目次
1.咳が長期間続く百日咳の症状・特徴
百日咳は百日咳菌による細菌性感染症で、その最大の特徴はゴホゴホと長期間続く咳発作です。一週間ほどの潜伏期間ののち、風邪のような症状から始まり、次第に咳の回数や度合いが激化していきます。発症後2週間ほどでけいれん性の咳が起こるようになり、短い咳を連続して行うようになります。またその際に息をヒューヒューと吸い込むようになります。
嘔吐を伴うこともあり、呼吸が不足するためチアノーゼや顔面紅潮が現れることもあります。咳のし過ぎにより、酸素が不足し失神することもあり、肋骨が骨折することもあります。また体力の消耗も著しく、特に咳発作は夜間に発生することが多いため睡眠不足となってしまうこともあります。
百日咳のもう一つの特徴として完治「するまでに非常に長い時間が掛かることです。初期段階の風邪症状は2週間以上、咳発作が激化する中期段階も2週間ほど、咳がだんだん落ち着き症状が落ち着いてくる回復期も2週間ほど持続し、発症から完治まで2-3か月ほど必要になることもあります。
また、百日咳の合併症として中耳炎を発症することが多いです。また、重篤な合併症として脳症や脳炎を発症することもあり、特に赤ちゃんでは命に関わることもあります。百日咳の合併症に関しては次の項目で詳しく解説します。
2.百日咳で死亡する可能性も?乳幼児のリスクと予防策
2-1. 乳幼児のリスク
乳幼児、特に生後6か月未満の赤ちゃんにとっては、百日咳はとても危険な病気です。体力の少ないこの時期に百日咳に感染することで、体力が著しく消耗され状態の悪化を招きやすいです。また赤ちゃんは気管が成人と比べて、非常に細く無呼吸状態となりやすいことも危険な点です。
また咳による無酸素状態が続くことで脳炎や脳症が合併症として発症する可能性があり、百日咳から肺炎になる可能性もあります。百日咳、および合併症での死亡率は1-2%と高く、日本でもいまだに死亡例は存在します。
2-2. 百日咳にかからないための予防策、ワクチン
百日咳はワクチンが存在しているため、予防することは可能です。日本では百日咳ワクチンの予防接種が小児期に行われているため、発症者数は世界的に見ても低レベルとなっています。
しかし、赤ちゃんは生後3か月を迎えるまで百日咳ワクチン(4種混合ワクチン)を接種することができません。生後3か月未満の時期に百日咳菌に感染するリスクを避けるためには、母体の妊娠時の予防接種が有効です。妊娠28週目に百日咳ワクチンの接種を受けると、抗体が赤ちゃんに移行し、生後3か月を迎え予防接種を受けるまでの感染を予防してくれます。
ただし、小児期に予防接種が実施されているからと言って、生涯にわたり百日咳ワクチンが効果を発揮するとは限りません。成人でも感染する可能性はあり、特に家族など赤ちゃんと触れ合う機会がある人は改めて予防接種を受けることが重要です。
3.百日咳は、大人はかからないという間違い
日本では小児期に混合ワクチンによる予防接種を定期的に行っています。従来は3種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)でしたが、現在ではその3つに加えポリオを含めた4種混合ワクチンが導入されています。
小児期に百日咳のワクチンを接種するため日本での百日咳の発症者はとても低いレベルとなっています。しかし百日咳ワクチンの効果は永続ではなく、15年から20年程度で効果が切れてしまうとも言われています。事実、大人でも百日咳を発症する人は存在しています。
大人の百日咳は乳幼児とは異なり重症化することはほとんどありません。ただし乳幼児と同じく、非常に激しい咳の発作は起こるため日常生活に支障が出ます。また百日咳菌は感染力が強いため、学校や職場に行くことは避けたほうがよいでしょう。
大人の百日咳を予防するために有効なのはやはり「予防接種」です。ワクチンの効果が15年から20年で切れるとすると、おおよそ26-31歳くらいまでの間に効果が切れてしまう計算となります。その年齢に差し掛かった大人はもう一度、百日咳の予防接種を受けると感染のリスクを低下させることができます。
自分への感染を防ぐためではなく、生まれてくる赤ちゃんを百日咳から守るためにも有効です。もし子どもを作る計画があるならば、その前に一度予防接種を受けることを検討してください。
4.まとめ
百日咳は非常に感染力の強い細菌性感染症です。激しい咳発作が特徴で、完治するまでに2-3か月と非常に長い期間が必要となります。特に生後6か月未満の赤ちゃんに感染し、発症すると命の危険となる可能性もあります。
百日咳にはワクチンがあるため予防することが可能です。赤ちゃんへの感染を防ぐためには
・妊娠28週目での母体の百日咳ワクチンの接種
・赤ちゃんと触れ合う可能性ある人の予防接種
・生後6週間後の赤ちゃんへの予防接種
が重要です。