肥満症の薬「サノレックス」に対する薬剤師の本音【効果・注意点・入手方法】

現代日本において「やせたい」という願望を持つ人は非常に多いものです。いわゆる「ダイエット」は、適切な食事・運動の管理によって行うべきですが、中には「やせ薬」に頼りたくなる人もいるのではないでしょうか。

実は、日本においては肥満症に使用することが認可されている薬があります。それが今回のテーマである「サノレックス」です。しかし、この薬が適しているのは、ほんの一握りの肥満症なのであり、万人に使用できる薬ではありません。

この記事では、サノレックスが体重を減らす仕組み・使用が適している人・入手方法などについて詳しく解説していきます。
※この情報は、2017年4月時点のものです。

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1.サノレックスってどんな薬?

漢方薬を除けば、日本国内で唯一「肥満症」に使用することが保険上認められている薬が、この記事のテーマである「サノレックス」です (1)。全世界で見れば、使用が開始されたのが1973年、国内では1992年から販売されていますから、古い薬といってよいでしょう (2)。

その治療効果は、ひとことでいえば「体重を減らすこと」です。

(1)サノレックスの効果:体重を減らす仕組み

サノレックスに含まれる有効成分は「マジンドール」といい、この成分の作用によって服用した人の体重を減らします (1)。その作用の仕組みは、こういうことです。

脳の中には、摂食行動を制御している部位があります。具体的には、「視床下部」という場所がそれで、マジンドールはこの部位のはたらきを鈍らせる作用を持ちます。その結果、脳は満腹感を覚えやすくなり、したがって食べる量が減少、体重も減るという仕組みです。また、こうした作用を発揮するうえで、「ドパミン」という脳の電気信号を制御する物質が関わることも知られています (3)。

つまり、薬の作用によって「満腹だ」と脳をだますことで体重を減らすということです。

(2)使用上の注意点:サノレックスの作用は覚せい剤に似ている?

ところで、これととてもよく似た作用を持った別の薬があります。「アンフェタミン」という物質で、これは覚せい剤の一種です (2)。

違法薬物の知識を持っている人には有名な話ですが、覚せい剤の売人がよく使う売り文句に、「これを使うとやせるよ」というものがあります。こうして言葉巧みに、若い女性などをターゲットにして覚せい剤を売りつけるわけですが、実際に覚せい剤で体重が減るのは、上で説明したような作用を持つからです。

ということは、サノレックスは作用の仕組みの面からいえば、覚せい剤に似ているとも表現できます。この時点ですでに、サノレックスが気軽に使用できる薬でないことは、お分かりいただけると思います。

もっとも、両者の化学構造はかなり異なることは、見る人が見れば分かります。そのため、依存性を含めた安全性面まで、無根拠に両者で同じであると考えるのは合理的でありません。それでも、使う場合には相応の慎重さが求められる薬であることはいえます。

(3)サノレックスを使用できる条件

医薬品は、それぞれどのような病気や症状に使用することができるか、条件が定められています。これを正式には「効能・効果」と呼びます。サノレックスの説明書である、「添付文書」を参照すると、効能・効果の欄には次のように記載されています (1)。

あらかじめ適用した食事療法及び運動療法の効果が不十分な高度肥満症 (肥満度が+70%以上またはBMIが35以上) における食事及び運動療法の補助

にいいかえれば、「運動や食事に気をつけてもなお、肥満の程度がかなり高い場合」となります。つまり、運動や食事といった、肥満を改善するために必要な基本的な努力を行うのが前提ということで、「体重を減らしたいな。じゃあこれを飲んでおくか」のような使い方をするものではないということです。

ところで、上の効能・効果で出てくる「肥満度」と「BMI」にはそれぞれ基準となる値が示されています。これらがどの程度の数値なのかを知ることで、サノレックスが必要となるケースがどのようなものか、イメージがわきやすくなると思います。

①肥満度とは?

肥満度は、次の式で求めることができます (4)。

肥満度=(実測体重 標準体重)/標準体重×100

「実測体重」とはそのままの意味で、実際に体重計に乗って測った数値です。つまり、肥満度とは実測体重と標準体重の差が、標準体重の何パーセントになるかを意味しています。標準体重よりも軽ければマイナスの数値になりますし、プラスの数値が大きいほど高度な肥満ということになります。

そこで、「標準体重」とは何か?が問題になりますが、それを知るためには以下で述べるBMIの説明をする必要があります。

②BMIとは?

