目次
1.副鼻腔ってどんなもの?
副鼻腔とは、顔の骨で形成される空洞のことです。私たちには合計で8つの副鼻腔があり、鼻腔を取り囲むような配置で存在しています。
では、副鼻腔にはどのような種類があり、どのような働きをしているのでしょうか?詳しく見てみましょう。
1-1. 副鼻腔の種類は?
副鼻腔には、上顎洞、篩骨洞、蝶形骨洞、前頭洞と呼ばれる4種類があります。これらは左右対になって存在し、ちょうど鼻腔を取り囲むように並んでいます。このため、私たちの顔面には合計で8つの副鼻腔が存在するのです。
最も大きい副鼻腔は上顎洞であり、小鼻のやや上方の頬に左右対で存在します。次に大きい副鼻腔は前頭洞で、額に存在します。副鼻腔炎はこれら8つの副鼻腔のどこにでも起こる可能性があります。
1-2. 副鼻腔はどんな構造をしているの?
副鼻腔は表面が粘膜に覆われた空洞であり、小さな穴によって鼻腔と繋がっています。副鼻腔の粘膜は鼻腔の粘膜と同じく、多数の線毛があります。
線毛は、副鼻腔に入り込んだウイルスや細菌を捕らえて体外に追い出す働きを持ちます。このため、通常であれば副鼻腔に感染の原因となる異物が入り込んでも問題となることはないのです。
1-3. 副鼻腔の働きは?
副鼻腔がどのような働きをしているか、明確には解明されていません。しかし、鼻腔と同様の粘膜を持つことから、鼻腔や咽頭を保護するための加湿作用があるのではないかと考えられています。
また、空洞を形成することで頭蓋骨を軽くしたり、顔面に外力が加わった時にそのエネルギーを分散させるためなどの構造的な理由も挙げられています。
2.副鼻腔炎にはいくつかの種類がある?その特徴と症状は?
副鼻腔炎は急性副鼻腔炎・慢性副鼻腔炎・好酸球性副鼻腔炎に大きく分けられます。
それぞれどのような特徴があり、症状に差があるのでしょうか?詳しく見てみましょう。
2-1. 急性副鼻腔炎
ウイルスや細菌に感染することによって生じる副鼻腔炎です。そのうち、炎症が一か月以内に治まるものが急性副鼻腔炎です。
副鼻腔の内部は通常であれば病原体が存在しない無菌の状態ですが、鼻腔と繋がる入り口を通して、線毛によって追い出せないほどのウイルスや細菌が入り込むことで炎症を生じるのです。
また、鼻炎などによって鼻腔との入口が塞がると、副鼻腔から病原体を上手く排出することができず、大繁殖を起こすことがあります。
急性副鼻腔炎の多くはウイルス感染によるものですが、小児や高齢者などの体の抵抗力が弱い人では細菌感染によって発症することもあります。一般的には、ウイルス感染による副鼻腔炎よりも細菌感染によるものの方が重症化しやすく、治るまでに時間がかかる傾向にあります。
症状
急性副鼻腔炎は鼻炎や咽頭炎などの一般的な風邪の症状に続発します。風邪によって鼻腔の粘膜に炎症が生じると、粘膜が腫れて副鼻腔の入り口を塞ぐことがあります。このため、副鼻腔内の圧力が変化して痛みを生じ、副鼻腔の粘膜から分泌された粘液が排出できずに貯留した状態となります。
このように副鼻腔内に粘液が貯留した状態に進行すると、頭がボーっとしたり頭痛を引き起こすようになります。特に上顎洞に生じた場合には、副鼻腔の痛みを歯痛として自覚することも少なくありません。
また、鼻腔から侵入した病原体は粘液を栄養素として副鼻腔の中で増殖を繰り返し、発熱や倦怠感などの全身症状を伴うようになります。
炎症が進むと副鼻腔の中では膿が産生され、鼻汁として排出されますが、いわゆる「あおっぱな」と呼ばれるようなドロッとした形状になるのが特徴です。また、このような排液が喉に流れ込むと咽頭炎や気管支炎を併発することも少なくありません。
