認知症は治療可能?認知症の種類別に原因・症状・特徴・治療法を解説

"物忘れがでて、歳のせいなのか、あるいはぼけてしまったのではないかと心配になっていらっしゃる方もいるでしょう。ご家族や身近な方に物忘れが出て、認知症なのではないか、と不安になっている方もいらっしゃるかもしれません。

どのような症状が、認知症の症状なのでしょうか。正常の老化に伴う物忘れとはどのように違うのでしょうか。

今回は、認知症の種類とその特徴について詳しく解説するとともに、そもそも認知症は治るのか?治療できるのかどうかについても説明していきます。"
※この情報は、2017年12月時点のものです。

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1.認知症の種類とその特徴

認知症はいったん正常に発達した知能が、何らかの原因によって低下し、複数の認知障害があるために生活上困難をきたす状態です。

認知症が「物忘れ」から始まることが多いことはよく御存じだと思います。それだけでなく、認知症には様々な種類があり、これに対応して様々な症状がみられます。従って認知症とそのタイプを診断するには、それぞれの病気が違う症状を示すことを知っていることが必要です。ここでは認知症の種類によって症状がどのように異なるのか、それぞれの特徴を詳しく解説していきます。

1-1. 認知症の代表格、アルツハイマー病

認知症といわれてまず思い浮かべるのがアルツハイマー病でしょう。実際アルツハイマー病は認知症の半数近くを占める最も多いタイプで、認知症の代表格といってもよいものです。

 

①特徴的な症状

他の多くの認知症と同様、アルツハイマー病は物忘れの症状(記銘力障害)から始まります。

昔のことはよく覚えているのに、最近おこったことは忘れてしまうのが特徴です。進行してくると5分前のことでも忘れてしまうようになります。

見当識障害といって、時間や季節がわからなくなる、今いる場所がわからなくなる、人の名前がわからなくなるといった症状も特徴的です。

 

 

患者さんと話してみると、にこにこしていて、礼節がたもたれています。日常会話も問題なくできて、初めのうちは一見すると何も問題ないようにみえますが、その日にあったできことや、その日に食べた食事の献立など具体的な内容を聞いたりすると、答えられず、とりつくろってごまかす傾向があります。

本人は病気という意識(病識)がなく、病院に訪れるときは、「自分では何も問題ないのに、家族によって連れてこられた」と認識している場合が殆どです。

 

 

記銘力の障害だけなら正常の老化でもみられますが、アルツハイマー病の場合、数年すると判断力の低下や行動の問題などもでてきます。例えば、ガスをつけっぱなしにしてしまう、洗濯機の使い方を忘れる、などの日常生活の問題が出てきます。

また、外出したまま家に戻ってこれず、どこかに徘徊してしまうようなことも起きてきます。記憶力の問題だけでなく、次第に全般的な知能の低下が起きてくるのです。

 

 

さらに認知症が進行すると、衣服をきちんと着られない、ボタンをかけられないなどの日常生活で身の回りのこともできなくなり、一人での生活は不可能になってきて、常時、見守りが必要となります。

 

最終的には、人の行っていることが理解できない、言葉がうまくでてこないなどの症状がでてきて、あまりコミュニケーションがとれなくなります。平均的な経過としては、おおむね3年程度で自立した生活が困難になり、5年で要介護、7-8年で介護が困難となり、施設入所が必要となることが多くなります。

 

②原因

アルツハイマー病における脳の萎縮は脳の神経細胞が減少していくことによるわけですが、その原因は「βアミロイド」と言われるタンパク質が脳の神経細胞に蓄積していくことにより、細胞が死に至ると考えられるようになってきています。

 

近年では、認知症が発症する15年-20年前からこのようなアミロイドの蓄積が始まっているということがわかってきています。従って根本的にこれを防ぐには、βアミロイドの蓄積が始まる中年から初老の時期からこの蓄積を防ぐ必要があるということになります。

 

③治療法

しかし現在のところ、βアミロイドタンパクの蓄積を予防する方法や神経細胞の減少を防ぐような根本的な治療法はありません。

一つの神経細胞からシナプスという隙間を介して次の神経細胞に情報を伝えるのに、シナプス前の神経末端から神経伝達物質という物質が放出されます。アルツハイマー病では、アセチルコリンを神経伝達物質とするアセチルコリン作動性神経系の機能低下が関与していることが知られています。

 

そこで治療には、アセチルコリンの分解をする酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害する、ドネペジル塩酸塩(アリセプト®)、ガランタミン臭化水素酸塩(レミニール®)などが用いられます。この薬によりアセチルコリンが分解されなくなり、シナプスの間に放出されたアセチルコリンが分解されず濃度が上昇するため、神経の伝達がよくなります。

 