BMIとは、「Body Mass Index」の頭文字をとったもので、計算式は以下の通りです (4)。

BMI=体重 (kg)÷身長 (m) ÷身長 (m)

要するに、体重を身長で2回割れば求められます。このとき、身長はメートル単位であることに注意が必要です。日本肥満学会からは、その基準が次のように示されています (5)。

  • 低体重 (痩せ型):18.5以下
  • 普通体重:18.5以上、25未満
  • 肥満:25以上

特に、BMIが22の場合、統計的にもっとも病気にかかりにくいと考えられています。そこで、BMIが22になるような体重を「標準体重」と呼ぶようになりました。もっとも、標準体重には他にもいろいろな定義があるのですが、現在よく使われるのは、このBMIにもとづく定義です。

③【例】具体的に体重何キロぐらいの方の使用が適している?

さて、肥満度とBMIの定義を覚えたところで、サノレックスの使用が保険上認められるラインである、「肥満度が+70%以上またはBMIが35以上」がどのくらいなのか、具体的な数値を用いて紹介しましょう。

ひとまず、男性のケースを考えます。日本成人男性の平均身長は、おおむね170cmです (6)。この身長の男性がいるとイメージしてください。まず、この男性の標準体重を、BMIを用いて求めてみます。標準体重におけるBMIは22でしたから、次の式で計算できます。

標準体重=22×1.70×1.70=63.58kg

つまり、この体重ならピッタリ真ん中ということです。では、標準体重とBMIがそれぞれ、+70%または35以上になるような体重とは、いったいいくつになるでしょうか。それぞれ、実際に計算すると、次のようになります。

肥満度+70%以上になる体重=標準体重×1.7=63.58×1.7=108.086kg
BMI35以上になる体重=1.70×1.70×35=101.15kg

要するに、サノレックスの使用が考慮されるレベルの肥満症とは、身長はごく普通にもかかわらず、体重が100kgを超えるような場合に限られるのです。しかも、前提条件として「あらかじめ適用した食事療法及び運動療法の効果が不十分な」がつきますので、生活習慣を改善してなお、こうした体重となってしまう場合が対象です。すなわち、「ちょっと太っているな」というレベルではないと表現してよいでしょう。

このような肥満症はそうそうあるわけではないので、必然的にサノレックスを使えるケースは限られます。逆に、ほとんどの肥満症は、サノレックスを使うことが適さない、ともいえます。

サノレックスに減量以上の効果はある?

ところで、最初の方で「サノレックスの効果は体重を減らすこと」と述べました。

体重を減らす効果のある薬と聞くと、それを使うのは美容目的、つまり見た目をよくすることであると、一般的には考えがちです。しかしながら、医療者から見た場合の目的はこれとは異なります。では、何を目的としているかといえば、体重や内臓脂肪が増加することで、心筋梗塞などの病気が増えますから、こうした病気を減らすためです。

ということは、サノレックスを使用することで、心筋梗塞などの発症または死亡率などが減少しなければ、少なくとも医学・薬学的には、あまり意味がないといえます。

ところが、サノレックスをはじめとした体重減少効果のある薬に、本当にこうした効果があるのかは、実のところよく分かっていません (7, 8)。「よく分かっていない」というのは、調べられていないという意味です。理論上は、体重や内臓脂肪を減らすことで、身体によい影響があると予想できますが、これはあくまで予想ですから、本当のところは実際に調べてみないと何ともいえません。

しかも、サノレックスは使用期限に制限のある薬で、最大で3カ月しか使えません (1)。こうしたこともあり、この薬について調べた臨床研究のほとんどは、「体重を減らす効果があるか?」にもっぱら注目し、その先にある「死亡率や心筋梗塞の発症を減らすか?」までは調べていないのです。

つまりまとめれば、サノレックスに体重を減らす効果は確かにあるものの、その結果として健康になれるかは、また別の問題ということです。

2.サノレックスはどこで手に入る?

インターネットで「サノレックス」というワードを検索したところ、複合キーワードとして「サノレックス 通販」とか「サノレックス 個人輸入」などが出てきました。これは、医療機関を受診することなく、個人でひそかにサノレックスを入手し、これを使おうとする人がそれなりの数いることの表れでしょう。しかし、初めに結論をいえば、これらは不可能です。サノレックスは医師の処方がなければもらうことができませんから (1)、通販では購入できません。また、サノレックスは規制区分上「向精神薬」に該当します。向精神薬を輸出入することは禁じられていますから、個人輸入でサノレックスを入手することもまた不可能なのです。

