精神安定剤は市販で購入できる?市販薬に頼らず病院を受診すべき理由を解説

最近、情緒不安定でやる気が起きない・・と不安な毎日を過ごされていることはありませんか?

「お薬に頼りたい。でも病院を受診するのは、ちょっと」と市販で精神安定剤が購入できないかと調べられた方もいるかもしれませんね。

結論からいうと、病院で処方されるような精神安定剤は市販では購入できません。服用には専門家の判断と服用には適正な管理が必要となるためです。

何日も情緒が安定しない場合には、何らかの原因や他の病気が原因となっている可能性もあります。精神科や心療内科というと壁を感じるような方もいますが、早めにきちんと専門家に診てもらうことが大切です。

今回は、病院で処方される精神安定剤と市販薬の違い等を解説するとともに、情緒が不安定のときに考えられる原因・病気や病院を受診したほうが良い理由について説明していきます。
※この情報は、2018年2月時点のものです。

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1.病院で処方される精神安定剤とは?

病院で処方される精神安定剤は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬と呼ばれるタイプのお薬で、脳の神経に直接作用して、脳の興奮を抑えます。

具体的な作用としては、以下の4つの作用を持っており、薬によってそれぞれの作用に強弱があります。

 

<病院で処方される安定剤(抗不安薬)の作用>

1:不安を和らげる

2:緊張をほぐす

3:気持ちを落ち着かせる

4:体の震えを抑える

 

また、薬が効いている時間によって短時間作用型・中時間作用型・長時間作用型の3つに分類されていますが、どれも即効性があり、薬を飲んでから1時間以内に効いてくる薬がほとんどです。

 

成分名(商品名) 作用時間 作用時間 鎮静作用 筋弛緩作用 抗痙攣作用
クロチアゼパム(リーゼ) 短時間
エチゾラム(デパス) 短時間
フルタゾラム(コレミナール) 短時間 なし なし
ロラゼパム(ワイパックス 中時間

アルプラゾラム

(ソラナックス、コンスタン)
中時間

ブロマゼパム

(レキソタン、セニラン)
中時間
フルジアゼパム(エリスパン 中時間 なし なし

ジアゼパム

(セルシン、ホリゾン、ダイアップ)
長時間
クロキサゾラム(セパゾン) 長時間

クロルジアゼポキシド

(バランス、コントール)

長時間
クララゼプ酸二カリウム(メンドン) 長時間
メダゼパム(レスミット) 長時間
オキサゾラム(セレナール) 長時間
メキサゾラム(メレックス) 長時間
ロフラゼプ酸エチル(メイラックス) 超長時間
フルトプラゼパム(レスタス) 超長時間
各薬剤の添付文書および臨床薬理向精神病薬価換算表より作成

 

このように病院で処方される安定剤には、薬によって作用時間や作用の強弱の違いがあったりしますし、長期に服用することで精神的・身体的な依存が起こる危険性があることから医師が患者さんの状態を把握して、症状に合った適切な薬を選択します。

 

また、処方した後も依存性など副作用が起こっていないかなど確認しながら経過を観察していきます。

 

 

*精神的依存とは

薬を飲むことで症状が軽快するため、「飲まないと症状がまた起こるのではないか?」という不安から薬が手放せない状態。

 

*身体的依存とは

長期間薬を飲むことによって、体が、薬が体内にある状態が当たり前と認識してしまうために、薬を減量したり、中止したりすると、体が異常と判断し、頭痛やめまいなどの身体的な症状を起こし異常を知らせてくる状態。

 

2.市販で購入できる精神安定剤はある?

精神安定剤は、脳神経に直接作用する薬であり、依存性の問題など適切に服用しなければ、かえって症状を悪化させてしまう危険性のある薬です。

このため、ドラッグストアなどで市販薬(処方箋なしで購入できる薬)として販売することは禁止されており、個人輸入も含め、精神安定剤を個人で購入することはできません。

 

ただ、最近は、漢方薬を成分にしたものやサプリメントが気持ちを落ち着かせる市販薬として販売されています。

 

<市販で購入できる不安やイライラなど精神不安定状態を和らげる薬や漢方薬の例>

商品名 主な成分 効果
ウット(伊丹製薬)

ブロモバレリル尿素

アリルイソプロピルアセチル尿素

(両方とも鎮痛催眠作用があり、市販の頭痛薬にも含まれている成分)

塩酸ジフェンヒドラミン

(抗炎症、鎮静、催眠作用があり、アレルギーの薬にも含まれている成分)
不眠症、不安緊張状態の鎮静
パンセダン(佐藤製薬)

