診断基準の改正で増加「妊娠糖尿病」。その症状と適切な食事療法を解説

妊娠糖尿病は診断基準の変更によって、診断される可能性が高い疾患となったことをご存じでしょうか?

妊娠糖尿病は、妊娠中はもちろん、産後も糖尿病への移行率が高くなってしまう病気です。もしも妊娠糖尿病と診断されたら、それを期に食生活や運動習慣を改善し、産後も継続することが必要です。

この記事では、妊娠糖尿病の症状や診断基準についてと、適切な食事療法について解説いたします。
※この情報は、2017年5月時点のものです。

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1.妊娠糖尿病ってどんな病気?

1-1. 一般的な糖尿病とは

妊娠糖尿病を解説する前に一般的な糖尿病について説明します。病名から想像すると、おしっこに糖が混じる病気と勘違いしがちで、一見大した病気ではないように思えますが、実はこの病気は血液中の糖分(血糖)が常に高くなってしまい、全身の血管・臓器に異常を来す病気です(もちろん尿にも糖が排出されますが・・)。

血管は私たちの体全体に張り巡らされているので、糖尿病が悪化すると、心筋梗塞・脳梗塞・神経障害・腎不全・網膜症など、それこそ全身に悪影響が及びます。

1-2. 血糖が上がってしまう原因

血糖が上がってしまう原因としては、膵臓から産生されるインスリンというホルモンが低下してしまう事が挙げられるのですが、そのほとんどに食生活や運動不足といった生活習慣が関連しています。

 

人間の進化の過程で、現在の様に食事に不自由しなくなったのはここ最近の事であって、もともと人間の体には栄養が少ない状況に対する対抗策は沢山持っていました。

 

しかし逆に栄養過多の状況(=高血糖)は基本的には想定していなかったため、人間の体が管理できる以上の糖分を摂取し続けると体が耐えられなくなってしまうため、様々な生活習慣病が増えてきているのです。

1-3. 妊娠糖尿病とは

さて、妊娠糖尿病とは何でしょうか?

この病気は、妊娠中に糖尿病の様な状況ができてしまった状態を指します、ちなみにもともと糖尿病だった方が妊娠した場合は糖尿病合併妊娠と呼びます。

 

一体何故、妊娠中は血糖が高くなりやすいのでしょうか?その原因として、胎盤から作られるヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)やヒト胎盤性ラクトーゲン(hPL)というホルモンが関連しています。名前は難しいので覚える必要は全く無く、要は妊娠中には胎盤から作られるホルモンの性でインスリンの働きが邪魔されやすく血糖が高くなりやすい。と覚えて下さい。

 

何故私たち人間の体にこの様な仕組みが備わっているのかについては、先ほど説明した生活習慣病が増えた理由と一致します。昔は食事が満足に取れない状況が多かったので、妊娠中胎盤を通して赤ちゃんに栄養が行き渡らなくなってしまう可能性が高かったのです。それを何とかしようと先ほどのホルモンが産生される様になり、胎盤を通じて赤ちゃんの成長に必要な糖分を維持していたのです。

 

しかし現在の食生活では、やはり逆に高血糖となりすぎてしまうことが多く、妊娠糖尿病を発症してしまうのです。栄養が多く赤ちゃんに供給されるのであれば赤ちゃんにとっては良いのでは?と思うかもしれませんが、やはり何事もほどほどが肝心で、妊娠糖尿病により高血糖が持続しすぎてしまうと、妊娠中の様々な合併症のリスクが軒並み上昇してしまいます。

 

2.妊娠糖尿病のリスク一覧

妊娠糖尿病のコントロールが不良だと、妊娠に伴う数々の合併症のリスクが上昇してしまいます。

 

妊娠糖尿病により上昇するリスク

・巨大児

・子宮内胎児死亡

・帝王切開率

・肩甲難産

・産後低血糖

・妊娠高血圧症候群

・赤ちゃんの奇形

・羊水過多症

さらにもう一つ重要な問題として、妊娠糖尿病と診断された人は将来糖尿病発症率が高い事が分かっています。妊娠糖尿病をきたした女性の糖尿病発症の相対危険率は、正常血糖女性の7.43倍とも報告されています。

 

通常妊娠糖尿病は産後速やかに改善しますが、だからと言って産後は食生活に全く気をつけなくて良いというわけでは無いのです。妊娠中に覚えた血糖を上げにくい食生活を意識して継続する必要があります。

 

3.妊娠糖尿病になりやすい人は?