(1)医療機関以外から、「痩せる薬・サプリ」などを購入してはいけない理由

したがって、サノレックスを妙なルートから入手する方法は、法的に遮断されているといえます。ともあれ、そう簡単にあきらめない人はいるもので、サノレックスの代わりになる薬・サプリを同じくインターネットに求めたり、それを勧める広告などが存在するのも事実です。

しかし、ここで強調しておきます。こうした医療機関以外のところから、「痩せる薬・サプリ」などを購入・使用することは、絶対にしないでください。

こう書くと、「ははーん、医療機関経由以外でやせ薬を手に入れる人が増えると、薬局を経営している側からするとお客をとられたことになるから、それをけん制しているんだな」と感じるかもしれませんが、そうではありません。それどころか、本音をいえばこうしたニッチな薬は、仕入れたところで不良在庫になるケースが極めて多いものです。そのため、薬局の経営という観点からいえば、むしろ「取り扱いたくない薬」とさえいえます。

にも関わらず、なぜそんなことをいうのか。これには2つの理由があります。

人体に対する影響に不明な点が多い

1つ目は、そこで売られている「痩せる薬・サプリ」の、人体に対する影響に不明な点が多いことです。先ほど、サノレックスの効果については十分検証されていないことは説明しましたが、多くの国や地域で医療用の医薬品として使用されているサノレックスですらそうなのですから、得体のしれないサプリなどは、これに輪をかけて検証が不十分です。そのため、本当に効果があるのかも怪しいものですし、どんな予期せぬ副作用があるか、分かったものではありません。つまり、単純に服用・摂取することが危険である可能性が高いのです。

偽物の薬である可能性がある

これだけでも、インターネット経由で、怪しい薬・サプリを購入するのが危険な理由としては十分ですが、それでも納得できない人のために、もう1つの理由を紹介します。

その理由とは、偽物・まがい物の存在です。サノレックスに限らず、薬というものは古来より偽物が大量に出回るのが常です。錠剤やカプセルなどの形にしてしまえば、一見しただけでは何が入っているのか分からないため、真贋を見分けにくいのも、偽物の作り手からすれば都合がよいからでしょう。

少し前に、C型肝炎の治療に使う「ハーボニー」という薬の偽物が出回ったことがニュースになりました。このケースは、ハーボニーがとても高価な薬ですので、転売してお金を儲けることを目的としたものですが、ここから多くの人が求める薬は、偽物が出回る可能性が高いことが教訓として読み取れます。「痩せたい」という願望を持つ人は、たくさん存在しますから、偽物の薬を扱う業者のターゲットになる可能性は、相対的に高いと考えられます。

もっとも、例えば偽物に入っているのが小麦粉だけだとすれば、お金をだまし取られるだけで済むかもしれません。それはそれで問題ですが、こうしたことに加えて、人体にとって危険な成分をこっそりと含んだニセ薬が販売されたならば、服用した人の命にかかわる可能性すらあります。

3.まとめ

  • サノレックスは古くから使われている抗肥満薬だが、その効果には不明な点も多い
  • サノレックスはかなり高度な肥満症にしか使えず、この対象になる人は少ない
  • サノレックスには体重を減らす効果はあるが、それによって健康になれるかはよくわかっていない
  • インターネットなどを経由して薬・サプリを購入するのは非常に危険なので、絶対にしてはいけない

 

どんな薬にも当てはまることですが、薬を使うのは、それによってもたらされるメリットが、デメリットを上回ると予想される場合に限るべきです。サノレックスに関していえば、メリットは「体重が減ること」ですが、それによって健康を害することがあっては本末転倒です。医療機関を受診したうえで、サノレックスを使う決定がなされたなら、こうしたメリット・デメリットのバランスが考慮されてのことといえます。

一方で、目先の体重や体型などに心を奪われていると、こうしたバランス感覚を失いがちです。それ故に、専門家である医療者に相談したうえで使用することが、ひときわ重要なのです。

4.参考文献

(1) サノレックス錠 添付文書 富士フイルムファーマ株式会社
(2) サノレックス錠 インタビューフォーム 富士フイルムファーマ株式会社
(3) Kimura Y, et al. Psychopharmacology (Berl). 2017 Feb;234(3):323-328. PMID: 27766370
(4) 龍原徹・澤田康文 ポケット医薬品集2016年版 白文舎
(5) Shirai K, Nippon Rinsho, 2001 59:553-571.
(6) http://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_2_1.html
(7) Ioannides-Demos LL, et al. Drugs. 2005;65(10):1391-418. PMID: 15977970
(8) Padwal R, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2004;(3):CD004094. PMID: 15266516

 

執筆
薬剤師:黒田 真生
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