「かかりつけ薬局は、治療そのものを考えます」早朝高血圧編

鶴原 伸尚
株式会社ダヴィンチ つるさん薬局 代表取締役

かかりつけ薬局を決めておくことで効果的な投薬や残薬管理、お薬を重複してお渡しすることを防止する…など実はメリットがたくさん。 この連載では、地域住民からかかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師として信頼を得ている「ゆきさん薬局」の薬剤師、ゆきさんの事例をご紹介。 病気、健康、薬についての知識をお伝えしながらも、かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師の活用方法を身近に感じていただければと思います。 それでは、「患者さんを笑顔にして薬局を送り出すことが何より大切」をモットーとしているゆきさんの物語をお楽しみください。

 

登場人物

★ゆきさん  

雪原 匠(ゆきはら たくみ) 49歳 男性

ゆきさん薬局の管理薬剤師&オーナー

顔の見える薬剤師を目指し、日々奮闘中

 

山田 孝雄

山田 孝雄(やまだ たかお) 61歳

高血圧症できちんと薬を飲んでいる

最近、朝の血圧が高くて困っている

 

朝の血圧が高い!

2か月に一度、高血圧薬の処方箋をお持ちになる山田さんが来局されました。

以前、忙しくて2週間に1度の受診ができず、薬をもらうのをあきらめていた山田さん。

ゆきさんに薦められて正直に頻回の受診が難しいことを医師に伝えて、きちんと薬を飲めるようになりました。

それ以来、山田さんは何か相談事があると、受診前にゆきさんを訪れます。

今回は薬を飲んでいても朝の血圧が高いので、ゆきさんに相談することにしました。

 

山田さん

「最近、朝の血圧が高いんだよね。前にゆきさんに教えてもらったように大きく血圧が変動しないようにしているんだけど、どうしても朝の血圧が高いんですよ」

 

ゆきさん

「お薬は、夜寝る前に飲むようになっていますが、そのように飲んでいますか?」

 

山田さん

「はい」

 

ゆきさん

「そうですか。朝が高い人は寝る前に飲んだ方が、朝に効果が出てくるので良いのですが、きちんと飲んでいるようですね」

 

山田さん

「薬を増やしてもらった方が良いのかな?」

 

ゆきさん

「そうですね。薬が効いていないことになるので増やしてもらった方が良いかもしれませんが、もう少し状況を伺わせてください」

 

山田さん

「いいですよ」

 

ゆきさん

「血圧が高くなってきたのは、寒くなってからですか?」

 

山田さん

「ゆきさんの知ってのとおり、きちんと薬を飲むようになって血圧が安定していたのですが、ここのところ寒くなって、朝の血圧が高いんです」

 

ゆきさん

「寝ている時に暖房は入れていますか?」

 

山田さん

「電気代がもったいないから、暖房は入れてません」

 

ゆきさん

「今度、暖房を入れて寝てみたらいかがですか。寒くなると緊張して血圧は上がりやすくなります。冬だけ薬を増やす人もいるくらいですよ」

 

山田さん「それは、良いことを聞いた。試してみます」とうれしそうに答えて帰っていきました。

 

よく眠れていますか?

2ヵ月後、高血圧の薬がなくなった山田さんが、再度薬局を訪問しました。

 

山田さん

「夜に暖房を入れて、最初のうちは朝の血圧が下がったのですが、また上がってきてしまって」

 

ゆきさん

「そうかあ、下がったのは最初だけだったんですね」

 

山田さん

「どうしたんだろうね」

 

ゆきさん

「そういえば、最近睡眠薬を時々もらうようになっていますが、よく眠れていますか」

 

山田さん

「ええ。変な夢を見て目を覚ますことがあるし、考え事をして目が冴えてしまうことも多いんです」

 

ゆきさん

「それに、睡眠薬を飲んでいるのですね」

 

山田さん

「はい」

 

ゆきさん

「睡眠薬を飲んだ日は、血圧はいかがですか?」

 

山田さん

「そう言われれば、睡眠薬を飲んだ日は血圧が低い気がします。そうかあ、睡眠と関係していたのか」

 

ゆきさん

「そうみたいですね。ストレス、過労はどの病気でも悪化させます。質の良い睡眠がとれていないと、体に悪影響は出るでしょう」

 

山田さん

「睡眠薬を毎日飲んだ方が良いのかな?」

 

ゆきさん

「眠りが浅かったり、眠りにくい時は睡眠薬に頼るのも一案だと思いますよ」

 

山田さん

「でも、睡眠薬を毎日飲むのは抵抗があるなあ」

 

ゆきさん

「睡眠薬で疲れが取れるなら、私なら飲んでおきますよ。睡眠薬で一番怖いのは量が増えていくことです。効かないと思って勝手に量を増やしてくと大変なことになります。量を守って飲んでいる分には問題はありませんよ」

 

山田さん

「それでは、睡眠薬を飲んでいた方が良いのですね」

 

ゆきさん

「それで血圧が安定するのなら、飲んでおいた方が良いと思います。ところで、山田さん、血圧は記録していますか?」

 

山田さん

「いや、測っているだけで特に記録はしていません」

 

ゆきさん

「それでは、この血圧手帳に記録してください。次回は医師と私にも見せていただけますか」

 

山田さん

「あれ、1日2回も測るの?」

 

ゆきさん

「はい、1回目は朝起きてから1時間以内、朝食前で排尿後、2回目は寝る前、入浴、夕食直後を避けて測るようにしてください。それから、測る前には深呼吸をしてから、腕と心臓の高さを同じにして測ってください」

 

山田さん

「はい、わかりました。この手帳もらってよいの?」

 

ゆきさん

「はい、お持ちください」

 

山田さん

「ありがとう。試してみます」

 

血圧手帳で解決

さらに1ヶ月ほどたって、山田さんが来局されました。

 

山田さん

「睡眠薬を飲んでみたけど、よくわからないなあ」

 

ゆきさん

「血圧手帳に記録されましたか?」

 

山田さん

「あーこれね。記録してみました」

 

ゆきさん

「次のページにグラフがあるので、そこに記入してみるんです」と話しながら記入していきました。

 

山田さん

「なるほど」

 

ゆきさん

「血圧は変動してあたり前です。グラフにするとよくわかるんですが、高い日もありますが、山田さんが思っているほど高い日は多くないですよ」

 

山田さん

「本当ですね。高いことを意識しすぎていたのかな」

 

ゆきさん

「そうみたいですね。もしかしたら、前から思っているほど高くなかったのかもしれませんよ」

 

山田さん

「そうかもしれないね」

 

ゆきさん

「変動があるのは、元気に生きている証拠ですよ」

 

「まだまだ若いということだね。ありがとう」と言って嬉しそうに帰る山田さんでした。

 

 

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです

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