パッシフローラエキス

セイヨウヤドリギエキス

カギカズラエキス、ポップエキス

(いずれも植物から抽出できる鎮静催眠効果のある成分)
イライラ感・緊張感・興奮の鎮静
イララックス(小林製薬)

パッシフローラエキス

カノコソウエキス、ポップエキス

チョウトウコウエキス

(いずれも植物から抽出できる鎮静催眠効果のある成分)
イライラ感・興奮感・緊張感の鎮静
レスフィーナ(塩野義製薬) 漢方薬「抑肝散」にシャクヤクとオウレンを加えた9種類の生薬成分 抑うつ気分や不眠、イライラや興奮状態を緩和
アロパノール(全薬工業 漢方薬「抑肝散」の成分 興奮やイライラ、筋肉の緊張などを緩和
抑肝散加陳皮半夏(クラシエ) 漢方薬 神経がたかぶりやすく、怒りやすい、イライラしやすい状態の緩和
加味逍遙散(ツムラ、クラシエ) 漢方薬 のぼせ感、肩こり、疲れやすい、精神不安や苛立ちなどの精神神経症状の緩和
半夏厚朴湯(ツムラ、クラシエ) 漢方薬 抑うつ気分やストレスに伴うめまいや吐き気、喉のつまり感などの身体症状の緩和

 

<気持ちを落ち着かせるとされるサプリメント成分例>

 

・GABA

GABAは、興奮した神経を落ち着かせる働きを行う神経伝達物質で、ドーパミンなど興奮系の神経伝達物質の過剰分泌を抑えて、リラックス状態をもたらす作用があります。

サプリメントとして摂取したGABAは、直接脳に働喰ことはありませんが、腸から脳へ指令が送られ、脳におけるGABAの分泌を増加させ、気持ちをリラックスさせます。(1)(2)

病院で処方される安定剤は、直接、脳のGABAの働きを強めることで安定剤としての効果を発揮しています。

 

・テアニン

お茶に含まれるアミノ酸。

ストレス緩和、集中力アップ、リラックス作用、睡眠の質改善などの効果があることが報告されています。

また、PMS(月経前症候群)や更年期障害の症状を緩和させる効果もあります。(3)

 

・セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)

いわゆるハーブ。

抗うつ薬(SSRI)と同じように脳内のセロトニンの再取り込みを阻害する作用があり、うつ症状の改善に効果があるといわれています。(4)(5)

抗うつ薬と同じような効果が得られるとしてイギリスでは積極的に使用されているセントジョーンズワートですが、服用する際には以下の事に注意する必要があります。

 

1:胃腸症状、めまい、意識混濁、けん怠、セロトニン症候群などの副作用報告があり、こうした症状が現れた際は即座に中止する必要があります。

2:飲み合わせの薬や持病によっては、薬の効果を弱めたり、症状を悪化させることが報告されています。

 

具体的には、ジゴキシン(強心薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)、テオフィリン(気管支拡張薬)、インジナビル(抗HIV薬)、ワルファリン(血液凝固防止薬)、抗うつ剤、高脂血症治療薬、抗てんかん薬などを服用している方や統合失調症の方は、使用することが出来ません。

 

・トリプトファン

神経伝達物質である「セロトニン」「メラトニン」の材料となる必須アミノ酸で、うつ症状の改善や睡眠の改善に効果があるとされています。

ただし、過剰に摂取するとセロトニン増加によるセロトニン症候群を引き起こすことがあるため注意が必要です。

 

*セロトニン症候群
体内でセロトニンが過剰に増えたことが原因で、体温の上昇、異常発汗、緊張、高血圧、心拍数の増加、吐き気、下痢、けいれん、頭痛などの症状が起こる。

 

・バレリアン(セイヨウカノコソウ)

 根や茎が不眠症や精神高揚等に効果がある薬草。

 ただし、効果には個人差が大きく、即効性もない。

 副作用として、眠気、歩行障害、低体温、筋弛緩、痙攣、疲労、頭痛、動悸、麻痺、肝障害、習慣性などが報告されています。

 

違法ドラッグや個人輸入に注意

 

インターネットが普及し、処方薬を医師の診察なしに海外から個人輸入することが出来る時代になりました。が、精神安定剤は、先にも説明しましたが、脳に直接作用する薬であること、依存性の問題があることから個人で輸入することは禁止されています。

また、違法ドラッグと呼ばれる精神安定剤や睡眠薬などと同じような作用を発揮する物質が含まれているものや無許可で販売されている医薬品がインターネットなどで簡単に購入できたりしますが、薬事法違反として処罰の対象となる上、健康上の被害も起こりますので注意しましょう。