2-2. 慢性副鼻腔炎
急性副鼻腔炎が3か月以上治らないものが慢性副鼻腔炎です。慢性副鼻腔炎に進行する原因は様々ありますが、鼻腔や副鼻腔の粘膜の腫れが強く、粘膜自体が肥厚化して副鼻腔に貯留した膿などが正常に排出されない状態が続いたり、解剖学的に副鼻腔から鼻腔への通りが悪い場合などが挙げられます。
これらの原因によって、慢性的に膿が副鼻腔に溜まった状態が慢性副鼻腔炎なのです。このため、かつて慢性副鼻腔炎「蓄膿症」と呼ばれていたこともありました。
症状
急性副鼻腔炎と同様、薄い黄色や緑色のドロドロとした鼻汁が見られます。鼻汁には膿が多く含まれるため、悪臭を放つことも珍しくありません。また、悪臭を伴う液体が副鼻腔に貯留することで口臭の原因となることもあります。
逆に、鼻腔や副鼻腔粘膜の炎症が長期化して粘膜が腫れた状態が続くと、鼻通りが悪くなって重度な鼻づまりを生じることもあります。
また、副鼻腔に溜まった膿は時間が経つと硬くなるため、急性副鼻腔炎よりも排出するのが困難になり、副鼻腔に限った痛みだけでなく、目の痛みや頭重感を生じることも少なくありません。
さらに、副鼻腔の近くを走行する視神経に徐々にダメージが加わると稀に視力障害を引き起こすこともあるので注意が必要です。また、長期間の粘膜炎症によって機能が損なわれると、嗅覚や味覚などの感覚が鈍くなるばかりでなく、病原体の排出機能が低下して風邪をひきやすくなるのも特徴です。
2-3. 好酸球性副鼻腔炎
難病に指定されている重篤な病気です。明確な発症メカニズムは解明されていませんが、気管支喘息やアスピリン喘息に合併しやすいことが知られています。
非常に治療が難しく、喘息自体を悪化させることもあり、手術によって副鼻腔の粘膜を切除する治療を行っても約半数は再発するとされています。
症状
鼻腔に「鼻茸」と呼ばれるポリープが多く生じ、非常に粘り気の強い鼻汁が産生されるため、重度な鼻づまりを引き起こします。その結果、口呼吸が多くなり、喘息を悪化させると考えられています。
喘息発作を生じると、鼻呼吸も行えないため、激しい呼吸困難を訴えることも少なくありません。粘膜に強いダメージが生じて嗅覚障害と味覚障害が起こり、特に嗅覚は完全に失われることもあります。
また、副鼻腔炎だけでなく、重度の中耳炎を引き起こすこともあり、治療が困難な難聴が進行するのも特徴です。
4.こんな症状の副鼻腔炎症状にはご注意を!
副鼻腔炎では、顔の痛みや鼻汁など様々な症状が現れます。副鼻腔炎は左右対に存在していますが、通常はどちらか一方の副鼻腔のみに強い症状が現れることはほとんどありません。
しかし、長期間に渡って、片方のみの副鼻腔症状が強い場合には、上顎がんなど副鼻腔内に生じるがんの可能性もありますので注意が必要です。
特に、片方の鼻から鼻汁とともに鼻血が出る、悪臭が非常に強い鼻汁が出る、顔が腫れるなどの症状がある場合には、耳鼻科を受診して検査を受けるようにしましょう。
5.まとめ
副鼻腔炎はありふれた病気ですが、悪化すると嗅覚や味覚が損なわれるだけでなく、神経障害を引き起こすこともあります。また、慢性的な頭重感や鼻づまりによって日常の活動性に影響を与えるケースも少なくありません。
副鼻腔炎の症状には次のようなものが挙げられます。
・粘りのある鼻汁
・鼻づまり
・頭痛、頭重感
・顔面の痛み
・歯の痛み
・咳や喉の痛みなどの咽頭炎症状
このような症状がある場合には、放置せずに病院で適切な治療を受けるようにしましょう。