妊娠糖尿病のリスクファクター

 

  1. 家族に糖尿病の人がいる
  2. 肥満(BMIの計算方法 妊娠前の体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)25以上)
  3. 35歳以上の高年齢
  4. 巨大児を分娩したことがある
  5. 妊娠高血圧症候群になったことがある

 

妊娠糖尿病と診断されたとしても、大部分は食事療法と運動療法でコントロールが可能です。以下の点に注意して食生活を見直して下さい。

4.妊娠糖尿病の検査方法

上述した様に、妊娠期間中は血糖が上がりやすい状況にあり、さらに妊娠週数が進むにつれその傾向は顕著になります。妊婦健診では妊娠糖尿病をなるべく早い時期に発見してきちんとした血糖管理を行うために、2段階スクリーニング法という方法で血糖のチェックを行います。

 

妊娠糖尿病のスクリーニング検査

  • 妊娠初期に随時血糖測定を行う
  • 妊娠中期(24〜28週)に50gGCTもしくは随時血糖測定を行う

 

随時血糖測定とは、食事に関係無く測定した血糖値ですが、例えば産科健診の直前に炭水化物(米やパンなど)を沢山食べたり、清涼飲料水を摂取したりすると随時血糖値が上がってしまう事もあるため、直前の飲食は控えましょう。また50gGCT検査というのはブドウ糖50gを飲んだ1時間後に血糖を測定する方法で食事は関係しません。

 

2)のスクリーニングについては施設ごとに行う検査が異なりますが、どの検査についても基準値に引っかかった場合は75gOGTT検査というものを行います。これは朝食を食べない状態で75gのブドウ糖が含まれた飲料を飲み、直前・1時間後・2時間後の血糖を測定する方法です。測定中はあまり外出して動く事も出来ないため、中々しんどい検査です。

 

さて、この検査で直前血糖(92mg/dL)・1時間値(180mg/dL)・2時間値(153mg1/dL)の基準値を一つでも超えてしまうと妊娠糖尿病の診断となります。

 

以前は3つの値の内2つを超えるのが診断の条件でしたが、2008年以降世界統一基準の提唱から、診断基準が厳しくなりました。診断基準の変更により、妊娠糖尿病と診断される妊婦さんは以前の約3倍にもなったとも言われ、皆さんにとっても決して人ごとでは無い妊娠合併症の一つとなりました。

 

さて、妊娠糖尿病になりやすい要因として以下のものがありますので、どれかに当てはまる方は食生活に注意したり、適度な運動を心がけましょう。

5.【栄養士が解説】妊娠糖尿病と診断されたら、まずは食事療法

妊娠時に血糖コントロールが悪い状態が続くと、妊娠高血圧症候群などの合併症や巨大児出生による難産、生まれてきた新生児が低血糖状態になりやすいなど、さまざまなリスクがあります。そのため、これらの合併症や巨大児出生、新生児の低血糖の予防、及び胎児の発育に必要な栄養素を摂取しつつ、妊婦の適切な体重増加を目指すためには厳重な血糖コントロールが必須になっていきます。

 

血糖は血液中にあるグルコース(ブドウ糖)であり、食事中のデンプンなどの糖質が体内に吸収しやすいように小さく分解された物質です。血糖は食事の量や質、タイミング、インスリンの働きなどにより影響を受けやすいので、正しい食事療法を実践し、適正にコントロールすることが求められます。

 

6.【栄養士が解説】妊娠糖尿病中、血糖値を下げるために効果的な食事や食べ方

6-1. 適切な食事の総エネルギー量は?

非肥満妊婦の場合は、1日の総エネルギーが標準体重(身長(m)2×22)×30kcalになるようにし、エネルギー、たんぱく質、ビタミンなど妊娠時に必要な付加量※を加えます。

 

健常妊婦の適正体重増加(非妊娠時BMI18.5未満で9~12kg、BMI18.5~24.9で7~12kg、BMI25以上では個別対応が必要だが5kgを目安にする)を参考に、母体や胎児に必要以上の体重増加をきたさないように調整していきます。

 

肥満妊婦の場合は、総エネルギーは標準体重×30kcalを原則とし、体重減少や飢餓状態を招かないエネルギー制限に留めます。

 

6-2. 極端なエネルギー制限はNG!

