「かかりつけ薬局は、適切な剤形を提案します」糖尿病編

かかりつけ薬局を決めておくことで効果的な投薬や残薬管理、お薬を重複してお渡しすることを防止する…など実はメリットがたくさん。 この連載では、地域住民からかかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師として信頼を得ている「ゆきさん薬局」の薬剤師、ゆきさんの事例をご紹介。 病気、健康、薬についての知識をお伝えしながらも、かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師の活用方法を身近に感じていただければと思います。 それでは、「患者さんを笑顔にして薬局を送り出すことが何より大切」をモットーとしているゆきさんの物語をお楽しみください。
※この情報は、2017年10月時点のものです。

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登場人物

★ゆきさん
雪原 匠(ゆきはら たくみ) 49歳 男性
ゆきさん薬局の管理薬剤師&オーナー
顔の見える薬剤師を目指し、日々奮闘中

 

★福井 敏江
福井 敏江(ふくい としえ) 68歳 女性
リウマチで手足が自由に使えない
糖尿病だが、状態が安定しない

ゆきさんは、在宅訪問サービスを行っています

ゆきさん薬局では、薬剤師の在宅訪問サービスを行っています。

※薬剤師の在宅訪問サービスとは
通称「在宅」と呼ばれているのですが、認知症や手が不自由でご自身で薬の管理が出来なかったり、体が不自由で薬局に訪問できない患者さん宅に薬剤師が出向き、薬を管理します。

今日は、週に1度の福井さん宅を訪問する日です。
福井さんが、最初にゆきさん薬局に訪れたのは、8年前でした。
糖尿病薬をもらいにゆきさん薬局を訪れていたのですが、リウマチを発症し手足が思うように使えなくなり、ゆきさんが在宅訪問するようになりました。

ゆきさん、いつものように福井さん宅を訪れて部屋に入っていきました。
「福井さん、お久しぶり。1週間経つのが早いですね。お元気ですか?」

福井さん「本当だねえ。おかげさんで、まだ生きてるよ」とうれしそうに答えました。

ゆきさんも「また、そんなことを言って。福井さんのその笑顔なら、死神様もまだまだ連れて行けないと逃げていくね」とうれしそうに答えました。

福井さん
「そうかい。いつ行っても良いんだけどね」

ゆきさん
「だめだめ、うちの仕事を無くさないようにしてよ」

福井さん、笑いながら答えました。
「そうか、じゃあお中元でも持ってきてもらわないと」

ゆきさん
「お菓子でも持ってきたいのは山々だけど、福井さん目の前にあると何でも食べちゃうから、糖尿病に良くないよ」

福井さん
「そうだね。そうそう、このチョコレートもらったから、持って行っておくれ」

ゆきさん
「何だ、結局いつも僕がもらう方ですか。遠慮なくもらっていきますよ」
福井さんの目の前から誘惑を取り除くのも愛情だと思って、ゆきさんは素直に受け取って帰ります。

 

ペン型タイプだと自分で注射できない

ゆきさん
「前回からインスリンの注射が出たけど、上手に利用できましたか?」

福井さん
「あれね、押すところが結構固いんだよ」

福井さんが利用しているのは、ペン型タイプのインスリン注射です。

ゆきさん
「え、そうなの!これは衛生的だし量の調節も簡単で喜ばれているんだけどね」

福井さん
「みんなには良いのかもしれないけど、私には固いんだよ」

ゆきさん
「そうかあ、じゃあ宿題として考えて来ますね」

ゆきさんの経験では、薬局でお渡しするインスリン注射を、ペン型タイプ以外を見たことがありませんでした。

ゆきさんは薬局に戻り、他の剤形は無いか調べてみました。

調べてみると、ペン型タイプが最も普及しているのですが、イノレットタイプというのが見つかりました。

ペン型タイプは軽くて便利なのですが、握力が弱い人には持ちにくく注入部分のボタンが押しにくく感じます。

それに対してイノレットタイプは握力や視力の低下した患者さんや、高齢の患者さんでも扱いやすく、簡便に操作できるよう握りやすい形状になっていて、単位目盛も見やすくしてあります。

ペン型タイプもイノレットタイプもプレフィルドタイプと呼ばれるインスリン製剤と注入器が一体になっているので扱いやすいはずです。

ゆきさん、早速福井さんに電話しました。
「福井さん、便利そうなタイプのインスリン注射が見つかったから、先生に相談して変更してもらうようにお願いするね」

福井さん
「本当かい。よくわからないけど、頼むよ」

ゆきさん、処方もとの医師に電話で疑義紹介をしてイノレットタイプに変更してもらいました。

※疑義照会とは
薬剤師が処方箋を元に調剤を行う際、処方箋の記載に疑問点や不明点を感じた場合に処方箋の作成者に対して内容の確認を行うこと。

ゆきさんが福井さん宅を訪れたときは、ちょうどインスリン注射を打つタイミングでした。

目の前で利用法を説明して、その場で打ってもらいました。

福井さん
「これなら、使えるよ。いい仕事してくれるね」と福井さんならではの方法でゆきさんに感謝していました。

食事中に低血糖になる

福井さんは注射を打ち終えると、別の相談を持ちかけました。
「この注射を打った後に、ふらふらするんだよね」

ゆきさん
「食直前に打っているんでしょ」

福井さん
「そうだよ。でも食事が終わる前に何となくふらつき始めるんだよ」

ゆきさん、しばらく考えてから、次の質問をしました。
「福井さん、食事を終わるのにどれくらい時間がかかりますか」

福井さん
「どれくらいかはわからないけど、手が悪いからゆっくり食べているよ」

ゆきさん
「やはり、そうか。リウマチで手が不自由だから、食事を取るのに時間がかかるでしょ」

福井さん
「そうだよ」

ゆきさん
「このインスリン注射が食直前なのは、食後の血糖値が上がるのを抑えるためなんです。ところが福井さんの場合は、食事の時間がかかるので、食後の血糖値が上がる前に血糖低下が始まってしまうんですよ」

福井さん
「そういうことか。そりゃ、食事中に血糖値が下がるはずだね」

ゆきさん
「だから、今後は食事を開始してしばらくしてから注射を打ってみてはいかがですか」

福井さん
「そうだね、そうしてみるよ」

ゆきさん
「試してみて、次回その経過を教えてくださいね」

福井さん
「OK。いつもありがとう」

ゆきさん
「いえいえ、こちらも良い勉強になりました。ありがとうございます」

福井さん
「何だよ、わたしは、ゆきさんの実験かい」

ゆきさん、「はい、よろしくお願いします」と言ってうれしそうに帰りました。

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです

 

執筆
薬剤師:鶴原 伸尚
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