1.ウイルス性感染症のおたふくかぜの特徴
おたふくかぜの原因は「ムンプスウイルス」というウイルスです。ウイルス性の感染症であり、接触感染や飛沫感染をするため、人の多い場所では感染するリスクが高まります。10-12歳くらいまでの子どもの感染者が多く、保育園や幼稚園、小学校などの人の多い場所に行き始める年齢から発症者が増え始めます。免疫力が弱いうちは感染しやすいため、特に保育園や幼稚園に通っている4歳未満の幼児にはおたふくかぜの発症者が多いです。
一方で、大人の場合も駅や会社など不特定多数の人間が多い場所で感染するリスクはあります。ただしおたふくかぜは一回感染すれば(小さいうちに発症していれば)抗体ができるため、2回目の感染の可能性はほとんどないこと、そもそも大人は子どもと比べ免疫力が高いため感染しづらいことなどの理由で発症者は少ない傾向にあります。
ムンプスウイルスにはワクチンがあります。そのため予防接種を行えばおたふくかぜの発症をほぼ防ぐことができます。ただしムンプスウイルスワクチンの接種で「無菌性髄膜炎」を発症するリスクも存在するため、日本では任意となっています。無菌性髄膜炎を発症するリスクは数千人から1万人に1人と非常に稀ですが、日本でのムンプスウイルスワクチンの定期接種の実施の大きな妨げになっています。
2.重症化しやすい大人のおたふくかぜ
子どものおたふくかぜの場合、感染から2-3週間の潜伏期間ののち、1-2週間ほど耳下腺の腫れや発熱が続きます。これらの症状は軽度なものであることがほとんどで、しっかりと安静にして栄養補給をしていれば快癒します。
一方、大人のおたふくかぜでは、症状自体はほぼ同じですが、子どもと比べて重症化しやすい傾向にあります。子どものおたふくかぜの場合は38度程度の発熱をすることがほとんどですが、大人の場合は39度を超える発熱となりやすく、また耳下腺の腫れも大きくなりやすいです。特に口を開けたり咀嚼したりするだけでも痛みが現れることもあり、水分補給や栄養補給に支障が出ることもあります。
大人の場合、おたふくかぜの合併症も起こりやすくなります。男性ならば精巣炎、女性ならば卵巣炎と生殖器の炎症が生じることがあります。特に男性の精巣炎は症状が長く続くと無精子症など不妊のリスクが高まってしまいます。女性の場合は妊娠中のムンプスウイルスへの感染で流産する可能性が高まります。
男女に共通する合併症として「無菌性髄膜炎」があります。ウイルスにより髄膜に炎症が発生し、発熱や頭痛、吐き気などの症状が生じます。成人ではおたふくかぜ発症者の10%に発症し、さらに0.5%未満の非常に稀な確率ですが脳炎を合併することがあります。合併症として脳炎を発症する確率は非常に低いですが、致死率は1-1.5%と比較的高いものとなっています。
そのほか難聴や膵炎といった合併症を生じる可能性もあります。
3.おたふくかぜを予防するには免疫力を高めることが重要
成人がおたふくかぜを予防するためには免疫力を高めることが重要です。仕事のストレスや疲労、睡眠不足、栄養不足などの要因により免疫力は簡単に下がってしまいます。規則正しい生活や十分な栄養、睡眠を取って免疫力を下げないようにしましょう。
特にストレスは免疫力を低下させる大きな要因です。スポーツや読書、カラオケなどストレスを発散できる趣味を見つけて、ストレスをこまめに解消するようにすることが重要です。
またおたふくかぜは基本的に1度罹患したら再度発症することはありません。両親に子どものころおたふくかぜに罹ったことがあるかどうか確認することも重要です。もしおたふくかぜに罹ったことがなければ成人してから予防接種することも重要です。体の中にムンプスウイルスへの抗体があるかどうかは血液検査で知ることができるため、気になるならば行ってみるのもよいでしょう。
成人のおたふくかぜは重症化しやすいため、早期に発見をして治療することが重要です。高熱や顔の腫れなどの症状が現れたらすぐに病院で診察を受けるようにしましょう。
4.まとめ
おたふくかぜは子どもに多い病気ですが、成人でも発症することがあります。成人で発症した場合、重症化しやすく重篤な合併症も起きやすくなります。おたふくかぜは体内に抗体があればほぼ予防することができます。小さいころに発症していたり、予防接種をしたりしていれば抗体がある可能性が高いです。
おたふくかぜを予防するには免疫力を高めることが重要です。また抗体があるかどうかを確認することも重要なので、おたふくかぜに罹ったことがあるか、予防接種を受けたことがあるかは確認したほうがよいでしょう。また高熱や顔の腫れなどおたふくかぜの初期症状が見られるならば早めに病院に行くことも重要です。