

 

3.そもそも「高山病」の頻度は・・??

人体が山など高所の低圧低酸素状態にさらされることで、発症するのが「高山病」です。症状の程度は、「個人の体調、標高、登頂速度、気象条件」などによって異なります。「以前同じ場所を訪問したが、大丈夫だったから、今回も大丈夫」と言い切ることも出来ません。

 

「高山病」は、「標高2,000~3,000mで約25%の人が頭痛などの症状を呈した」という海外での研究報告があり、頻度は比較的高いと言えます。高齢者では標高約1,500mでも発症する可能性がある一方、20代の死亡例も報告されています。

 

症状の程度も異なり、発症した人が必ず山岳診療所などを受診するわけでも無く、正確な実数や頻度を把握することは難しいです。基本的には年齢を問わず全ての人に起こり得ると考えるべきでしょう。

4.「高山病」の実は長~い歴史?

はるか昔中国の漢の時代頃、「高山地帯に行くと頭痛がし、下山すると軽快する」という記録や日本国内では、富士山登山が一般人の間でも可能になった鎌倉時代頃から発生していたようです。

高山地帯での体調不良すなわち「高山病」の現象や症状は知られており、比較的古い病気とも言えます。1913年英国人医師「Thomas Holmes Ravenhil」が高山病を研究し、「高地肺水腫」や「高地脳浮腫」という現代に続く分類を行いました。

 

5.海外旅行と高山病の傾向?

私自身が行っている海外旅行外来で近年、若年者と高齢者の「南米」への旅行者が年間を通じて増えていると感じています。大学生など若年者では、「身軽なバックパック旅行」、高齢者では「団体ツアー旅行」が多い傾向があります。

 

テレビや雑誌の現地特集番組などを観て感動したことや、日本からは地球の裏側にあたり、なかなか旅行しにくい場所であるため、一生に一度は訪れてみたいと考える方が多いようです。

 

日本からの南米ツアーでは、一般的に「日本を出発後に米国都市で1回乗り継ぎ、リマ(ペルー)に向かう。リマを起点とし、南米各地」に向かうことが多いようです。

 

日本出国から全行程が「9~11日」程度で、一般的な日本人にとって休暇を取りやすい(旅行しやすい)日数でスケジュールが組まれています。

 

日本と現地では12~13時間もの時差があることや空港での乗り継ぎ、旅程がタイトで移動が多く疲れやすいことも、「山酔い」はじめ「高山病」の一因になっているのではないかと考えています。

 

6.高山病対策について

6-1. 旅行会社任せに出来る訳でもない?「高山病」対策?

 国内旅行だけでなく海外旅行でもインターネットを活用して、航空券や宿泊施設を予約する方が増えています。マチュピチュ遺跡(標高2,400m)など世界遺産への旅では、セスナ飛行機をチャーターするなど手続きが煩雑であることや限られた時間の中で効率良く旅をするために、旅行会社主催のツアーに参加する方法が一般的かもしれません。

 

 予防薬ふくめ、「高山病」対策の重要性を丁寧に説明してくれる旅行会社もあれば、旅程表の中に「高山病」への注意事項を記載するだけの旅行会社もあります。

 

 実際に、旅行直前になって、「高山病の怖さ」を知り、当院を慌てて受診される方もいます。

 

旅行代金やスケジュールなども異なり、旅行会社を選びにくい点もあるでしょう。「高山病」予防をふくめ、旅の健康管理は旅行会社任せではなく、旅行する方一人ひとりが自分自身の問題として、捉えて対策をとる必要があります。

 

6-2. (注意)高山病に効果がある?「コカ茶」とは何?

南米(ペルーやボリビアなどアンデス地方)では、昔から高山病予防に効果があるとして「コカ茶(マテ・デ・コカmate de coca)」を飲用する文化があります。南米原産の樹木コカの葉に熱い湯を注いで飲む方法に加え、ティーバックとして、街中でも市販されています<現地での飲用は合法>。

 

「コカ茶の覚醒作用が高山病に効果がある」とも言われていますが、医学的根拠は不明です。胃腸などの働きを抑え、「お腹を下す」場合もあり、注意が必要と考えています。

 

 さらに注意しなければならないのは「コカ」の葉を抽出精製した物が、麻薬である「コカイン」ということです。

 

日本をはじめ世界の多くでは、コカの木・葉を含め、全て麻薬・麻薬原料植物とされており、栽培・持ち込み・流通は厳しく規制されています。たとえ、お土産品であったとしても「コカ茶」や加工品を日本や米国などに持ち込むと、処罰の対象となります。

 

アンデス文明では、はるか昔から、薬や儀式などに伝統的に「コカ」が使われてきたことは事実であっても、諸外国では規制の対象となることを決して忘れてはいけません。

 

6-3. 高山病予防薬「ダイアモックス」は効果があるか?

 「高山病」の予防薬として、国際的に「ダイアモックス(一般名:アセタゾラミドAcetazolamide)」が推奨されています。「脳の血管を広げ、血流を増やし、脳の低酸素状態を改善する作用」、「呼吸中枢を刺激し、呼吸回数を増やし、血液の中の酸素濃度を高める作用」から、「高山病」対策に効果を発揮します。

 

一般には「緑内障、てんかん、メニエール病、睡眠時無呼吸症候群」などで使用されますが、全ての医療機関で処方出来るわけではなく、健康保険の適応にもなりません(自費診療扱い)。「高山病」は、「高山地帯を訪問することで生じる(日常生活では起こりえない)」ので、一般の病気治療と同列に扱うことは出来ません。

 

 内服方法も旅程との調整、他の内服薬との兼ね合いなど一人一人異なるため、旅行医学や渡航医学、登山医学を学んだ医師から、きちんと説明を受けた上で処方を受ける方が良いでしょう。

 

 「ダイアモックス」は、(剤形や量は異なりますが)高山病治療にも使用されますが、「魔法薬や万能薬」ではなく、「どんな高所に行っても問題無い」と油断することは危険です。

 

「内服しても症状が悪化するようなら、下山する」、さらに「高山病ではない別な病気の可能性」もあるため、ガイドや添乗員への相談、現地の医療機関を受診した方が良い場合もあります。

 

 私自身は、高山病予防としての「ダイアモックス」を処方する場合、「高山病での生命の危険を回避する薬」という認識よりも、「旅を安全かつ楽しく、旅程通りに遂行するためのお薬と考えて下さい」と受診される方にご説明するように心がけています。

 

自費診療の薬と言っても「お薬代は3,500円程度(旅程などでも異なる)」で、旅行代金に比べればごくわずかな値段です。高山地帯への旅の度に受診される方も多いです。現地の売店などで「高山病に効く」と称するお薬が販売されていることもあります。効果のほどは不明な上、「偽薬の可能性」や「副作用の有無」なども注意する必要があります。特殊な場合を除いて、予め日本で準備をする方が賢明と言えるでしょう。

 

7.おわりに

 以前は、主に登山愛好者が訪問していた世界各地の高山地帯にも、一般の方が気軽にツアーなどで訪問出来るようになりました。「高山病」の中でも「山酔い」は命に直接関わることは無くても、怪我や事故の原因にもなります。

 

「旅を安全かつ楽しく、旅程通りに遂行すること」はとても重要で、高山病予防薬「ダイアモックス」を活用して頂きたいと思います。予防薬であることから、原則として「海外旅行外来」などを行う医療機関だけでの処方になりますが、持病や持病薬がある方が高山地帯を旅行する際の事前アドバイスや旅行全体の健康相談も出来るため、上手に活用し、楽しい旅をして頂きたいと考えています。

執筆
医師:倉田大輔
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