極端にエネルギー制限をして飢餓状態になってしまうと、脂肪を分解することによって産生されるケトン体という物質が生成しやすくなります。

 

ケトン体は通常、尿などから排泄されていきますが、過剰生成されると血液中に留まりやすくなります。

 

ケトン体が増えすぎてしまうと、「糖尿病性ケトアシドーシス」という大変危険な合併症を引き起こしてしまう可能性があり、胎児の死亡率が高くなってしまいかねませんので、飢餓状態にはならないようにしていきましょう。

6-3. 食後高血糖を防ぐには?

食後の高血糖を防ぐことは糖尿病性ケトアシドーシスを防ぐこと、巨大児の発生を予防すること、血糖コントロールを良好に保つことに繋がります。そのためには、食事の質や食べ方、タイミングが重要になっていきます。

①食事の質

どのライフステージでも言えることですが、主食(ごはん、パン、麺類などの炭水化物)・主菜(肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質)・副菜(野菜、きのこ、海藻などのビタミン、ミネラル、食物繊維)を揃えたバランスの良い食事を必ず意識していきましょう。また、妊娠高血圧症候群を合併しない為にも食塩は1日8gまでをこころがけることも大切です。

 

白いごはんやパンなどの生成された穀物は、血糖値も上昇しやすくなりますので、雑穀米や全粒粉のパンにするなど工夫してみましょう。不足しがちなビタミン、ミネラル、食物繊維の補給にもつながります。炭水化物はエネルギー源として必要ですが、多すぎても極端に減らしても良いものではありません。炭水化物から摂取するエネルギー量は1日の総エネルギーの50%を下回らないようにしていきましょう

②食べ方

食事は副菜から先に食べることによって、グルコースの吸収速度を緩やかにし、血糖値の急上昇を抑えることができると言われています。また、早食いは食べ過ぎにつながるだけでなく、血糖値の急上昇の原因にもなりますので、ゆっくりよく噛んで食べるようにしていきましょう

③タイミング

空腹時にたくさん食べてしまうと、血糖値が急上昇してしまいます。また、空腹時は血糖が胎児に優先的に使われるようになるので、母体はエネルギー不足になりやすく、飢餓状態に近くなり、ケトン体が生成されやすくなります。空腹時間を作らないためには、なるべく食事の間隔が開きすぎないようにすることが大切になっていきますので、1日3食にとらわれず、少量頻回食(1日6回くらいにわけて食べることが良いとされています)をお勧めしております

 

ただし、夕飯から次の日の朝食までは時間が空きやすくなりますので、朝食後は血糖値が上がりやすくなります。その際も、必ず副菜から先に食べたり、しっかり噛むことを意識しながら食べていくことが大切です。

 

※妊娠初期+50kcal、中期+250kcal、末期+450kcal、授乳中+350kcalの方法と、妊娠中全期間一律に+200kcal付加する方法の2つが行われており、現在両方法の優劣は日本糖尿病・妊娠学会で検討中となっています。

7.妊娠糖尿病が食事療法で改善されない場合は?

★インスリン注射による血糖コントロール

妊娠糖尿病の血糖管理目標は、早朝空腹時血糖95mg/dL以下、食前血糖値100md/dL以下、食後2時間血糖値120mg/dL以下として、食事療法や運動療法を行います。

しかしそれでも血糖が改善しない場合はインスリン注射により血糖コントロールを行います。

 

通常の糖尿病に対して薬剤で治療をする際は、まずは内服薬を使用し、それでもコントロールできない場合にインスリン注射を行うためびっくりするかもしれませんが、糖尿病に対する内服薬は赤ちゃんの奇形を引き起こしてしまう可能性があるので、使用ができません。

 

そのため妊娠中は最初から注射薬を使用します。多くの施設ではインスリン注射は内科の医師の指示により調整されますが、指示にはきちんと従うことと、食事量を急に減らしたりしない様にする事が大切です。しっかりと血糖コントロールができれば妊娠中のリスクも減らす事ができます。

8.まとめ

妊娠糖尿病は診断基準の変更によって、かなりの妊婦さんが診断される可能性が高い疾患となりました。

 

しかしこの病気は妊娠中はもちろん、産後も糖尿病への移行率が高くなってしまうため、もしも妊娠糖尿病と診断されたら、それを期に食生活や運動習慣を改善し、産後も継続する様にしましょう。

 

執筆
管理栄養士:藤田 朋子
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