1.中耳炎とはどのような病気?
耳は大きく分けて「外耳」「中耳」「内耳」に分かれています。外耳は外界から音を拾ってくる役割、中耳は音の振動を内耳に伝える役割、内耳は振動として感知した音を聴神経へ伝える役割をしています。中耳炎ではこの内耳に、細菌やウイルスが感染して炎症が生じる病気です。
炎症が発生すると内耳に膿が生じます。膿が溜まると鼓膜を圧迫して、耳の強い痛みが生じるようになります。また膿によって音の振動がうまく伝わらずに、耳が聴こえづらくなるという症状も現れます。同時に発熱を生じることも多く、頭痛やだるさを感じることもあります。
膿が溜まると鼓膜が破れ、そこから膿が耳の外に出てきます。これを「耳漏」と呼びます。鼓膜が破れると聞くと耳が聴こえなくなったりする恐ろしいものに感じますが、鼓膜は再生するため問題はありません。
免疫力が弱く、鼻から耳へ細菌やウイルスが侵入しやすい乳幼児に多い病気です。10歳くらいまでに一度は発症することが多く、特に免疫力の弱い2歳くらいまでの乳幼児には多く発症します。「耳が痛い」などの意思表示ができれば問題ありませんが、その年代の子どもだとうまくしゃべれないことがあります。
発熱がないか、急に不機嫌になっていないか、耳を気にしていないかといった症状を周囲の大人が気に掛けることが重要です。
2.中耳炎はどうやって感染するのか?
中耳炎は耳の病気のため、ウイルスや細菌が耳から侵入すると思いがちです。しかし、実際は耳から感染することは稀で、実は鼻から感染することがほとんどです。人間の鼻と耳は「耳管」という器官で繋がっています。
風邪をきっかけに、鼻水などに含まれたウイルスや細菌が耳管を通り、中耳に感染することで中耳炎を発症する原因となります。
大人の耳管の鼻から耳までの距離が長いのに対して、子どもはまだ成長途中のため短いことが特徴です。また大人の耳管はある程度傾きがありますが、子どもの耳管は水平に近いためウイルスや菌が侵入しやすいことも特徴です。このような理由のため、中耳炎は大人よりも子どもに多く発症します。
中耳炎の原因となる菌はインフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではない)、肺炎レンサ球菌などがほとんどです。これらの細菌により気道感染症を引き起こすと、中耳炎も発症しやすくなります。
3.風邪症状とともにこんな症状がみられたら病院へ
中耳炎は中耳に炎症が生じるため、発症すると耳を気にするようになります。発熱や頭痛、鼻水、咳などの風邪の諸症状とともに以下のような様子が見られたら中耳炎の可能性があります。
・耳の痛みを主張する
・耳が詰まる、よく聞こえないと主張する
・耳から何か液体が出る
・耳に手を当てたりしている
もちろん中耳炎ではなく、ただ風邪である可能性もあります。まずはかかりつけの小児科で診察を受けるようにするとよいでしょう。
4.中耳炎の治療方法とは?
中耳炎の治療の基本は抗生物質や痛み止めによる服薬が中心です。ただし医師の診断により症状が軽い場合は経過観察を行うこともあります。中耳炎は症状が急激に現れますが、耳の痛みや発熱は2-3日程度で治まる傾向にあります。強い痛みなどの症状が現れなければ、安静にして自然に治癒させます。
中耳炎は細菌による発症がほとんどです。治療のために抗生物質を利用するのは有効ですが、現在では抗生物質への耐性菌が問題となっています。そのため医師によっては抗生物質の利用を慎重に判断することもあります。
炎症が強く耳に膿が溜まって、痛みや腫れ、発熱が強い時は鼓膜を切開して中の膿を出し切る治療も行われます。膿が外に出れば耳の内部での圧迫がなくなり、痛みも早く治まります。鼓膜は数日で元の状態に戻るため、切開による心配はいりません。
また家庭内での安静も重要です。発熱により水分が体から失われてしまうため、電解質の含まれたスポーツドリンクや経口補水薬などでしっかりと水分補給をするようにしましょう。睡眠も重要ですが、眠れないほど痛みや不快感が強い時は医師に相談して解熱鎮痛剤などを処方してもらうことも重要です。中耳にこれ以上細菌が入らないように、鼻水をこまめにかみ、鼻通りをよくすることも有効です。
中耳炎を治療するときは医師に完治したと診断されるまで行うことも重要です。もし治療を途中でやめてしまうと慢性中耳炎や反復性中耳炎、滲出性中耳炎といったものに移行する可能性もあります。
5.まとめ
中耳炎は耳の中耳という部分に炎症が発生し、膿が生じる病気です。膿が中耳に溜まることによって耳の内部が圧迫され、強い痛みを感じます。また炎症により発熱が生じることもあり、頭痛やだるさなどの症状が現れることもあります。
中耳炎の感染源は鼻から耳管を通って細菌が耳に侵入することです。特に子どもは時間が水平で鼻から耳までの距離も短いため、細菌が侵入しやすい構造になっています。もし耳の異常を訴えたり、発熱し耳を気にしているような様子なら耳鼻科で診察を受けるようにしましょう。