妊娠時は要注意!母子ともにリスクを高める妊娠高血圧

高血圧は普段、症状は現れません。循環器疾患のリスクを高めてしまいますが、急に明確な不調が現れるということはほとんどありません。しかし、妊娠時の高血圧は母子ともに、命のリスクを高めてしまう可能性があります。妊娠中の高血圧は決して稀なものではなく、全妊婦のおよそ5%に生じるとも言われています。妊娠高血圧症候群はどのような病気で、どのように防げばよいのでしょうか。

今回は、妊娠高血圧について説明するとともに、母子にどのようなリスクがあり、発症しやすい方、予防のポイントについても解説していきます。
※この情報は、2018年1月時点のものです。

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1.通常の高血圧と妊娠高血圧症候群の違い

妊娠前は高血圧ではなかったのにも関わらず、妊娠20週目以降から分娩後12週までに高血圧を発症した場合に妊娠高血圧症候群と呼びます。収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上もしくは、拡張期血圧(最低血圧)が90mmHh以上、あるいはこの両方を満たすときに妊娠高血圧症候群と診断されます。

 

通常の高血圧は自覚症状がほとんどありません。高血圧は動脈硬化のリスクを高めるため、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血のリスクも高めてしまいます。しかし日常生活を送るうえで自覚症状がないことから、「サイレントキラー」と呼ばれています。

一方で、妊娠高血圧症候群は短期的に重篤な症状を引き起こすことがあります。母体、胎児ともにリスクが高まり、最悪の場合、双方ともに死亡する可能性すらあり得ます。妊娠高血圧症候群にはどんなリスクがあるのでしょうか?

 

2.妊娠高血圧症候群では母子にどのようなリスクがあるのか?

まず、前提として妊娠高血圧症候群は稀な疾患ではありません。20人に1人の妊婦に発症する統計が出ており、誰にでも発症する可能性は十分にあります。通常の高血圧と同じく、妊娠高血圧症候群でも自覚的な症状というものはあまりありません。しかし妊娠32週目から出産までの短期間に思いもよらず重大な事態が引きおこる可能性があります。

 

2-1. タンパク尿

妊娠高血圧症候群で現れる症状のうちもっともポピュラーなものです。高血圧により腎臓の機能が低下することで、尿にタンパク質が混じりやすくなります。

 

2-2. 子癇(しかん)

妊婦が高血圧により、脳組織への循環障害を発症し、けいれんや意識の喪失などを引き起こした状態のことです。妊娠20週目以降から発症することが多く、母子ともに重篤な状態へとなりやすくなります。また子癇は脳血管疾患を引き起こすこともあります。状態が悪いときは帝王切開をすることもあります。

2-3. HELLP(へるぷ)症候群

血液中の赤血球が壊れ溶血を引き起こし、肝機能障害と血小板の減少が引きおこる病気です。妊娠高血圧症候群を発症していない妊婦にも発症する可能性があるため、妊娠高血圧症候群と直接的に関係があるかどうかはまだ詳しくわかっていません。しかし深い因果関係があると考えられています。

心臓部への痛みや吐き気、嘔吐などの症状が現れますが確定診断のためには血液検査が必要になります。母子ともに死亡する可能性があり、胎児の早急な分娩が余儀なくされることもあります。

2-4. 胎児発育不良

高血圧により血液の循環に支障が生じ、胎児の発育が悪くなることがあります。低体重での出産の要因となります。

 

2-5. 常位胎盤早期剥離

子宮内部の胎盤が胎児を出産する前に剥がれてしまう病気です。胎盤は母体と胎児を繋ぐ器官であり、剥がれてしまうと酸素が不足することにより、死亡する可能性が高くなります。また母体も出血によるショックにより死亡する可能性もあり、早急な対応が必要となります。

 

3.妊娠高血圧症候群を発症しやすい人

妊娠高血圧症候群はなぜ起きるのか原因がはっきりとしていません。しかしなりやすい人の傾向はあります。以下のポイントに当てはまる人は妊娠高血圧症候群を発症しやすいと考えられています。

 

・肥満体型の人

・妊娠前から血圧が高めの人

・妊娠前から高血圧の人

・妊娠前から腎障害のある人

・家族に高血圧の人がいる人

・母体の年齢が高い人(35歳以上でリスク上昇、40歳以上でさらに上昇する)

・初産婦

・以前に妊娠高血圧になった人

・双子や三つ子などを妊娠している場合

 

4.妊娠高血圧症候群を予防するためには

妊娠高血圧症候群自体はどうして発症するのか明確なメカニズムが明らかになっていません。そのため完璧に予防するのは難しいでしょう。ただし妊娠前から高血圧を予防する生活習慣を確立することで、妊娠高血圧症候群を予防できる可能性が高まります。高血圧を予防するポイントには以下のようなものがあります。

 

4-1. 適正体重を保つ

肥満体型の人は通常時も妊娠時も血圧が高くなる傾向にあります。日ごろから体型を意識して、適正体重を保つようにしましょう。適正体重は以下の計算式から求めることができます。

 

適正体重=(身長)2×22

 

身長が155cmの女性の適正体重は1.55×1.55×22でおおよそ52-53kgほどとなります。

 

4-2. 塩分の摂取量を控える

過剰なナトリウムは血圧を高める原因となります。日ごろから塩分は控えるようにしましょう。成人女性では食塩相当で1日7g未満がナトリウム摂取量の目標値です。

4-3. 運動する習慣をつける

日常的に運動をすることは肥満を防ぎ、循環器にもよい影響を与えます。日ごろから軽い有酸素運動を行う習慣をつけましょう。

 

4-4. 健康診断を受ける

1年に1度、きちんと健康診断を受けるようにしましょう。自分の血圧がどの程度なのかを把握することで、改善の必要があるかどうかを知ることができます。血圧に限って言えば自宅で計測できる血圧計を安価に購入することができるため、毎日測るのもよいでしょう。

 

5.妊娠高血圧症候群と診断されたら

軽度の妊娠高血圧症候群ならば、基本的に生活習慣の指導による治療を行います。食事指導により適切なカロリー制限と塩分制限を行い、血圧をコントロールします。

 

血圧が180/120mmHgを超える状態が続く場合、降圧剤を用いた治療を行います。降圧剤を静脈に点滴して、血圧のコントロールを行います。ただし降圧剤の使用は胎児に悪影響を与える可能性があるため、慎重に行います。

 

週数によっては帝王切開で赤ちゃんを出産させ、母体と赤ちゃん双方の治療を行うこともあります。

 

参照: 妊娠高血圧症候群の診察指針 2015 -Best Practice Guide –

 

 

6.まとめ

妊娠高血圧症候群は妊婦の20人に1人に現れる病気です。タンパク尿、むくみといった症状だけではなく、子癇、HELLP症候群、常位胎盤早期剥離といった極めて重大な疾患のリスクを高めてしまいます。

妊娠高血圧症候群はどのようなメカニズムで発症するのか、明確に解明されていません。しかし、適正体重を保つ、塩分の摂取量を控えるなど妊娠前から心がけることができる生活習慣もあります。妊娠の計画があるならばもちろん、なくても健康のために少しずつ生活習慣を改善するようにしましょう。

 

執筆
医師:大見貴秀
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