いわば残っている神経細胞をがんばらせる治療ということになります。しかしアルツハイマー病の発症時にはかなりの神経細胞の減少がありますので、この薬で記憶や認知機能などが大きく改善することは通常期待できません。むしろ、無気力だったのが少し意欲がでてきたり、介護に協力的になったなどの改善がみられます。

 

④注意点

アルツハイマー病の患者さんを介護している方は、患者さんが思うように言うことを聞いてくれなかったり、介護に抵抗したり、問題行動を起こしたりして、いらいらしたり怒ってしまうこともしばしばあるかもしれません。

 

しかし、アルツハイマー病の患者さんは、具体的な日々の出来事は覚えていなくても、感情の記憶は残っており、怒られたことは覚えているものです。そのため、怒られたりすると、なんとなくもやもやしたいやな気持ちがのこってしまい、患者さんが介護に抵抗するもとになってしまう場合があります。認知症の患者さんの介護は、介護する側にとってはストレスがたまって大変ですが、患者さん本人にもできるだけ機嫌よく過ごしてもらうことも大切です。

 

1-2. 脳血管障害によって起きる、脳血管性認知症

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害によって起きる認知症です。アルツハイマー病についで二番目に多いタイプの認知症で、老年期認知症の20-30%を占めます。アルツハイマー病と合併することも少なくありません。

 

①特徴的な症状

一部の認知機能はおかされますが、他の機能はおかされない「まだら認知症」という状態を呈するのが特徴です。

物忘れの程度は一般的にアルツハイマー病より軽度で、注意力、自発性低下、意欲低下などを認める一方で、理解や人格は比較的保たれます。うつ状態になったり、ささいな刺激で泣いたり笑ったりする情動失禁もしばしばみられます。

 

脳梗塞と同様、様々な程度の運動麻痺を伴っていたり、ろれつのまわりにくさ(構音障害)、歩行障害や尿失禁、排尿障害が見られるのもこのタイプの認知症の特徴です。パーキンソン症状に似た小股歩行を示すこともあります。アルツハイマー病では、単独ではこのような体の動きの症状は示しませんが、脳梗塞が合併した場合にはみられることがあります。

 

②原因

脳梗塞により認知機能を司っている構造がおかされることが原因です。頭部MRI、頭部CTなどの画像を撮影すると、脳梗塞の病変がみられます。

 

③治療法

脳血管障害が原因になっていますので、脳血管障害の再発予防の治療が重要になります。

 

アルツハイマー病と合併することもあり、脳梗塞がアルツハイマー病発症のきっかけになったり、アルツハイマー病を悪化させることもあり、この場合も予防が大切です。高血圧の治療の他、抗血小板薬、心房細動によるものでは抗凝固薬により再発予防の治療を行います。

 

脳出血によるものに対しては、降圧療法が予防的な治療となります。ADLの低下は認知機能の低下を進行させるため、脳血管障害の初期からリハビリテーションを行うことが重要です。


④注意点

脳梗塞とアルツハイマー病など他の認知症が合併していることもよくあります。この場合は、単独の認知症より症状が重くなる傾向があります。脳血管性認知症の患者さんで、脳梗塞が悪くなっていないのに認知症の症状が進んでいくようだったら、アルツハイマー病などの合併を考える必要があります。

 

1-3. 手の震えや動作の緩慢など、レビー小体型認知症

アルツハイマー病、脳血管性認知症に次いで多いタイプの認知症です。手の震えや動作の緩慢、歩行障害といった症状を特徴とするパーキンソン病という病気と関連のある疾患です。認知症の20%程度を占めています。

 

①原因

パーキンソン病では脳の病理所見で、黒質にレビーLewy小体という細胞内封入体が認められますが、同じような病理所見がこの認知症でも見られることから、レビー小体型認知症とよばれます。

この所見が神経細胞の減少と関係していると考えられていますが、正確な原因は分かっていません。パーキンソン病でも認知症を来たすことがありますが、この場合もレビー小体型認知症と同じような病理所見を示しますので、関連した疾患と考えられています。

 

②特徴的な症状

アルツハイマー病と同様、物忘れなどで発症し、徐々に認知症状が進行します。

レビー小体型認知症の第一の特徴は症状の変動があることです。日によって、また一日の中でも認知症状の変動が大きく、周囲の状況がわからなくなるときと、比較的正常なときが交互に出現します。このような症状の変動は注意や覚醒レベルの変動によるとされています。

 

また、しばしば幻覚、とりわけ視覚的な幻覚(幻視)が伴いやすいのもこの認知症の特徴です。人物や動物の具体的で詳細な内容の幻視が多く、(死んだはずの)父親がそこに来ている、知らない子が部屋で遊んでいる、虫や蛇などが部屋にいる、などといった幻視が特徴的です。

 

パーキンソン病と同様、匂いの感覚が低下する症状がみられ、認知症自体に先行することもあります。睡眠中に突然大声をあげたり、走り回ったり、激しい動きをしたりするレム睡眠行動障害がみられることがあります。