 
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3.情緒が不安定のときに考えられる原因・病気

情緒不安定とは、すぐに泣いたり、怒ったりなど感情の起伏が激しく、それを自分でコントロールすることができない状態を言います。

このような状態に陥ってしまう原因としては、主に4つあります。

3-1. 睡眠不足、栄養不足

私達は、24時間周期で睡眠と覚醒のリズムを刻んでいます。

このリズムは、夜になると睡眠を促すメラトニンが分泌され、朝になるとメラトニンに変わってセロトニンが分泌されることで、朝、スキッキリ目覚めて日中活動することができています。

しかし、睡眠不足や不規則な生活を送っていると、メラトニンとセロトニンの分泌リズムが乱れ、上手く分泌されなくなってしまいます。

そうなると、ぐっすり眠ることができなくなり、疲れがたまりやすくなる上、セロトニンは、気分の安定にも関与しているホルモンですので、気分が不安定になりやすくなってしまいます。

3-2. ストレス

ストレスを感じると、ノルアドレナリンというストレスホルモンが分泌されます。

ノルアドレナリンが分泌されると交感神経の働きが活発になり、血圧が高くなったり、筋肉に力が入ったりと、体は、臨戦体制となります。

セロトニンは、こうしたノルアドレナリンの働きを制御しているホルモンでもあり、ストレスによって過剰に分泌されたノルアドレナリンの働きを抑えるために働きます。

 

一時的なストレスであれば、良いのですが、慢性的なストレスとなると、ノルアドレナリンの働きを抑えるためにセロトニンは、どんどん分泌され、セロトニンの産生が間に合わず、セロトニン不足に陥ってしまい、ノルアドレナリンは暴走し、体は常に緊張状態、イライラしやすく情緒不安定になってしまいます。

 

3-3. ホルモンバランス

ホルモンバランスが崩れると、気分の不安定さを招いてしまうホルモンに、甲状線ホルモンと女性ホルモンがあります。

 

甲状線ホルモンは、分泌が増えると感情が高ぶりやすくなり興奮状態しやすくなります。

逆に減少すると気分が落ち込みやすく、やる気も低下してしまいます。

女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンの2つがあります。

生理前や更年期になると、エストロゲンが減り、プロゲステロンが増えてきます。

プロゲステロンには、セロトニンの分泌を抑える作用があるため、生理前や更年期などには、気分が不安定になりやすくなります。

また、女性ホルモンは、自律神経と密接な関係があり、女性ホルモンのバランスが崩れると、自律神経のバランスも乱れてしまい、気分が不安定になってしまいます。

 

3-4. うつ病、不安障害なとの心の病気

心の病気の症状の1つとして情緒不安定が起こります。

これは、こうした心の病気では、ストレスに対して敏感になっている上、脳内のセロトニンの分泌が減少しているからです。

 

4.病院を受診したほうが良い理由

情緒不安定は、ただ単にストレスや睡眠不足が原因で起こるだけでなく、甲状線や更年期障害、さらには、うつ病などの心の病気が原因で起こっている場合も多いです。

こうした病気が原因で起こっている情緒不安定は、放置することで症状は悪化していき、治療期間も長くなります。

病気による情緒不安定かどうかをチェックするためにも、病院を受診して相談するのか良いかと思います。

 

また、病院は受診しにくいとの理由で、市販薬で対応される方がいますが、

気分を安定させるとして販売されている市販薬は、サプリメントや漢方薬を成分としたもので

即効性はありませんし、効き目にはかなりの個人差があります。また、複数の市販薬を飲むことで思いもかけない副作用が出てしまうこともあります。

 

自分の症状に合っていないものをいくら飲んでも効果はありません。

市販薬を使うにしても、はやり、一度は病院を受診し専門家に相談し、飲んでいる市販薬が自分の症状に合ったものかどうか知ってから使う方が良いかと思います。

医師執筆

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5.おわりに

市販薬の種類は、年々増える一方で、病院にかからず市販薬で済ませてしまう人も増えてきています。

ですが、不眠や情緒不安定などの精神的な症状は、市販薬を飲んでもなかなか改善しません。

これは、風邪薬や胃腸薬などの内科的な薬と違い精神的な症状を改善させる薬は市販薬として販売することが禁止されているからです。

それに市販薬といえども副作用はあります。

症状を悪化させないためにも、市販薬に頼りすぎないで、なかなか症状が改善しない場合は、専門家に相談しましょう。

 

参考文献

(1)BioFactors 26 (2006) 201-208

(2)日本栄養・食料学会誌 第61巻3号 2008 129―133

(3)『女性心身医学』第6巻第2号 2001 234-239

(4)FACEB journal Vol. 21 December 2007

(5)Life Sciences Volume 63, Issue 6, 3 July 1998, Pages 499-510

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