 

③治療法

アルツハイマー病と同様、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が用いられ、効果のみられる症例もあります。

 

④注意点

認知症の症状が変動しやすく、症状が悪い日と、問題がない日があるので、認知症状なのか最初は判断がつきにくいことがあります。また幻覚がみられやすい点はアルツハイマー病との大きな違いです。パーキンソン症状が伴うこともあり、転倒しやすいこともあるので注意が必要です。

 

1-4. 行動異常や人格変化が特徴、前頭側頭型認知症

進行性の行動異常や特徴的な人格変化を特徴とする認知症です。大脳のうちでも、前頭葉、側頭葉といった領域に脳の限局性の萎縮がみられます。

 

(特徴的な症状)

最初のうちは比較的記憶力が保たれている場合もあり、むしろ、それまできちょうめんに仕事をしていた人が休みがちになる、下着がよごれたのに気にしなくなった、周囲への配慮ができなくなる、ふざけたり、人をこばかにしたような態度をとる、などの人格の変化で気づかれます。

 

また、怒りやすくなった(易怒性)、人のうちに勝手に上がりこむ、万引きをするなどの脱抑制の症状を示すこともあります。このほか、異常な繰り返しの行動(情動行動)、常同的な言語の繰り返し(滞続言語)や、病院の診察時に突然立ち去ってしまうという、立ち去り行動という特徴的な症状もみられる場合があります。

 

進行とともに、徐々に意欲や自発性が減退し、テレビなど今まで興味を持っていた物にも関心がなくなり、寝てばかりいるようになります。

 

①原因

原因は分かっていませんが、単一の病気ではないことが知られています。40%の症例で家族性がみられ、脳の病理所見ではTAR DNA-binding protein-43(TDP-43)というタンパクを含む細胞内封入体を認めるタイプのものが多いとされます。

 

②治療法

現在のところ、根本的な治療法はありません。アルツハイマー病と同様、アセチルコリンエステラーゼを阻害する薬剤が用いられますが、多くの場合それほど効果はありません。脱抑制や不穏になどの症状があるので、抗精神病薬など気持ちを落ち着かせるような薬が用いられることがあります。

 

③注意点

最初のうちは比較的記憶力が保たれている場合もあり、上記の特徴的な症状から認知症としてではなく、人格変化としてとらえられてしまうことがあります。上のような特徴的な症状・経過が出現してきた場合、前頭側頭型認知症の可能性も考える必要があります。

 

2.認知症は治る?治療できる?

これまで述べてきたように多くの認知症では、進行を止めるような根本的な治療法は今のところありません。しかし、一部の認知症は適切に治療されれば改善するものがあり、「治療できる認知症」(treatable dementia)と呼ばれています。

このような認知症の原因となる疾患には、甲状腺機能低下症、ビタミンB1欠乏のような内分泌・代謝疾患、ビタミン不足、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、てんかん、うつ病、抗コリン薬などによる薬剤性認知症などがあります。これらの認知症はそれぞれの疾患に応じた治療をすれば、症状を改善させることができます。

 

 多くのtreatable dementiaにはそれぞれに特徴的な症状があり、診断の手がかりになります。例えば甲状腺機能低下症では記銘力障害を呈するだけでなく、低体温になり、異常に寒がりになります。体のエネルギー消費が減少するため食欲低下がおきる一方、体重増加がみられます。皮膚はかさかさして、むくみがみられたり、声がしわがれ声になったりします。

 

正常圧水頭症では記銘力障害の他、歩行障害、尿失禁がみられます。高齢者の場合、物忘れがひどい、話しかけても反応がわるいと思っていたら、うつ病やてんかんの症状だったということもしばしばあります。

 これらの疾患は治療できるとはいっても、進行してしまうとなかなか症状が改善せず、治療が難しくなる場合もあります。従って早期に診断して、治療を開始することが重要になるのです。

 

3.日常生活でできる認知症の予防法

認知症の予防として、日常生活でできることもあります。

 

高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病が認知症の発症リスクを高めるリスクになるといわれており、食事の管理、とくに塩分や糖分、カロリーをとりすぎないようにすることが大切です。

適度な運動(例:週3日以上の有酸素運動をするなど)は認知症の予防に役立つといわれています。継続して体を動かすようにしましょう。また一人、閉じこもったりすることなく人とのふれあいを保つことや、自らいろいろなことに興味をもって積極的に活動することも大変重要です。

 

4.おわりに

 

 今回は、認知症の種類とその特徴について詳しく解説させていただきました。認知症には様々な種類があること、それぞれの認知症に特徴的な症状があることがお分かりいただけたと思います。このような症状がみられたら、すぐに医療機関を受診し、みてもらうようにしましょう。中には治療できる認知症もあるので、早めに診断を受けることが大切です。

執筆
医師:子煩悩神経内科医
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